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 簡単に朋樹に惚れたわけじゃない。恋に落ちたのは一瞬の出来事だったかもしれないけれど、でも朋樹に対して想いが大きく膨らんだのはもう、どうしようもなかった。
 可愛いって思ったら、ただただその存在を体全部が追って行くから。
好きな気持ちが暴走して、止められなくなって。
 そうなったらもう、相手が自分と同じ男だ、なんて構っていられなくて。
 なんとかして、自分のモノにしたくて。朋樹の純粋さなんて、好きになればなるほどわかっていたから、そこに付け込んだ。
 振り向いて欲しくて、想いをぶつけて。
 やっとの想いで手に入れたから。
 絶対に手放せない。
 簡単に、この気持ちが消えるわけ、ない。
 誰かを本気で“好き”って思う気持ちは、だからそんなに簡単なものじゃ、ない。

「雫は、イイ女だよ。だからさ、もっと自分のこと大事にしなきゃさ」
 雫の頭を撫でてやる。
 この年下の小生意気な従妹は、きっといつだって自信満々に笑顔を振りまいて、イイ女ぶってる周りの連中にもマウントを取りたくて仕方がないんだろうから。

「えっちしたかしてないかで女の子の価値は決まらないよ。ちゃんとカレシと気持ち繋ぎ合わせて、そういう関係になっても大丈夫ってなったら、自然にできることだから」
 焦るなよ、と櫂斗が言うと。
「櫂斗は? もう、ヤったの?」
 雫がふと、問う。

「……のーこめんと」
「くっそ。腹立つな。絶対私のが先にオンナになってやるって思ってたのに」
「だから、ノーコメントだっつってんだろが」
「いいよ別に。もう、否定はしない。櫂斗が誰と付き合ってよーが知ったこっちゃない。ただ先越されたのがムカつくだけ」
「聞けよ、人の話をよ!」

 二人してくすくす笑い出したから、朔も純也と目を併せて微笑む。

「ごめんね、朔。私、カレシとヨリ、戻してみる。初めてを朔に貰ってもらいたかったけど、ほのかちゃんに殺されるのヤだから、諦めるよ」
 それには朔も曖昧に笑うしかないけれど。

「ジュンさんも、ありがと。なんか、ジュンさんの彼女さんってきっとめっちゃ大事にされてんだろうね。そゆの、すっごい羨ましい」
「それはどうかな? 俺、結構浮気されまくってるからさ」
 言いながら朔を軽く睨んで。

「とりあえず、今日はここ泊まるけど。後でカレシにラインして、明日向こう帰るね」
「そうだね。雫ちゃんが逢いたいって言えばきっと、カレシは喜ぶよ。だからもう、周りの目とか下らない話じゃなくてさ、自分たちの気持ちを大事にしな」
 後で純也にはイロイロと向き合わないといけないな、と思いつつも朔は雫にそう笑いかけて。

「じゃあ、俺たち帰るけど、店には顔出さないで出るから。今日の支払いもあるし、近いうちにまた来るから、女将さんによろしくゆっといて」
「ん、おけ。じゃあ、また」
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