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【4】Crystal
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成親がただただ黙って泣いているのを、征人はじっと見つめていた。
そして。
「翔くんが成親から離れてくなんて、俺は信じないよ」
はっきりと、言う。
「まーくんが、信じなくても、実際、そうだから」
「違うね。絶対、それは、ない」
あまりにも力強く否定するから、成親は溢れる涙の中で征人を見た。
「あの、翔くんが、だよ? なるに関してはこの俺にさえ敵意向けてきて、誰にも指一本触れさせないって息巻いてた翔くんが、だ。なるを泣かせるなんて、あり得ねーだろ」
「有り得なく、なかったんだよ」
「だから、違うって絶対。何か、あるんだよ。絶対。なるの勘違いだってば」
「何を勘違いするってんだよ?」
「だって、今日俺、翔くんからは“勉強ちゃんとしてるか訊いて”って言われただけだよ? それ、まんまなるにラインしただけなのに、なるすぐ翔くんからって気付いたじゃん。翔くん、なるから話聞いてやってって、それしかゆってなかったし、それってなるへの想いしかないじゃん」
「……まーくん、ごめん。意味、わかんない」
「もう! 俺だって国語は苦手だっつの」
頭を掻きむしりながら、征人が言う。
「だから。翔くんはなるが大事だから、なるが辛いのを俺に吐き出せって言ったんだろ? それって、翔くんが今なるの傍にいられないから、代わりに俺にいてやれってことじゃねーの?」
「……」
「少なくとも、翔くんが今なるの傍にいられないのはわかるけど、でもそれはなるのことを嫌いになったとか、そーゆーんじゃないって、俺には思えるよ?」
嫌いにはなってないけど、でも、他に傍にいたい人がいるってだけじゃん。
成親が、内心そう思ったけれど。
でも、それを口にできなかった。
だってその人物がはっきりとわかっているから。
その人の傍にいたいって思うから、自分から離れて行って。
その人の傍にいるけど、ただの責任感で心配してるだけで。
成親の中では、もうはっきりとそれがわかるから。
涙は、止まらない。
征人の優しさが、切ない。
「なる。泣くなよ……俺もう、どうしていいか、わかんねーよ」
ハンカチなんて持ち歩くような人間じゃないから、征人はTシャツの裾を引き上げると、それで成親の涙を拭った。
「……まーくん。これ、俺が女の子だったら、ここはぎゅってするトコだよ」
征人の仕草があまりにも可愛くて、成親は泣きながらもそう言って、くふ、と笑って見せた。
「なる……」
「ごめん、ありがと。俺、まーくんと付き合いたかったな」
「……やめて。そんなの、翔くんに聞かれたら俺、殺されるから」
「大丈夫だよ。も、しょーさんは俺のこと全然想ってないから」
「だから、そんなことねーし。大丈夫だから。ちょっとだけ会えないの、我慢してたら絶対戻ってくるから」
成親が、翔の名前を口にする度に涙が溢れるから。
征人のTシャツは伸びてぐずぐずになる。
「ん。そだね。気休めでも、そう、思っとく」
「なる! 気休めとかじゃ、ねーから。翔くん、信じろよ」
「無理だよ。もう」
「じゃあ、俺を信じろよ!」
征人が肩を掴んで目を見た。強い意思を持った目で。
「何があったか、話せないならそれでもいい。でも、なるが想ってるより翔くんはずっとなるのこと想ってるから。それ、俺は絶対信じてるから。だから、なるが今翔くんのこと信じらんなくても、俺んこと、信じてて」
「……まーくん……」
「だから。辛くなったら俺の前でだけは泣いていいから。だから、絶対他の人に涙、見せるなよ」
「……見せねーよ」
征人の剣幕に、さすがに涙が止まった成親が唇の端を上げて笑って見せた。
「俺、ちょっとだけまーくんのこと、頼っていい?」
「ちょっとだけじゃなくて、全面的に頼ってくれていいよ」
「ん……しょーさんのこと、ちゃんと忘れられるまで、でいいから」
「……忘れなくていいよ。ずっと、翔くんのこと想ってればいいよ」
征人の言葉が、気休めでしかないのはわかっているけれど。
でも、今翔を想って痛い心が落ち着くまで、征人に甘えていたいと思ったから。
成親は、今度は自分のTシャツの裾で涙を拭った。
「ありがとね、まーくん」
そして。
「翔くんが成親から離れてくなんて、俺は信じないよ」
はっきりと、言う。
「まーくんが、信じなくても、実際、そうだから」
「違うね。絶対、それは、ない」
あまりにも力強く否定するから、成親は溢れる涙の中で征人を見た。
「あの、翔くんが、だよ? なるに関してはこの俺にさえ敵意向けてきて、誰にも指一本触れさせないって息巻いてた翔くんが、だ。なるを泣かせるなんて、あり得ねーだろ」
「有り得なく、なかったんだよ」
「だから、違うって絶対。何か、あるんだよ。絶対。なるの勘違いだってば」
「何を勘違いするってんだよ?」
「だって、今日俺、翔くんからは“勉強ちゃんとしてるか訊いて”って言われただけだよ? それ、まんまなるにラインしただけなのに、なるすぐ翔くんからって気付いたじゃん。翔くん、なるから話聞いてやってって、それしかゆってなかったし、それってなるへの想いしかないじゃん」
「……まーくん、ごめん。意味、わかんない」
「もう! 俺だって国語は苦手だっつの」
頭を掻きむしりながら、征人が言う。
「だから。翔くんはなるが大事だから、なるが辛いのを俺に吐き出せって言ったんだろ? それって、翔くんが今なるの傍にいられないから、代わりに俺にいてやれってことじゃねーの?」
「……」
「少なくとも、翔くんが今なるの傍にいられないのはわかるけど、でもそれはなるのことを嫌いになったとか、そーゆーんじゃないって、俺には思えるよ?」
嫌いにはなってないけど、でも、他に傍にいたい人がいるってだけじゃん。
成親が、内心そう思ったけれど。
でも、それを口にできなかった。
だってその人物がはっきりとわかっているから。
その人の傍にいたいって思うから、自分から離れて行って。
その人の傍にいるけど、ただの責任感で心配してるだけで。
成親の中では、もうはっきりとそれがわかるから。
涙は、止まらない。
征人の優しさが、切ない。
「なる。泣くなよ……俺もう、どうしていいか、わかんねーよ」
ハンカチなんて持ち歩くような人間じゃないから、征人はTシャツの裾を引き上げると、それで成親の涙を拭った。
「……まーくん。これ、俺が女の子だったら、ここはぎゅってするトコだよ」
征人の仕草があまりにも可愛くて、成親は泣きながらもそう言って、くふ、と笑って見せた。
「なる……」
「ごめん、ありがと。俺、まーくんと付き合いたかったな」
「……やめて。そんなの、翔くんに聞かれたら俺、殺されるから」
「大丈夫だよ。も、しょーさんは俺のこと全然想ってないから」
「だから、そんなことねーし。大丈夫だから。ちょっとだけ会えないの、我慢してたら絶対戻ってくるから」
成親が、翔の名前を口にする度に涙が溢れるから。
征人のTシャツは伸びてぐずぐずになる。
「ん。そだね。気休めでも、そう、思っとく」
「なる! 気休めとかじゃ、ねーから。翔くん、信じろよ」
「無理だよ。もう」
「じゃあ、俺を信じろよ!」
征人が肩を掴んで目を見た。強い意思を持った目で。
「何があったか、話せないならそれでもいい。でも、なるが想ってるより翔くんはずっとなるのこと想ってるから。それ、俺は絶対信じてるから。だから、なるが今翔くんのこと信じらんなくても、俺んこと、信じてて」
「……まーくん……」
「だから。辛くなったら俺の前でだけは泣いていいから。だから、絶対他の人に涙、見せるなよ」
「……見せねーよ」
征人の剣幕に、さすがに涙が止まった成親が唇の端を上げて笑って見せた。
「俺、ちょっとだけまーくんのこと、頼っていい?」
「ちょっとだけじゃなくて、全面的に頼ってくれていいよ」
「ん……しょーさんのこと、ちゃんと忘れられるまで、でいいから」
「……忘れなくていいよ。ずっと、翔くんのこと想ってればいいよ」
征人の言葉が、気休めでしかないのはわかっているけれど。
でも、今翔を想って痛い心が落ち着くまで、征人に甘えていたいと思ったから。
成親は、今度は自分のTシャツの裾で涙を拭った。
「ありがとね、まーくん」
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