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「勝手、言ってんじゃねっつの。俺の女装よか莉沙の女装のが、穂高だって見たいだろーがよ」
「女装ゆーなよ。これでもあたしはオンナだし、いつもスカート履いてっだろーが」
「俺、莉沙が猫娘やんの、見たいけど?」
櫂斗が真顔で言うと、
「おまえと較べられんの、キツいんだけど?」と鼻で笑う。
「ま、そーゆーかーわいい姿は穂高だけのモノってヤツなんだろーけどな」
さすがに、それには穂高も莉沙も赤くなるから。
「昼も、俺、遠慮しよっか? 二人きりになりたいんじゃねーの?」
「やめろ、櫂斗。ガッコで二人きりは、キツい」
穂高が本気の声で止める。
「マジな話、そーゆーのナシな。あたし、三人でいる方が全然いいから」
「でも俺いたら、ちゅうできなくない?」
櫂斗が可愛く、悪い顔をする。
「ガッコでするか、ばーか」莉沙が反論するけれど。
「ガッコでは、しねーけど、って?」
更に突っ込んで、さすがに穂高に頭をはたかれる。
「いや、まあそーゆーアレはともかく、さ。俺も莉沙も校内でおまえを一人にしときたくねーのよ」
言われて、レイプ未遂事件を思い出す。
「あいつはもう出てこないにしても、櫂斗のこと食っちゃいたいって思う輩ってのは多分、他にもいると思うんだよね、あたしは。なら、カレシの代わりにガッコん中ではあたしたちが護ってやりたいじゃん」
「……じゃあ何で俺の女装求めるんだよ!」
「そりゃ、純粋に可愛い物を愛でたいってヤツだよ、しょーがねーだろ。需要あんだからさ」莉沙がスンっと答えて。
「なんか、すっげー矛盾を感じるのは俺だけ?」
「だから俺は止めたつったじゃん」
莉沙のひん曲がった論理に、反論できる穂高ではない。
とはいえ。
「でも逆に、見た目と中身のギャップをオープンにしてしまえばいんじゃね? 見た目こんな美少女だけど、中身はゴリゴリ男子だぞってゆー」穂高としては逆転の発想、である。
「猫耳つけてキャッチボールでもしよっか?」
「それ、いんじゃね? 工藤くん巻き込んで。あでも、あいつはクラス違うか。何組だっけ?」
櫂斗の提案に莉沙が乗っかる。
「りょーちんは三組。俺とりょーちんでキャッチボールやったらなかなかだぜ? お互い剛速球だから」
櫂斗の野球部仲間、工藤凌太も中学時代はピッチャーだった。だからこそ、お互いにお互いの認識があったわけだけど。
「も、ついでに野球部でデモやったらいいじゃん。したら来年辺りにはキャッチボール部じゃなくてちゃんとした野球部に昇格するかもしんねーし」
他にも文化祭でデモンストレーションして勧誘活動する部もあるから。穂高が言うと。
「昇格しなくていんだっつの。俺もりょーちんも真面目に部員増やす気、ねーもん」
櫂斗は首を振って否定する。
「でも一年入って来たろ? え、今何人いんの?」
「俺とりょーちんと、あとたまーに顔出すのがユウマとコウキ。んで、一年が名前わかんねーけど三人」
指を折って数えて合計七人。
そして。
「ユウマもコウキも勉強メインだから気分転換に来るだけだし、一年はさ、あいつら三人共彼女持ちのリア充ヤロウだから、ほんと、滅多に顔出さねーもん」という現状を説明する。
野球は九人でやるもので、現状七人で何ができるのか、という状況の野球部である。
しかも基本的な活動は五時までまったりキャッチボールとかトスバッティングなんてのをやってるだけ。
誰が来ようとも、それ以上のメニューなんてない。
だって指導者もいなけりゃ、イベントもない。
走り込みやら筋トレなんてめんどくさいこと、誰がやるんだ、って感じで。
櫂斗はなんとなく“腹筋はトモさんの為”という下心で軽く筋トレはやっているけれど、それは自宅でやっているだけ。
この、見事なまでの“キャッチボール部”だから、勧誘活動なんてする気も起きない。
「たのしそーだよな、まじで。俺も混じろっかな」
「走る前にちょろっと投げてくの、全然アリだよ。来るものは拒まないから。基本、キャッチボールなら誰でもできるし」
「でも硬球だろ? 俺、さすがに触ったことない」
中学時代にちょっとだけ体育の授業で触ったボールは当然軟式のボールだったから。
「別に、硬いだけじゃん。俺も中学までは軟球しか触ってねーし。一緒一緒」
「じゃあ、あたしもやる」
「……いや、莉沙にはぶつけたら怖えーわ、さすがに」
あんな半分石みたいな球、素人女子に向かって投げる勇気はない。
「ダイジョブだって。あたしほら、運動神経いいから」
「つか、莉沙には時間ねーだろがよ。おまえ、女バレの部長だろが。呑気にちっちぇーボール投げてる暇なんかねーだろ」
「仲間外れにすんなよなー」
「そゆ問題じゃねっつの」
結局、三人でいる。
莉沙と穂高がちゃんと“彼氏彼女”になったという報告は受けた。でも、だからと言って今までの関係が変わることもなくて、当たり前に三人で過ごす。
もちろん、二人きりで会ったりイチャイチャしてることもあるのだろうけれど、それは櫂斗には見せない。
話したいこと、話したくないこと。見せたいトコと見せたくないトコ。
そんなのあって当然だから。
だから、学校では三人でいる。
「女装ゆーなよ。これでもあたしはオンナだし、いつもスカート履いてっだろーが」
「俺、莉沙が猫娘やんの、見たいけど?」
櫂斗が真顔で言うと、
「おまえと較べられんの、キツいんだけど?」と鼻で笑う。
「ま、そーゆーかーわいい姿は穂高だけのモノってヤツなんだろーけどな」
さすがに、それには穂高も莉沙も赤くなるから。
「昼も、俺、遠慮しよっか? 二人きりになりたいんじゃねーの?」
「やめろ、櫂斗。ガッコで二人きりは、キツい」
穂高が本気の声で止める。
「マジな話、そーゆーのナシな。あたし、三人でいる方が全然いいから」
「でも俺いたら、ちゅうできなくない?」
櫂斗が可愛く、悪い顔をする。
「ガッコでするか、ばーか」莉沙が反論するけれど。
「ガッコでは、しねーけど、って?」
更に突っ込んで、さすがに穂高に頭をはたかれる。
「いや、まあそーゆーアレはともかく、さ。俺も莉沙も校内でおまえを一人にしときたくねーのよ」
言われて、レイプ未遂事件を思い出す。
「あいつはもう出てこないにしても、櫂斗のこと食っちゃいたいって思う輩ってのは多分、他にもいると思うんだよね、あたしは。なら、カレシの代わりにガッコん中ではあたしたちが護ってやりたいじゃん」
「……じゃあ何で俺の女装求めるんだよ!」
「そりゃ、純粋に可愛い物を愛でたいってヤツだよ、しょーがねーだろ。需要あんだからさ」莉沙がスンっと答えて。
「なんか、すっげー矛盾を感じるのは俺だけ?」
「だから俺は止めたつったじゃん」
莉沙のひん曲がった論理に、反論できる穂高ではない。
とはいえ。
「でも逆に、見た目と中身のギャップをオープンにしてしまえばいんじゃね? 見た目こんな美少女だけど、中身はゴリゴリ男子だぞってゆー」穂高としては逆転の発想、である。
「猫耳つけてキャッチボールでもしよっか?」
「それ、いんじゃね? 工藤くん巻き込んで。あでも、あいつはクラス違うか。何組だっけ?」
櫂斗の提案に莉沙が乗っかる。
「りょーちんは三組。俺とりょーちんでキャッチボールやったらなかなかだぜ? お互い剛速球だから」
櫂斗の野球部仲間、工藤凌太も中学時代はピッチャーだった。だからこそ、お互いにお互いの認識があったわけだけど。
「も、ついでに野球部でデモやったらいいじゃん。したら来年辺りにはキャッチボール部じゃなくてちゃんとした野球部に昇格するかもしんねーし」
他にも文化祭でデモンストレーションして勧誘活動する部もあるから。穂高が言うと。
「昇格しなくていんだっつの。俺もりょーちんも真面目に部員増やす気、ねーもん」
櫂斗は首を振って否定する。
「でも一年入って来たろ? え、今何人いんの?」
「俺とりょーちんと、あとたまーに顔出すのがユウマとコウキ。んで、一年が名前わかんねーけど三人」
指を折って数えて合計七人。
そして。
「ユウマもコウキも勉強メインだから気分転換に来るだけだし、一年はさ、あいつら三人共彼女持ちのリア充ヤロウだから、ほんと、滅多に顔出さねーもん」という現状を説明する。
野球は九人でやるもので、現状七人で何ができるのか、という状況の野球部である。
しかも基本的な活動は五時までまったりキャッチボールとかトスバッティングなんてのをやってるだけ。
誰が来ようとも、それ以上のメニューなんてない。
だって指導者もいなけりゃ、イベントもない。
走り込みやら筋トレなんてめんどくさいこと、誰がやるんだ、って感じで。
櫂斗はなんとなく“腹筋はトモさんの為”という下心で軽く筋トレはやっているけれど、それは自宅でやっているだけ。
この、見事なまでの“キャッチボール部”だから、勧誘活動なんてする気も起きない。
「たのしそーだよな、まじで。俺も混じろっかな」
「走る前にちょろっと投げてくの、全然アリだよ。来るものは拒まないから。基本、キャッチボールなら誰でもできるし」
「でも硬球だろ? 俺、さすがに触ったことない」
中学時代にちょっとだけ体育の授業で触ったボールは当然軟式のボールだったから。
「別に、硬いだけじゃん。俺も中学までは軟球しか触ってねーし。一緒一緒」
「じゃあ、あたしもやる」
「……いや、莉沙にはぶつけたら怖えーわ、さすがに」
あんな半分石みたいな球、素人女子に向かって投げる勇気はない。
「ダイジョブだって。あたしほら、運動神経いいから」
「つか、莉沙には時間ねーだろがよ。おまえ、女バレの部長だろが。呑気にちっちぇーボール投げてる暇なんかねーだろ」
「仲間外れにすんなよなー」
「そゆ問題じゃねっつの」
結局、三人でいる。
莉沙と穂高がちゃんと“彼氏彼女”になったという報告は受けた。でも、だからと言って今までの関係が変わることもなくて、当たり前に三人で過ごす。
もちろん、二人きりで会ったりイチャイチャしてることもあるのだろうけれど、それは櫂斗には見せない。
話したいこと、話したくないこと。見せたいトコと見せたくないトコ。
そんなのあって当然だから。
だから、学校では三人でいる。
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