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【6】Imperial topaz(caramel stone)
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「やば。なる、まじ可愛い」
「彬に言われたくねーし。俺から見たらおまえの方が全然可愛いんだからな!」
彬の言う“可愛い”が嫌味にしか聞こえなくて、成親が膨れながら彬を指差した。
「でっかい家で一人で寂しいっつって誰彼構わず甘えてる彬は、俺なんかよりよっぽど可愛いし! 幼稚園児じゃねーんだから、抱っこして貰わないと寝れないとか言ってんじゃねーよ」
「えー。俺、そんなこと言ってねーじゃん」
成親にばかにされて、今度は彬がムッとする。
「言ってんのと一緒だし。彬はちゃんと、自覚しなきゃダメ。抱き枕は一個に絞りなさい!」
「はあ?」
「皇のこと、好きなんでしょ? ちゃんとそれ、認めなよ。そんで、寂しい時はちゃんと皇に甘えたらいいじゃん。皇が掴まんないからって、別の人とセックスして紛らわすって、そんな甘えたこと言ってんじゃねーよ」
はっきり、きっぱり。成親が言い切る。
「好きな人としか、しないんだよ、みんな。だから、大切なことなんでしょ?」
まるで、教科書のようなことを、真っすぐな目で言うから。
「…………なる」彬が鼻白む。
「俺は、しょーさんとしか、しない。したいとも思わない。しょーさんがしてくんないなら、俺は誰ともしない。そう決めてる。それは絶対に当たり前のことだし、寂しさを紛らすためにすることじゃ、ない」
二の句が告げられないのは、彬だけではなく翔も、そうで。
仁王立ちで説教している成親が、真剣な顔をしているから二人して黙り込むことしかできない。
と。
「どしたん? なんか、豆柴に説教されてるゴールデン二頭って雰囲気だけど?」
勝手知ったる他人の家、という顔をして、待っていた人物が入ってきた。
「皇……」
彬がその名前を呼んだ瞬間、成親は振り返って皇を睨みつける。
「え? 俺、なんか怒られることした?」
へらへら笑って言うから。
「いっぱいしてるし! 皇、俺はあんたにも言っときたい!」
成親が、二人の横に皇を並ばせる。
「えー? 俺もお?」
「いいから、黙って聞く!」
もはや、成親の雰囲気は“学校の先生”で。
「彬が寂しがってんの、皇は知ってんだろ? なんでか、わかる? 皇のこと、ちゃんと信じられないからだよ? ちゃんと、彬のこと大事に想ってるってこと、伝えてやんないから彬が不安になって寂しくなるんだ」
「何の話?」
突然そんなことを言われて、皇が首を傾げた。
「道徳の授業」
翔が小さく囁いた。
「いや、保健体育じゃね?」
彬が言う。
「違う! 俺は今、大事な話してんの! 皇が彬のことほっとくから、だから彬が寂しくなってしょーさんに手を出すことになったんでしょ? 俺の大事なしょーさんは、彬のオモチャじゃない。寂しいからって、食っていいわけじゃ、ない」
腕を組んで、真面目な顔をしている成親に。
「彬、おまえ、俺のこと好きなん?」
皇が“初耳”とばかりに問う。
「……かなあ?」
「そーゆートコだっつの! 彬も皇も、好きじゃなきゃえっちしないでしょ? お互い、大好きだからするんでしょ?」
物凄い可愛いことを、怖い顔をしながら言うから、翔は笑いを堪えるのに必死で。
「そーゆーもん?」
へらへらと笑いながら皇が彬を見た。
「まあ、実際嫌いなヤツとは寝ないからねえ。あながち、間違っちゃあいないんじゃね?」
「えっと。じゃあ、何? 俺、彬と恋愛してるってこと?」
「皇、自覚ないの? 彬はずっと皇のことが大好きなんだよ? それ、わかってて彬とえっちしてたんじゃないの?」
「ほんと、えっらい可愛いことゆってるけど、何なん、こいつ?」
眉を寄せた皇の言葉に、
「だから、こーゆートコなんだっつの。ふっつーに超可愛いだろ?」
くふくふと笑いながら彬が言う。
そして、そんな皇と彬のやりとりに、意味がわからなくて成親がきょとんとしていると、
「なる。こいつらに、当たり前のこと言っても無駄。遊びで誰とでも寝る奴らだから」
翔が成親の肩を抱いて言った。
「もう、なるは彬に近付くな。彬も皇も、好きにやっていいから俺らに関わんなよな」
「違う! しょーさん、違うよ。少なくとも彬が皇を好きなのは、絶対そうなんだから」
「何を根拠に? 俺、別に皇が誰と寝ても全然平気だけど?」
「そんなことない。じゃあ、なんであの時泣いたのさ? 彬、ちゃんと認めろよ。一番傍にいて欲しいのは他の誰でもない、皇だろ!」
「知った風な口、きいてんじゃねーよ」
彬が、それまでのふざけた表情を消して、低い声で成親を睨んだ。
「俺と皇は、なると翔のような甘々な関係とは違うんだよ。ただ、ヒマつぶしにつるんでるだけだし。皇とのセックスだって、そりゃ体の相性がいいからヤってるだけだ。何が大好きだから、だ。笑わせんな」
今まで、成親には見せていなかった顔をするから、思わずひるんでしまって一歩退いた。
「彬に言われたくねーし。俺から見たらおまえの方が全然可愛いんだからな!」
彬の言う“可愛い”が嫌味にしか聞こえなくて、成親が膨れながら彬を指差した。
「でっかい家で一人で寂しいっつって誰彼構わず甘えてる彬は、俺なんかよりよっぽど可愛いし! 幼稚園児じゃねーんだから、抱っこして貰わないと寝れないとか言ってんじゃねーよ」
「えー。俺、そんなこと言ってねーじゃん」
成親にばかにされて、今度は彬がムッとする。
「言ってんのと一緒だし。彬はちゃんと、自覚しなきゃダメ。抱き枕は一個に絞りなさい!」
「はあ?」
「皇のこと、好きなんでしょ? ちゃんとそれ、認めなよ。そんで、寂しい時はちゃんと皇に甘えたらいいじゃん。皇が掴まんないからって、別の人とセックスして紛らわすって、そんな甘えたこと言ってんじゃねーよ」
はっきり、きっぱり。成親が言い切る。
「好きな人としか、しないんだよ、みんな。だから、大切なことなんでしょ?」
まるで、教科書のようなことを、真っすぐな目で言うから。
「…………なる」彬が鼻白む。
「俺は、しょーさんとしか、しない。したいとも思わない。しょーさんがしてくんないなら、俺は誰ともしない。そう決めてる。それは絶対に当たり前のことだし、寂しさを紛らすためにすることじゃ、ない」
二の句が告げられないのは、彬だけではなく翔も、そうで。
仁王立ちで説教している成親が、真剣な顔をしているから二人して黙り込むことしかできない。
と。
「どしたん? なんか、豆柴に説教されてるゴールデン二頭って雰囲気だけど?」
勝手知ったる他人の家、という顔をして、待っていた人物が入ってきた。
「皇……」
彬がその名前を呼んだ瞬間、成親は振り返って皇を睨みつける。
「え? 俺、なんか怒られることした?」
へらへら笑って言うから。
「いっぱいしてるし! 皇、俺はあんたにも言っときたい!」
成親が、二人の横に皇を並ばせる。
「えー? 俺もお?」
「いいから、黙って聞く!」
もはや、成親の雰囲気は“学校の先生”で。
「彬が寂しがってんの、皇は知ってんだろ? なんでか、わかる? 皇のこと、ちゃんと信じられないからだよ? ちゃんと、彬のこと大事に想ってるってこと、伝えてやんないから彬が不安になって寂しくなるんだ」
「何の話?」
突然そんなことを言われて、皇が首を傾げた。
「道徳の授業」
翔が小さく囁いた。
「いや、保健体育じゃね?」
彬が言う。
「違う! 俺は今、大事な話してんの! 皇が彬のことほっとくから、だから彬が寂しくなってしょーさんに手を出すことになったんでしょ? 俺の大事なしょーさんは、彬のオモチャじゃない。寂しいからって、食っていいわけじゃ、ない」
腕を組んで、真面目な顔をしている成親に。
「彬、おまえ、俺のこと好きなん?」
皇が“初耳”とばかりに問う。
「……かなあ?」
「そーゆートコだっつの! 彬も皇も、好きじゃなきゃえっちしないでしょ? お互い、大好きだからするんでしょ?」
物凄い可愛いことを、怖い顔をしながら言うから、翔は笑いを堪えるのに必死で。
「そーゆーもん?」
へらへらと笑いながら皇が彬を見た。
「まあ、実際嫌いなヤツとは寝ないからねえ。あながち、間違っちゃあいないんじゃね?」
「えっと。じゃあ、何? 俺、彬と恋愛してるってこと?」
「皇、自覚ないの? 彬はずっと皇のことが大好きなんだよ? それ、わかってて彬とえっちしてたんじゃないの?」
「ほんと、えっらい可愛いことゆってるけど、何なん、こいつ?」
眉を寄せた皇の言葉に、
「だから、こーゆートコなんだっつの。ふっつーに超可愛いだろ?」
くふくふと笑いながら彬が言う。
そして、そんな皇と彬のやりとりに、意味がわからなくて成親がきょとんとしていると、
「なる。こいつらに、当たり前のこと言っても無駄。遊びで誰とでも寝る奴らだから」
翔が成親の肩を抱いて言った。
「もう、なるは彬に近付くな。彬も皇も、好きにやっていいから俺らに関わんなよな」
「違う! しょーさん、違うよ。少なくとも彬が皇を好きなのは、絶対そうなんだから」
「何を根拠に? 俺、別に皇が誰と寝ても全然平気だけど?」
「そんなことない。じゃあ、なんであの時泣いたのさ? 彬、ちゃんと認めろよ。一番傍にいて欲しいのは他の誰でもない、皇だろ!」
「知った風な口、きいてんじゃねーよ」
彬が、それまでのふざけた表情を消して、低い声で成親を睨んだ。
「俺と皇は、なると翔のような甘々な関係とは違うんだよ。ただ、ヒマつぶしにつるんでるだけだし。皇とのセックスだって、そりゃ体の相性がいいからヤってるだけだ。何が大好きだから、だ。笑わせんな」
今まで、成親には見せていなかった顔をするから、思わずひるんでしまって一歩退いた。
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