Treasure of life

月那

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【6】Imperial topaz(caramel stone)

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 インターフォンが鳴って。
 リビングでゲームをしながら、母と言う名の夕食を待っていた成親はそのモニタに映し出された人物に固まった。

 逢いたくて逢いたくて仕方なかった人。
 でも逢えなくて、逢ってはいけないと思って避けていた人。
 まさかそこに、その人がいるなんて想像もしていなくて。

 反応できずにいると。
 モニタの画面から、その人が離れていくのが見えて、そのまま暗転した。

「やだ!」
 その、真っ黒になった画面があまりにも切なくて。
 成親はコントローラを手に持ったまま、廊下を駆け出していた。

「しょーさん、待って!」
 玄関を開けて、その人の後ろ姿に叫んだ。
「……なる」
「待って……かーちゃん、は、今いない、けど……」
「別に、れーこちゃんに用があるわけじゃ、ない」
 振り返った翔が、でも、目を合わせてはくれなくて。
 ぎこちない会話が、途切れる。

「……時間、ある?」
 無言の時間が怖くなった翔が小さく成親に問いかけた。
「上がって」
 短く答え、翔のTシャツの裾を引く。
 二人して黙ったまま家に入った。

 短い廊下を進み、リビングへと入る。
 この場所に入るのが久しぶり過ぎて、翔は“矢崎家の匂い”を大きく吸ってその懐かしさに酔う。

「……桃鉄?」
 テレビに映し出されている画面を見て、翔が呟いた。
「俺的に今、アツいの」
「……すげー子供の頃やってたけど」
「一緒にやる?」
「……じゃ、なくて」
 無表情のまま、ゲームに誘う成親の腕を、今度は翔が掴んだ。

「しょーさん、俺に何か、用事、あるの?」
 カタコトのように言うのは、そこに感情を載せない為。
 下手に想いが載っかればきっと、泣いてしまうから。

 でも。
 それを受け取った翔も、同じように表情を固めてしまう。

 ……ああ、やっぱり。

 翔がここに……成親に会いに来たその意味が、わかる。
 心臓が、ぎゅっと締め付けられるような感覚がして、苦しくなるけれど。
 これから言われることは、ずっと予想していたことだから。
 受け止めないといけないって。

 けじめをつけないと、お互いに前を向けないだろうから。
 きっと翔がオトナとして、それを伝えに来たのだと悟る。
 だから、成親は覚悟を決めて。

「……俺に、ちゃんと、お別れ、言いに来た?」
 そう、言った瞬間目から涙が溢れてきた。

 逢いたかった。でも逢えば恐らく、言われることなんてわかっていたから。
 だからこっちからは逢いに行けなかった。
 言われるまでは、それでもまだ“別れたわけじゃない”なんて自分の中の言い訳ができたから。
 でも。

 逢って、正面から明確にその事を告げられれば、もう未来なんてない。
 好きでい続けることさえ、きっとしてはいけないこと、になってしまう。
 そんな最後通牒が怖くて、今まで避けてきたのだと、自分の行動の意味を自覚した。

 逢いたいけど……逢いたく、なかった。
 だから、涙が溢れる。
 そして翔が、掴んでいた手を離した。

 手を、離された。
 その事実こそが、総てだと。

 でも……言っても仕方ないのはわかっているけど、でも、伝えておきたくて。
「しょーさん、俺……でも、まだ好き。しょーさんが、皇のこと好きだってわかってるけど、でも……」

「ちがう!」
 泣き顔で、必死に訴えている成親の言葉を翔が強い声で遮った。
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