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【1】Rose quartz
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成親がこの高校に入学して、一番最初に友達になったのは湯川征人というやたらといつでもハイテンションなヤツで。
結構名の知れたハイレベル私立高校だから、単なる普通科とは言っても偏差値はそこそこ高い。
成親だって中三で必死に勉強してやっと受かった学校だから、周囲にいるのは結構頭のイイヤツばかり、だとは思うけれど、どっからどう見ても征人が“賢いコ”とは思えない発言ばかり繰り出してくれるから、毎日がばかみたいに楽しい。
「なる、なる、なる、なる!聞いて。“殺陣”って書いてタテって読むんだよ!知ってた?」
「……今更?」
「え! マジで? 俺昨日、初めて知ったのに!」
朝、登校してすぐに駆け寄って来た挙句、そんなくだらないことを言ってくる征人が面白過ぎて、
「良かったね、一個、賢くなったね」
頭をポンポンと撫でながら言ってやる。
「くそー。絶対なるだって知らないだろうから、マウント取ってやるつもりだったのに!」
「んなしょーもないことでマウント取ろうなんて思わなくても、いつだってまーくんは俺より遥かにレベル高いから」
「え?」
「テンションだけは」
くふくふ笑いながら言うと、唇を突き出して拗ねる。
デカい体のわりに、いちいち仕草が可愛いのだ。
「今日も朝から部活やってきたんだ?」
テンションだけでなく、体温も高いのだろう、制服のシャツは完全に腕まくりしていて。
五月も終わりではあるが、今朝は割と冷えているから成親はジャケットまで着てきているけれど、征人は完全にノーネクタイのクールビズ仕様で。
「うん。朝からシュート百本打ってきた」
言って、腕を上げてエアでシュートを決めて見せる。
中学からやっているらしいバスケをそのまま続けているから、征人は身長も百八十を超えているし腕なんて結構な太さなのを晒していて。
同じクラスの女子の目がハートマークになっているのを感じて、成親としても友人として鼻が高い。
「なる、部活はやんねーの?」
「やんない。も、野球は諦めた」
「諦めるの、早くね?」
「いいよもう。小学校からずっとやってたし。でも俺、向いてないから」
どんだけ走り込んでも、速さは出せてもパワーがないから結局押し負ける。
球速を上げようとしたら利き腕の筋を痛めてしまって、結局のところ基礎的な筋肉が全然付かないと無理ってことで。
筋トレしても、骨を痛めるだけで。
高校野球と言えばもう、目指す場所が高すぎるから成親にはしんど過ぎるので、入学してもそちらには全く顔を出さず、中学時代の先輩には申し訳ないけれど、帰宅部に確定したのだ。
「ま、無理してやるもんじゃねーしな。そのうち何かやりたいこと見つかったら、そん時に頑張ればいんじゃね?」
「ん」
征人といて居心地いいな、と思う瞬間だ。
楽しいことを一緒に楽しもうとはするけれど、相手が引けばそれ以上押すことはしない。
個人の考え方や生き方を尊重してくれる、そんな優しさが嬉しい。
「なる、昼どーする?」
「俺、前から気になってたんだけど、カフェテリアでめっちゃ美味しいパンケーキ食えるんだって。なんか、どっかの有名店のヤツみたいの。それ、食いたい」
「おいおい、あそこヤロウ二人で行くのって、勇気いるんじゃね?」
校内には学食というものが複数あり、デートで使用するのがカフェテリア、腹をひたすら満たすなら旧食堂、その他平均使用されるのが去年新設された大食堂、となっている。
「大丈夫っぽい。前に三組の松野と中村が二人で行ってみたけど全然平気かったって。ほら、あいつら超スイーツ男子だろ? だからって一緒に行ってくれる女子が掴まんねーって」
女子二人できゃぴきゃぴやってる姿や、スイーツ好きの男連れというのもそこそこいるらしく、それこそガタイのいい体育会系男子も普通にガレットなんて食べている姿があったと、成親の中学時代の友人が話していたのだ。
「んじゃ、行ってみっか?」
「いえーい。ぱんけえきー」
舌っ足らずな可愛い言い回しで喜ぶ成親に、征人は「可愛いヤツめ」なんて思いながら笑顔で返し、担任が教室に入って来たのでそのまま自分の席に帰って行った。
結構名の知れたハイレベル私立高校だから、単なる普通科とは言っても偏差値はそこそこ高い。
成親だって中三で必死に勉強してやっと受かった学校だから、周囲にいるのは結構頭のイイヤツばかり、だとは思うけれど、どっからどう見ても征人が“賢いコ”とは思えない発言ばかり繰り出してくれるから、毎日がばかみたいに楽しい。
「なる、なる、なる、なる!聞いて。“殺陣”って書いてタテって読むんだよ!知ってた?」
「……今更?」
「え! マジで? 俺昨日、初めて知ったのに!」
朝、登校してすぐに駆け寄って来た挙句、そんなくだらないことを言ってくる征人が面白過ぎて、
「良かったね、一個、賢くなったね」
頭をポンポンと撫でながら言ってやる。
「くそー。絶対なるだって知らないだろうから、マウント取ってやるつもりだったのに!」
「んなしょーもないことでマウント取ろうなんて思わなくても、いつだってまーくんは俺より遥かにレベル高いから」
「え?」
「テンションだけは」
くふくふ笑いながら言うと、唇を突き出して拗ねる。
デカい体のわりに、いちいち仕草が可愛いのだ。
「今日も朝から部活やってきたんだ?」
テンションだけでなく、体温も高いのだろう、制服のシャツは完全に腕まくりしていて。
五月も終わりではあるが、今朝は割と冷えているから成親はジャケットまで着てきているけれど、征人は完全にノーネクタイのクールビズ仕様で。
「うん。朝からシュート百本打ってきた」
言って、腕を上げてエアでシュートを決めて見せる。
中学からやっているらしいバスケをそのまま続けているから、征人は身長も百八十を超えているし腕なんて結構な太さなのを晒していて。
同じクラスの女子の目がハートマークになっているのを感じて、成親としても友人として鼻が高い。
「なる、部活はやんねーの?」
「やんない。も、野球は諦めた」
「諦めるの、早くね?」
「いいよもう。小学校からずっとやってたし。でも俺、向いてないから」
どんだけ走り込んでも、速さは出せてもパワーがないから結局押し負ける。
球速を上げようとしたら利き腕の筋を痛めてしまって、結局のところ基礎的な筋肉が全然付かないと無理ってことで。
筋トレしても、骨を痛めるだけで。
高校野球と言えばもう、目指す場所が高すぎるから成親にはしんど過ぎるので、入学してもそちらには全く顔を出さず、中学時代の先輩には申し訳ないけれど、帰宅部に確定したのだ。
「ま、無理してやるもんじゃねーしな。そのうち何かやりたいこと見つかったら、そん時に頑張ればいんじゃね?」
「ん」
征人といて居心地いいな、と思う瞬間だ。
楽しいことを一緒に楽しもうとはするけれど、相手が引けばそれ以上押すことはしない。
個人の考え方や生き方を尊重してくれる、そんな優しさが嬉しい。
「なる、昼どーする?」
「俺、前から気になってたんだけど、カフェテリアでめっちゃ美味しいパンケーキ食えるんだって。なんか、どっかの有名店のヤツみたいの。それ、食いたい」
「おいおい、あそこヤロウ二人で行くのって、勇気いるんじゃね?」
校内には学食というものが複数あり、デートで使用するのがカフェテリア、腹をひたすら満たすなら旧食堂、その他平均使用されるのが去年新設された大食堂、となっている。
「大丈夫っぽい。前に三組の松野と中村が二人で行ってみたけど全然平気かったって。ほら、あいつら超スイーツ男子だろ? だからって一緒に行ってくれる女子が掴まんねーって」
女子二人できゃぴきゃぴやってる姿や、スイーツ好きの男連れというのもそこそこいるらしく、それこそガタイのいい体育会系男子も普通にガレットなんて食べている姿があったと、成親の中学時代の友人が話していたのだ。
「んじゃ、行ってみっか?」
「いえーい。ぱんけえきー」
舌っ足らずな可愛い言い回しで喜ぶ成親に、征人は「可愛いヤツめ」なんて思いながら笑顔で返し、担任が教室に入って来たのでそのまま自分の席に帰って行った。
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