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「で?」
「で……って……?」
いつもの居酒屋で、いつものメンバーで。
高倉が異動して約二週間が過ぎ、漸く落ち着いた和泉は小田や高梨たちに総てを打ち明けた。
その後の小田の第一声が冒頭のそれである。
「和泉は埴生クンとくっついて幸せになりました…ってことには? なってないの?」
黙って聴いていた高梨が小田の一言を説明する。
「…っかやろおお、なるわけねーだろっ!」
「えー? なんでー? 埴生ちゃん、いいヤツじゃん。そのままたかちゃんりょうさんのようにらぶらぶ状態になっちゃえばいいんでないの?」
小田がにやにやと笑いながら突っ込むが、和泉は真剣に怒った口調で反論する。
「なるかっつーの。弘にふられたからって、はいそうですかって他の男となんてつきあえるかよ! オレは男なんか好きじゃねーよ! 弘が好きだっただけだ!」
知られてしまった以上こわいモンなしである。
きっぱり言いきって和泉はビールを呷った。
「……って、はっきり埴生クンにゆったの?」
高梨に言われ、う、と答えに詰まる。そして首を横に振り、
「にゃ……あれから、あいつと話してねー」
ぼそっと呟いた。
「え、どうして? 埴生クンっていつも和泉のあと追いかけてたじゃん」
「知らねー……」
和泉としても腑に落ちないのはそこなのだ。
あの日埴生の部屋で目を覚ました後、自分の行動にバツの悪さを感じて逃げるように自室に戻り、翌朝何もなかったように出勤した和泉だったが、二日後の内勤の日に終礼で高倉の異動を知って動揺し、埴生の部屋を訪れて高倉との話のさわりだけを聞かされた。
和泉のせいだけじゃないから、と埴生は言っていたし、それは納得した。
けれど、工事部の居心地の良さは誰よりも高倉が主張しているというのに、自ら異動を申し出るという事実は和泉には大きなショックだった。
結局その時埴生に当り散らし、怒鳴り散らして彼の部屋を後にして以来、何の音沙汰もないのである。
「……和泉さあ、埴生のこと嫌いなわけ?」
呆れ返りながら小田が訊いた。
「嫌いとか……考えたこと、ない」
「何とも思ってない、ってヤツ?」
何とも、というわけではない、と思う。
なんだかんだ言っても彼が自分を大切にしてくれている、ということはいくら自分が鈍感だと自覚していてもわかる。
そうされることに嫌悪感なんて抱かないし、実際頼りにしている部分もなくは、ない。
けれど、だからといって、じゃあ好きか。
なんて問われたら間違ってもイエスなんて言えないわけで。
「ま、しょーがないさねー。いーずみちゃんは現在傷心の身ですものー、優しくされたらなびいちゃってしまうだろうしー、そんな自分が赦せない、ってゆー気持ちで自制かけちゃうのもわかるしなー」
わざとそんな風に冗談めかして言うけれど、小田の言葉がかなり核心を突いているのは確かで。
「いんじゃないの? 暫く埴生クンとは会わないで、自分の気持ち整理つけることの方が大事だと思うよ」
「そうそう。和泉が焦って結論出すことないよ。丁度いいんじゃないのか? ふじたっちの仕事も今追い込み入ってるし、埴生もそれで忙しいんだろうしさ」
高梨と宮城のフォローもあり、和泉は小さく頷いた。
「で……って……?」
いつもの居酒屋で、いつものメンバーで。
高倉が異動して約二週間が過ぎ、漸く落ち着いた和泉は小田や高梨たちに総てを打ち明けた。
その後の小田の第一声が冒頭のそれである。
「和泉は埴生クンとくっついて幸せになりました…ってことには? なってないの?」
黙って聴いていた高梨が小田の一言を説明する。
「…っかやろおお、なるわけねーだろっ!」
「えー? なんでー? 埴生ちゃん、いいヤツじゃん。そのままたかちゃんりょうさんのようにらぶらぶ状態になっちゃえばいいんでないの?」
小田がにやにやと笑いながら突っ込むが、和泉は真剣に怒った口調で反論する。
「なるかっつーの。弘にふられたからって、はいそうですかって他の男となんてつきあえるかよ! オレは男なんか好きじゃねーよ! 弘が好きだっただけだ!」
知られてしまった以上こわいモンなしである。
きっぱり言いきって和泉はビールを呷った。
「……って、はっきり埴生クンにゆったの?」
高梨に言われ、う、と答えに詰まる。そして首を横に振り、
「にゃ……あれから、あいつと話してねー」
ぼそっと呟いた。
「え、どうして? 埴生クンっていつも和泉のあと追いかけてたじゃん」
「知らねー……」
和泉としても腑に落ちないのはそこなのだ。
あの日埴生の部屋で目を覚ました後、自分の行動にバツの悪さを感じて逃げるように自室に戻り、翌朝何もなかったように出勤した和泉だったが、二日後の内勤の日に終礼で高倉の異動を知って動揺し、埴生の部屋を訪れて高倉との話のさわりだけを聞かされた。
和泉のせいだけじゃないから、と埴生は言っていたし、それは納得した。
けれど、工事部の居心地の良さは誰よりも高倉が主張しているというのに、自ら異動を申し出るという事実は和泉には大きなショックだった。
結局その時埴生に当り散らし、怒鳴り散らして彼の部屋を後にして以来、何の音沙汰もないのである。
「……和泉さあ、埴生のこと嫌いなわけ?」
呆れ返りながら小田が訊いた。
「嫌いとか……考えたこと、ない」
「何とも思ってない、ってヤツ?」
何とも、というわけではない、と思う。
なんだかんだ言っても彼が自分を大切にしてくれている、ということはいくら自分が鈍感だと自覚していてもわかる。
そうされることに嫌悪感なんて抱かないし、実際頼りにしている部分もなくは、ない。
けれど、だからといって、じゃあ好きか。
なんて問われたら間違ってもイエスなんて言えないわけで。
「ま、しょーがないさねー。いーずみちゃんは現在傷心の身ですものー、優しくされたらなびいちゃってしまうだろうしー、そんな自分が赦せない、ってゆー気持ちで自制かけちゃうのもわかるしなー」
わざとそんな風に冗談めかして言うけれど、小田の言葉がかなり核心を突いているのは確かで。
「いんじゃないの? 暫く埴生クンとは会わないで、自分の気持ち整理つけることの方が大事だと思うよ」
「そうそう。和泉が焦って結論出すことないよ。丁度いいんじゃないのか? ふじたっちの仕事も今追い込み入ってるし、埴生もそれで忙しいんだろうしさ」
高梨と宮城のフォローもあり、和泉は小さく頷いた。
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