キュートなSF、悪魔な親友

月那

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キュートなSF、悪魔な親友

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 一回出した後の、ちょっと気だるい体を田村が後ろからゆるゆると抱きしめる。
 勿論、下は繋がったままで。
 当然、まだこんな状態で眠るなんてことはないけれど、それでも田村のぬくぬくな体に包まれているこの瞬間は、半分眠りに落ちてもいいかと思えるくらい、柔らかい時間で。
「かぐ……」
「ん?」
 耳元に囁いた声が、優しかったけれど。少し、引っかかる。
「俺、かぐみたく言葉選んだりとかできないから、直球で訊くよ?」
 ああ。そうか。えっちしてんのに“かぐ”って呼んでるからか。と、鹿倉がぼんやりと田村の声に耳を傾けた。
「誰かと、ヤってる?」
 すっと、目が覚める。
 けれども田村の優しい腕は、何も変わらない。
 鹿倉も辛うじて、微動だにしない、という逃げ道だけは確保できた。
「違ってたら違ってたで、別にいいし。てか、ほんとは勘違いだと思いたいんだけど」
 さて。どういう返しが正解か。
 さすがにいつものように流れるような嘘が出てこない。
 黙っていることこそが、その答えになってしまうと、鹿倉自身はわかっているけれど。
 無邪気な田村なら、つるつると嘘を並べればきっと騙されるはずで。
 鹿倉は唇を湿らせるように、一度舐めた。そして、口を開く。
「誰が、いい?」
「え?」
「誰とヤってる、って答えが欲しい?」
 田村のモノが萎えて、自分の中から抜けて出たのを感じて。
 鹿倉はくるりと体を反転させた。正面から田村を見る。
「堀さん? 志麻さん? それとも他の、田村が全然知らない人?」
 目を細め、ほんの少しだけ口角を上げて。作り笑顔、かもしれないけれど。
 田村の真意を掴むまで、誤魔化すような表情でその目を見る。
「ヤってる、ってことは確定してんだ?」
 珍しく、表情が読めない。
 それが、鹿倉には痛い。田村の感情なんて、いつもなら手に取るようにわかっていたから。
「現場を抑えられるまでは、逃げた方がいいんだろうけどね」
 浮気なんてそんなもんだろ、なんて思いながら鹿倉が言う。
 けれど。
「は?」
「ヤってるよ。実際」
 素直に、答えた。
 もう、黙っている方がしんどい。
「それって浮気……じゃ、ないか」
 少し、拗ねてる声。
 田村の目の色が見えたから、鹿倉は小さく息を吐いてもう一度唇を舐める。
「俺、昔からゆってるけどね」
「誰とでも、寝るって?」
「求められればね。ただ基本的に、男求める男なんてそう簡単にいねーから」
 自分の中に、田村をこのまま繋ぎ留めたいという欲求と、すっぱり体の関係は解消してしまった方がいいという理性がせめぎ合う。
 その迷いのせいで、上手く言葉を操ることができなくて。
「かぐ。俺は、かぐがその人のこと好きなんだったら、もう抱けない」
 綺麗な、真っ白い田村。
 純粋で、ただただ他人のことを心から信じて疑うことを知らなくて。
 真正面から体当たりしてって、跳ね返ったせいで大怪我を負っても、それでも相手を絶対に責めない天使みたいな田村。
 鹿倉が、自分の傍にいて欲しいと願う、ただ一人の人間だから。
「わかんない」
「え?」
「わかんない、つってんの。俺、いつもゆってんじゃん? 誰とでもヤれるって。でも、逆に言うとそんな相手のこと、好きかどうかなんか知らねーよ。好きって、何だよ?」
 思わず
 本音が出ていた。
 そう。好きって、何だよ?
 結局、そこにたどり着く。
 田村を好き、律を好き、志麻を好き、堀を好き。全部同じ“好き”だから。
 だから、誰にだって抱かれたいし、誰とでもヤれる。
 この感覚は、一体どう表現すればいい?
「かぐ?」
「ごめん、わけわかんないんだよ、最近。自分でも自分が、わかんないの。俺、田村に抱かれたい。でも、今俺のこと抱きたいって言ってくれるヤツ、いたら誰でも抱かれたいって思う。俺のこと抱きたいって言ってくれるヤツのことは、俺はきっと好きだよ。誰でもね。そーゆーの、許せる? おまえが許せないなら、俺はもうおまえには抱かれない。ちゃんと、弁える」
 こんなに素直に、自分の想いを口にするのは初めてで。
 言ってしまってから、どうしようもなくなって自分で自分を抱きしめた。
 とてつもなく、自分がただ一人、孤独だと感じて。
 誰も愛せないし、誰からも愛されない。
 自分は、そんな人間だと思い知らされたから。
 裸の自分が、すごく寒くて。
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