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キュートなSF、悪魔な親友
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「かぐー、今日お風呂入んない?」
いつものように田村の手料理――と言ってもほぼつまみだが――を食べ、ビールを空けて。
田村が台所の片付けを始めたので、鹿倉はソファに寝そべってソラに猫じゃらしを振り回して遊んでやっていたのだが。
キッチンからいなくなったと思ったら、何やら小さな小袋を手にして鹿倉の前に立って言った。
「ほら見て。温泉の素。那須くんに貰った」
温泉の素、なんて単語が田村のちょっと鼻にかかった声で発せられるととにかく可愛く響いて。鹿倉がくふっと笑う。
「那須くん、こないだの休み、彼女と温泉旅行だったんだって。で、そのお土産って」
「俺貰ってないけど」
「かぐは那須くんの顔も把握してねーじゃん」
鹿倉はソラを抱き上げてくふくふ笑う。
「だからさ。たまにはお風呂、入ろ」
二人とも、特にお湯に浸かってのんびりまったり入浴したいというタイプではないので、普段はいつもシャワーだけで済ませている。
「お風呂、かー。いいね、それ」
「でしょ? ほら、たまには温泉に行った気分であったかいお風呂に浸かりたいじゃん」
「うんうん。お風呂でえっちってのもいいよね」
鹿倉の相変わらずの発言に思わず赤面する。
「おま……なにゆって……」
「え? 一緒に入るんじゃねーの?」
「……入りたいと思ってたけど!」
「じゃあ、俺間違ってねーじゃん」
ねーソラ、なんて腕の中の猫に話しかけながら鹿倉が言って。
「じゃあ、お風呂、お湯張ってくるから」
当然、これから始まるお楽しみタイムを想像して、田村は少し照れながらも鼻歌交じりにバスルームへと向かった。
可愛いヤツめ、と鹿倉は笑いながらソラの顔をくしゃくしゃと撫でた。
段々猫の扱いがわかってきて、顔回りを撫でてやると喜ぶみたいで。ただし、あまりしつこくやっていると引っ掻かれるのだが。
「っ痛いなあ、もう」
それさえも可愛くて。ソラとじゃれていると田村が、
「温度、どんくらい?」と戻って来た。
「えー? あんまり熱いと長く入ってらんないよね?」
「じゃあ、ちょっとぬるめで設定しとくよ」
キッチンにあるリモコンからお湯張りボタンを押して、鹿倉の横に座る。
「ソラ、抱っこしたい」
「ん」
田村が言うのでソラを手渡すと、ローテーブルに置いていたスマホを起動した。
「ゲーム?」
「いや、さっき鳴ってたから。もっさんかなーと思って」
「仕事の話?」
メッセージを確認すると。
「明日のミーティング、午後に変更って」
「んじゃ、俺朝からミネさんと打ち合わせあるから、先に出るわ」
「いや、俺だってもっさんのミーティング以外にも仕事あるから朝から行くし」
「今何やってんの?」
「んー、堀さんの新しいタウン誌絡みがメイン。もっさんのはほぼほぼ終わってるから、そっちにまた新しい話が来るまでは堀さんに振り回される」
田村の腕の中でゴロゴロと喉を鳴らしているソラの、頭を撫でながら言う。
「こないださー、志麻さんにかぐと二人で一個仕事持たせるって言われたんだけど、かぐ聞いてる?」
「え? 知らん」
「堀さんから聞くと思うよ。俺、ちょっと楽しみなんだけど」
「俺は怖いかもー」
「なんでだよ」
「田村、暴走しがち。手綱引いてるのが志麻さんだから言うこと聞いてるけど、おまえ俺の話聞かなそう」
「そんなことねーし」
「そんなことあるし」
二人してちょっと睨み合って。笑っているとお風呂のお湯張りが終わったというメロディーが流れてきて。
「かぐ、先入ってる?」
「なんで? 一緒、入ろうよ」
「脱衣所狭いじゃん」
「くっついてりゃいいじゃん」
「……こーゆー時だけ、やたらとグイグイ来るよね、かぐって」
「イヤ?」
上目遣いできゅるんと問われて。
もう、仕方がないからキスで答えた。
いつものように田村の手料理――と言ってもほぼつまみだが――を食べ、ビールを空けて。
田村が台所の片付けを始めたので、鹿倉はソファに寝そべってソラに猫じゃらしを振り回して遊んでやっていたのだが。
キッチンからいなくなったと思ったら、何やら小さな小袋を手にして鹿倉の前に立って言った。
「ほら見て。温泉の素。那須くんに貰った」
温泉の素、なんて単語が田村のちょっと鼻にかかった声で発せられるととにかく可愛く響いて。鹿倉がくふっと笑う。
「那須くん、こないだの休み、彼女と温泉旅行だったんだって。で、そのお土産って」
「俺貰ってないけど」
「かぐは那須くんの顔も把握してねーじゃん」
鹿倉はソラを抱き上げてくふくふ笑う。
「だからさ。たまにはお風呂、入ろ」
二人とも、特にお湯に浸かってのんびりまったり入浴したいというタイプではないので、普段はいつもシャワーだけで済ませている。
「お風呂、かー。いいね、それ」
「でしょ? ほら、たまには温泉に行った気分であったかいお風呂に浸かりたいじゃん」
「うんうん。お風呂でえっちってのもいいよね」
鹿倉の相変わらずの発言に思わず赤面する。
「おま……なにゆって……」
「え? 一緒に入るんじゃねーの?」
「……入りたいと思ってたけど!」
「じゃあ、俺間違ってねーじゃん」
ねーソラ、なんて腕の中の猫に話しかけながら鹿倉が言って。
「じゃあ、お風呂、お湯張ってくるから」
当然、これから始まるお楽しみタイムを想像して、田村は少し照れながらも鼻歌交じりにバスルームへと向かった。
可愛いヤツめ、と鹿倉は笑いながらソラの顔をくしゃくしゃと撫でた。
段々猫の扱いがわかってきて、顔回りを撫でてやると喜ぶみたいで。ただし、あまりしつこくやっていると引っ掻かれるのだが。
「っ痛いなあ、もう」
それさえも可愛くて。ソラとじゃれていると田村が、
「温度、どんくらい?」と戻って来た。
「えー? あんまり熱いと長く入ってらんないよね?」
「じゃあ、ちょっとぬるめで設定しとくよ」
キッチンにあるリモコンからお湯張りボタンを押して、鹿倉の横に座る。
「ソラ、抱っこしたい」
「ん」
田村が言うのでソラを手渡すと、ローテーブルに置いていたスマホを起動した。
「ゲーム?」
「いや、さっき鳴ってたから。もっさんかなーと思って」
「仕事の話?」
メッセージを確認すると。
「明日のミーティング、午後に変更って」
「んじゃ、俺朝からミネさんと打ち合わせあるから、先に出るわ」
「いや、俺だってもっさんのミーティング以外にも仕事あるから朝から行くし」
「今何やってんの?」
「んー、堀さんの新しいタウン誌絡みがメイン。もっさんのはほぼほぼ終わってるから、そっちにまた新しい話が来るまでは堀さんに振り回される」
田村の腕の中でゴロゴロと喉を鳴らしているソラの、頭を撫でながら言う。
「こないださー、志麻さんにかぐと二人で一個仕事持たせるって言われたんだけど、かぐ聞いてる?」
「え? 知らん」
「堀さんから聞くと思うよ。俺、ちょっと楽しみなんだけど」
「俺は怖いかもー」
「なんでだよ」
「田村、暴走しがち。手綱引いてるのが志麻さんだから言うこと聞いてるけど、おまえ俺の話聞かなそう」
「そんなことねーし」
「そんなことあるし」
二人してちょっと睨み合って。笑っているとお風呂のお湯張りが終わったというメロディーが流れてきて。
「かぐ、先入ってる?」
「なんで? 一緒、入ろうよ」
「脱衣所狭いじゃん」
「くっついてりゃいいじゃん」
「……こーゆー時だけ、やたらとグイグイ来るよね、かぐって」
「イヤ?」
上目遣いできゅるんと問われて。
もう、仕方がないからキスで答えた。
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