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恥ずかしさを誤魔化すように
「じゃ、とにかく今から小一時間くらい散歩して、旅館に戻ったら一回温泉入って、その後で豪華な食事が待ってるから。ほのかはもう、好きなだけ飲めばいいけどトモさんには飲ませんなよ」と櫂斗が話を変えた。
「一人で飲むのかよ、つまんねーな。可愛い女の子侍らせろよー」
「ほのか、おっさん化し過ぎ。キョウさんにバラすよ?」
「逆だろ。あいつのせいでおっさん化が加速してる気がするんだよねー、自分でも」
「自覚あんのかよ」
「女装した櫂斗でも可」
「しねーっつの、ばーか」
「女将さんのお着物で櫂斗が酌なんかしてくれたら、すっげー酒が進みそう」
「ほのかがやれよ。俺は男だっつの」
「ダイジョブ、ダイジョブ。かるーく粉はたいて口紅塗っちまえば櫂斗なら全然バレない」
「おま、まじ人の話聞かねーな」
自分を挟んでいつものようにじゃれはじめた二人を、ぼんやりと眺める。
朋樹としては、この二人のやり取りが可愛くて仕方ないわけだけれど。
出逢った頃のほのかは無表情で無愛想で、自分はきっと嫌われているのだろうと思っていたけれど、櫂斗と丁々発止なやり取りしているのを見ているうちに、恐らく周囲の空気を読み過ぎてどこに焦点を合わせるのか常に計算していたのかもしれないと思う。
だからこうやって、話が噛み合うのを故意にずらして櫂斗と楽しんでいるのだとわかって、ほのかの表情が随分とわかりやすくなった。
「ほのか、可愛いなー」
思わず呟いてしまって、ほのかの冷ややかな視線と櫂斗の不機嫌な睨みが飛んでくる。
「あんた、まだ酔ってんの?」
「その言葉の真意は? 事と次第によってはトモさん、俺の鉄拳飛ぶよ?」
「うわ、もお。二人とも、怖いって。何だよ、櫂斗だっていっつもほのかのこと可愛いつってんじゃん」
慌てて両手で防御の姿勢を取る。
「俺がほのか褒めるのはいいんだよ。下心皆無だから。でもトモさんが言うとなんか、腹立つ」
「芳賀に下心あったら、鉄拳飛ぶのはこっちの方だけどな」
「ないない、そんなの全然ないって。俺だって下心なんて皆無だっつの」
「俺さー、トモさんがほのかに惚れるのが一番怖いんだよなー」
「安心しろ、櫂斗。それが一番怖いのは自分も同じだ」
二人して勝手なことを言ってくるから、
「俺は櫂斗しか見てないし、ほのかが可愛いのは世界の共通認識だ!」
と声高に言うと。
「……恥ずかしいヤツ」
同じく散策していた他の団体の視線を浴びてしまうことになり、ほのかに呆れ返られた。
「じゃ、とにかく今から小一時間くらい散歩して、旅館に戻ったら一回温泉入って、その後で豪華な食事が待ってるから。ほのかはもう、好きなだけ飲めばいいけどトモさんには飲ませんなよ」と櫂斗が話を変えた。
「一人で飲むのかよ、つまんねーな。可愛い女の子侍らせろよー」
「ほのか、おっさん化し過ぎ。キョウさんにバラすよ?」
「逆だろ。あいつのせいでおっさん化が加速してる気がするんだよねー、自分でも」
「自覚あんのかよ」
「女装した櫂斗でも可」
「しねーっつの、ばーか」
「女将さんのお着物で櫂斗が酌なんかしてくれたら、すっげー酒が進みそう」
「ほのかがやれよ。俺は男だっつの」
「ダイジョブ、ダイジョブ。かるーく粉はたいて口紅塗っちまえば櫂斗なら全然バレない」
「おま、まじ人の話聞かねーな」
自分を挟んでいつものようにじゃれはじめた二人を、ぼんやりと眺める。
朋樹としては、この二人のやり取りが可愛くて仕方ないわけだけれど。
出逢った頃のほのかは無表情で無愛想で、自分はきっと嫌われているのだろうと思っていたけれど、櫂斗と丁々発止なやり取りしているのを見ているうちに、恐らく周囲の空気を読み過ぎてどこに焦点を合わせるのか常に計算していたのかもしれないと思う。
だからこうやって、話が噛み合うのを故意にずらして櫂斗と楽しんでいるのだとわかって、ほのかの表情が随分とわかりやすくなった。
「ほのか、可愛いなー」
思わず呟いてしまって、ほのかの冷ややかな視線と櫂斗の不機嫌な睨みが飛んでくる。
「あんた、まだ酔ってんの?」
「その言葉の真意は? 事と次第によってはトモさん、俺の鉄拳飛ぶよ?」
「うわ、もお。二人とも、怖いって。何だよ、櫂斗だっていっつもほのかのこと可愛いつってんじゃん」
慌てて両手で防御の姿勢を取る。
「俺がほのか褒めるのはいいんだよ。下心皆無だから。でもトモさんが言うとなんか、腹立つ」
「芳賀に下心あったら、鉄拳飛ぶのはこっちの方だけどな」
「ないない、そんなの全然ないって。俺だって下心なんて皆無だっつの」
「俺さー、トモさんがほのかに惚れるのが一番怖いんだよなー」
「安心しろ、櫂斗。それが一番怖いのは自分も同じだ」
二人して勝手なことを言ってくるから、
「俺は櫂斗しか見てないし、ほのかが可愛いのは世界の共通認識だ!」
と声高に言うと。
「……恥ずかしいヤツ」
同じく散策していた他の団体の視線を浴びてしまうことになり、ほのかに呆れ返られた。
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