キュートなSF、悪魔な親友

月那

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キュートなSF、悪魔な親友

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 鹿倉が田村の部屋を訪れる時。特にお伺いをたてることなど、既にない。
 最初の数回こそ、「今日行っていい?」と電話やラインで訊いてきたり、あるいは「連れて帰って」なんて可愛く甘えてきたりしていたが、最近では当たり前のように田村の横に乗り込むし、仕事のタイミングが合わない時には何の連絡もなくピンポンと鳴らして部屋に来る。しかもエントランスのオートロック暗証番号さえ、知っているわけで。
 田村もそれは何の疑問もなく受け入れているので、寧ろ来る前提で夕食は用意している。
 今日はクライアントのトコから直帰だった鹿倉がインターフォンを鳴らした時、丁度田村も帰宅したばかりだったので、
「かぐ、メシまだだから先風呂入んなよ」
とだけ言って寝室のクローゼットに向かった。
「んー。あんまし腹減ってないなー。シャワーだけ浴びたら、そっち行っていい?」
 バスルームの入口でネクタイを緩めた鹿倉は、丸い目を細めて寝室を指差した。
 そのセリフが何を言わんとしているかは、目が語っている。
「……いいけど、俺もまだ帰ったばっかだから」
「うん。知ってる。でも俺気にしないから、脱いで待ってていいよ」
「お前が気にしなくても俺が気にする」
「んじゃ、一緒に入る? なんならお風呂でヤってもいいよ?」
「……どした? えらくスイッチ入ってるけど」
「ちょっとねー。今、ソッチに頭いっちゃってんの」
 鹿倉はここに来ると遠慮なく田村を煽る。特に決まった相手がいない、という時期は基本的に田村が相手をしてきたので、それが習慣になっているのか、性欲処理イコール田村という図式が出来上がっているらしく、食欲があまり旺盛でない鹿倉も性欲だけは並みの男子もしくはそれ以上にあるみたいで、こういう状態に陥っている時は恐ろしくがっついてくるのだ。
「わかった。かぐがシャワー浴びてる間に軽くメシの用意だけしてくるから、上がったら先にベッドで待ってて」
 据え膳なんて絶対に無視しない田村だから、鹿倉の誘いに乗らないわけがない。
 チルドルームにある刺身の存在だけ確認すると、あとはデリバリーに予約だけ入れて鹿倉の後に軽くシャワーだけ使うと、ベッドでイイ感じに欲情して待機してくれている鹿倉の元へと急いだ。
「おまちー」
 最早下着のみでベッドにダイブすると、
「ぐあっ! 田村、重いっ!」
素っ裸でシーツに包まっていた鹿倉が悲鳴を上げた。
「もーちょっと色気のある入り方して来いよ」
 シーツごと抱きしめて、身動きできない鹿倉がこれ以上悪態をつく前に、とキスで口を塞ぐ。
 始まりの合図のようなキスで、お互いに口腔内を味わいながら熱を高める。
 鹿倉の唇は薄くて、田村が吸い付くとすぐに赤く染まる。色白だから、上気すると頬も赤く染まる。
 跡を付けないことだけはお互い最低限のルールとしているけれど、田村が舐めていく場所は熱を持つせいですぐに赤く染まる。その様子がまた、艶めかしくて。
 シーツの中で、鹿倉の肌を余すところなく味わっていると、欲を高めた鹿倉が自身の硬く立ち上がったソレと一緒に田村のモノを纏めて握る。
「んっ……」
 鹿倉の指が先端の割れ目をグリグリと擦ると、田村の口からも思わず喘ぎ声が漏れる。そうされることがどれだけ気持ちイイか知っているから、鹿倉が執拗にソコを弄るのでどんどん先走りが溢れてくる。
 ヤバいと思って身を引き、鹿倉の手から逃げた。が、追うように今度は鹿倉がソレを口に含んだ。
「あっ……ヤ、ダメ……よっくん、それ、ヤバイって」
 熱い口の中は、それだけで十分に射精感を高めるというのに、鹿倉はじゅぶじゅぶと故意に音を立てて吸い上げる。ねっとりと絡みつく舌が田村の快感を追い上げ、
「ダ……ダメ、出る!」
堪えきれなくてそのまま放ってしまった。
 けれど鹿倉はそれもまた想定内と、半分ほど飲み込んで。涎と一緒に精液が唇の端から垂れるのを、見せつけるように妖艶に微笑んで見せた。
「……よっくん、ごめん。大丈夫?」
 問うた田村に、くふっと含み笑いで「まだまだ、終わんないよ?」と、一度の放出では全く萎える様子のない田村のソレを再び掌で包み込み、湿った音を立てて扱き始めた。唾液と精液のせいで滑るソレが掌で擦り上げられると硬さを増し、反り勃つ。
「あっ……ちょ、待って」
「待たない。今度は俺の番」
 田村の上に跨りながら、鹿倉は二本纏めて扱く。その、快感に眉をしかめている鹿倉が愛おしくなり、田村は手を止めさせた。
「チェンジ」
 ぽすん、と鹿倉をベッドに俯せにさせると、腰を突き出すように掬い上げた。
 鹿倉のモノを掌で扱きながら、手早く自分のモノにゴムを装着する。そして、枕元に用意していたローションを手に取ると指を湿らせた。
 後孔の入口をその指で撫でると鹿倉の声が上がる。
「……んんっ」
 ひくひくと迎え入れる期待で孔が蠢いていて、鹿倉の腰が田村の指を吸い込むように揺れた。と同時につぷ、と中に潜り込む。
「はんっ……」
 田村の中指がぐりぐりと中を探るように動き、鹿倉が腰を振ってソコへと誘う。
「あん……ソコっ! イイ!」
 ピンポイントでソコに触れた時、鹿倉のモノもびくびくと大きく膨れ上がり、先走りをあふれさせた。
 指を増やしてその部分をぐちゅぐちゅと突き、中を掻きまわすと鹿倉の声も高くなり、耐えきれなくて掠れた声で「もう……入れて!」と懇願した。
 田村はその声に呼応するように自身を入口に宛がい、ぐいと腰を進めて中へと挿入する。
「あ、ああんっ……い、イイっ!」
 ずぶずぶと田村のモノを奥へと進めると、鹿倉の掠れた喘ぎ声が高くなる。ポイントを擦り上げるように腰を動かすと、「や……っ出る! もう、出る……っ!」田村の手の中で鹿倉が射精した。
「はあっ……はあっ……ヤ……あ!」
 出してもまだ萎えない鹿倉のソレをやわやわとまだ握り、中をずくずくと突き上げる。
「……まだまだ、だろ?」
 突き上げながら、鹿倉の耳元で言って振り向かせると、舌を絡ませた。
 バックでやると鹿倉が一番悦ぶということは熟知しているので、田村はそのまま中を味わう。イったことで締め付けている感じが増しているようで、中の心地よさは半端なくて。ゴムの中に先走りが溜まっているのがわかるくらい、射精感が強くなる。
 でもまだイくのは勿体なくて。ぐちゅぐちゅと中を掻きまわすように味わう。
 熱い鹿倉の内側は田村に絡みつくように締め付けるから、緩急を付けて腰を動かすと鹿倉が快感に身をよじらせながら喘ぐ。その声が耳に心地イイから、より一層ぐりぐりとイイ所を突き上げ、攻め立てる。
「あんっ……あんっ……イいっ……」
 肌のぶつかる音と、中を掻きまわす濡れた音に、鹿倉の高い喘ぎ声が激しくなる。田村も、それに呼応するように鹿倉の耳元に「すげ……気持ちイイ」と囁く。鹿倉の耳たぶを甘噛みしながら言うと、手を自身に添えようとしたので、わざとその手を掴む。
「や……さ、触りたい」
「ダメ。まだイかせない」
 空を彷徨う鹿倉のソレが完全に射精感を高めていて、透明な涎をたらたらと溢れさせる。男だから、中だけじゃなくてやっぱりソレ自体に刺激が欲しくて。でも両手を封じられた鹿倉には最後の刺激が来ないことで、ただただ絶頂までのギリギリの快感だけが体中を支配していて。
「やあっ……もうっ……ダメっ……お、おかしくなるっ」
「なっていいよ? ぐちゃぐちゃに乱れてるよっくん、すげーエロい」
 ずぷずぷとソコを突き上げ、鹿倉の耳に低い声で囁きかけて。
「あんっ、あんっ……や、はあっんっ!」
 イきたいのにイけないもどかしさに鹿倉の目が涙に潤む。上気して赤くなっている白い肌にその涙と、唇の端から垂れる涎が、更に田村の嗜虐心をゆすぶって。
 少し腰の動きを緩めると、半分ほど自身をソコから引き抜いた。
「……や……ん、やだ、抜かないで……」
 それを聞いて、鹿倉の体を持ち上げると、今度は自分が仰向けになると上から鹿倉を跨がせるように体勢を変えた。
「いいよ。上で、動いて」
 両手をお互い一緒につなぎ合わせて、ソレには触らせないけれど。騎乗位で鹿倉が自分のモノを咥え込んでいるのを下から見上げた。
「はあ……っんっ」
 田村のモノが一番イイ所を掠めるように、その頭の部分を擦りつけるように。鹿倉が腰を持ち上げては下ろす、その仕草が快感を貪欲に求めていて。
 下から更にぐっと突き上げると、
「やあっんっ!」
と鹿倉の声が一層高く上がった。白く細い喉が快感に仰け反る。
 そのまま腹筋に任せて下からずくずくと激しく突き上げる。そろそろ、田村も射精したくなってきていて。
「やんっ……あんっ……あんっ……」
「……すげ、いい眺め……」
 屹立している鹿倉のソレが空を切るように揺れていて。その下の結合部がじゅぶじゅぶと音を立てて自分のソレを擦り上げている。その様がこの上なく卑猥で。
「…や…あっ……も、もう……いあっ……イ、イかせてよお……」
 涙ながらに言う鹿倉の声は完全に掠れていて。
 自分もかなり限界が近いと思い、仕方なく鹿倉の左手を離してやる。そして、田村は腰をがんがんに突き上げ、鹿倉のモノを右手で扱いた。
「はあん……い……イくっ!!」
 欲しかった最後の刺激をやっと与えられた鹿倉のソレは白い精液をびゅくびゅくと放ち、田村もまた中に総ての精を吐き出した。
 少し、意地悪をしすぎたようで、鹿倉はそのまま田村の上にぐったりと全体重を預けるように倒れ込んだ。
「おっと、重いって」
 くるっと鹿倉を抱いて横に寝かせると、田村は自分のモノを中から引き抜き、後処理をする。
 まだまだ全然ヤれる元気はあるけれど、どうやら鹿倉は少しキツいようなのでそのまま大人しく柔らかな素肌を味わうように抱きしめた。
 鹿倉は、田村の腕の中で息を整えるように大きく呼吸していて、その背中をゆっくりと撫でてやる。いつもはさらさらとしているが、さすがに激しく燃え上がった体は少し汗ばんでいる。
「……そいえば、何でそんなにエロくなってたの?」
 鹿倉の汗に濡れた前髪を田村が指でそっと掻き上げて、まだ余韻にとろんとした瞳をしているその目に問いかけた。
「……んー」
 ちょっと、言い淀む様子を訝しげに見ると。
「堀さんがさー、ずるいんだよねー」
 言って、鹿倉が田村の首に腕を回した。
「こーやってさ、くっつくじゃん? あの人」
「え?」
「堀さん、こっちの気も知らないでスキンシップ激しいんだもん。参っちゃうよ」
「いや、ちょっと待て。それ、やってるのかぐの方じゃん」
 いつだって、ちょっとしたことがあると堀の腰に手を回したり、顔を寄せているのは鹿倉の方だと田村は思う。
「うん、俺はね、わざと遊んでんの。あの人、イイ体してるから触り心地イイからね」
 そういうトコ! 何の気なし、なんて風でいつだって誰彼構わず触るのは鹿倉の癖だろう。
「でもさ、堀さんて完全にノンケじゃん? もー、こっちの気も知らないであの人全然普通にハグしてくるし、肩組んでくるし」
「かぐがやるからじゃん」
「俺は誰にでもやってるっしょ? 別にそんなの、相手は何も気にしないし、どうも思わないでしょ? でも堀さんはさー、こっちの下心なんて知らないで俺のこと触ってくるんだよー。だから煽られる」
「……ごめん、意味わかんね」
「なんで? 田村、俺が外で普通に触ってもなんともないじゃん? だから俺にも普通に触るじゃん?」
 いや、普通に触るのと普通じゃなく触るの違いはわからない。が、とりあえず「そういう」空気じゃない状況でのスキンシップに抵抗はない。
「普通の人はね、田村と同じ。俺がそういうつもりがあろうとなかろうと、空気が違うから普通なんだよ。俺が男にしか興味ないってバレないのも、多分そこなんだけど。なんかね、特にノンケの人は絶対空気が普通のまま」
「堀さんも、かぐのこと好きなんじゃないの?」
「それはない。あの人、空気そのままなのに俺に触るっていう事実だけエロい」
「……どういうこと?」
「うー、言葉にすんの難しいなあ。普通に普通の触り方してるように見えるのに、俺だけにはエロく感じる」
「……それは、かぐが堀さんのこと好きで、堀さんに抱かれたいから、とかじゃない?」
「それも違う」
「なんで?」
「俺、堀さんとエッチしたいと思ってない。あの人に男が抱けるとも思えないし、俺、あの人に抱かれるよりは全然田村に抱かれたいし」
「それはかぐが勝手に感じてるだけでしょ?」
「……うーん、どうだろう? でも明らかに俺にエロ視線向けないし、空気感は全然ただのスキンシップだし」
 眉をしかめながらぐずぐずと鹿倉が悩んでいて。
 田村はやっぱり、それは鹿倉が堀に惚れているから、というのが理由だと確信していて。
 触る方じゃなくて、触られる方が受け取る気持ち、というのか答えだと。そして、鹿倉は堀が男相手に恋愛感情を抱ける人間じゃないということを肌感で持っているから、意地になっているだけなのだと。
 別に、片思いでも認めてしまえば簡単な答えだと思うんだが。田村は、そこは鹿倉が認めない以上何を言っても無駄だと思ったので。
「んじゃ、堀さんの代わりに俺が抱いてやるから」
 半分萎えてはいたものの、それでも鹿倉の柔肌は十分に刺激を与えてくれているので、いつだって臨戦態勢である。鹿倉が落ち着いたのなら、もうちょっと味わいたい。
「えー、もっかいヤんの?」
「いや?」
「いやじゃないけど。メシ、来んじゃねーの?」
「……うん、来るかもしれない」
「裸で引き取るの?」
「……玄関先に置いといてもらう」
「いいけど。途中で腹減って動けないとか、俺、ヤだけど?」
「お前、食欲より性欲人間だもんなー」
「うん。始めたら、最後までさせるよ?」
「……」
「するの、しないの?」
 既に、鹿倉の目が。ニヤついている。確実に「する」という返事をその目が引き出していて。
 仕方がないのでキスで返事をした。
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