Treasure of life

【6】Imperial topaz(caramel stone)

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「ここで会ったが百年目！　たたっ切ってやるわ！」
　征人がエアで刀を構えて目の前に立ちはだかったから。
「……おまえ、時代劇観てんのかよ？　シュミ、渋いな」
　翔は眉根を寄せて、言ってやった。

「つまんねーヤツだな。ノれよ」
「んなもん、ノれるか、ばーか」
　とりあえず笑ってはやるけれど。

「翔くん、ちょっとお茶しよーぜ」
「今度は何？　何のドラマだよ？」
「……じゃあ、ラブコメで」
「おまえとラブストーリーやる気はねーよ」
「いやいや。じゃなくて。まじな話、ちょい翔くんと話がしたい」

　バスケ部が多忙ってことは、翔も知っているし、同じく特選科にも休みなんてないことは恐らく征人も知っているのだろうから。
　こうして補講帰りに会う、ってのは征人が多少無理して時間を作ったのだろう。
　そして、何故そうまでして会おうとしたか、という理由までが、判ってしまう。
　目の前の征人は、行動こそふざけているけれどその目が真剣だから。

　翔は小さく息を吐くと、
「わかった。そこのウラ、行こ。人目に付かねー方がいいだろ」
　観念して、征人を促した。
　連れ立って新校舎の裏へと回る。自転車小屋に向かう方向とは真逆だから、基本的に人気ひとけはない。

　征人が自分の前に現れたその理由。
　きっとそれは、成親の不自然な様子を伝える為だろう。

　成親に合わせる顔がなくて、とにかく避けていたのは事実だ。
　勿論、本音は“逢いたい”以外の何物でもないけれど。
　あの笑顔を独り占めにしたくて、年単位で頭を捻ってやっとのことで手に入れた大切な宝物なのに、今の自分にはそれを穢してしまうことしかできないから。

　逢えない。……逢えるわけが、ない。
　成親がたとえ逢いたいと願ってくれていたとしても、それはできない。
　けれどもそれを、征人は責めるだろう。
　その為にこうして、スケジュールを無理矢理調整して直談判しにきたのだろうと、それは翔にもわかる。

　ただ……どう説明する？
　こんな状況になってしまったのは、自分のせいだけれど、それをどう説明したらいい？

　……言い訳だ。言い訳でしかないのだって、判っているけれど。
　それでもこんな自分にもプライドはある。

　抱かれて、抱き潰されて、それに溺れている様を他の誰でもない、大事な成親に見られて。
　浅はかな自分のせいで勝手に溺れてしまっただけなのに、それを成親に責められるのが怖くて逢えないなんて。
　彬から成親を護りたいのに、それがこんな事態になってしまっているという、自分の体たらくを他人にどう説明しろというのだ？