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「イトコ、ねえ。櫂斗の双子の兄妹かと思った」
朔が言うと、ほのかも「自分も」と頷く。
「ほんと櫂ちゃんそっくりだねえ。でも、こうしてみると、女の子にそっくりってくらい櫂ちゃんって、かーわいいんだねえ」
杏輔がふにゃふにゃと笑いながら言う。
「キョウさん」朔が、その発言をほのかの前でするのはマズくないかと肘で突っつくと。
「いや、まじ自分もそう思ってるから。さっくんにしてみりゃ、櫂斗のがいんでしょーけどね」
同じ顔の男女なら、朔は男の櫂斗を取るだろうとほのかはきっぱり決めつける。
この二人に対して、ほのかは殆ど気を遣うことはない。
「……ほのかちゃん、俺別に櫂斗のことは好きじゃないよ?」
「でも好みのタイプなのは、隠せてないから。今ジュンさんいないから本音言っていいよ」
「朔、ほのかと女将さんに対して、そーゆー抵抗は無駄だから」
杏輔が苦笑する。
この二人が何もかも見透かしてしまうことは、痛いくらいにわかっている。
「までも、皿洗いくらいしかさせないけどね。高校生の女の子、がっつり酒の提供なんてさせらんないでしょ」
「櫂ちゃんにはさせるけど?」
「あいつはもう、完全に従業員扱いだから」
暗に朋樹より確実に使える人材だということを含ませている辺り、ほのからしい。
「それにさ、一応目の保養にはなるっしょ? おっぱいデカい可愛い櫂斗なんて、美味しいんじゃない?」
杏輔にニヤリと笑ってそう言うと、ほのかは来店客の接客へと戻って行った。
「……まじで、あれ、カノジョなんスか?」
「う……俺は、そう信じてる」
☆☆☆
「はい、コレ。雫、丁寧に洗えよ」
櫂斗が皿をシンクに下げ、ゴム手袋をしてもたもたと洗い物をしている雫に仕事を追加する。
「……櫂斗、いつもこんなことしてんの?」
家でも家事手伝いなんて殆どしたことのない雫が、櫂斗を睨むように見た。
「そ、いつもこんなことしてんの。えらいでしょ、俺」
「バイトなんだから、えらくなんかないし」
「俺バイトじゃねーもん。ただのお手伝いだもん」
「バイト代貰ってないの?」
「小遣いだけ。かーちゃん、小遣いしかくれない」
「人聞き悪いこと言ってんじゃないわよ。仕事出てる分はちゃんと上乗せしてるでしょ」
雫にグチっているのを夢乃が横から突っ込む。
「ちょっとだけじゃん。あんなの腹の足しにもなんねーし」
「お金では買えないモノ、与えてあげてんだから文句言わない」
夢乃の含みのある発言に、でも雫は何も気には留めなかったようで。
櫂斗はフンと鼻を鳴らして、再びホールへと戻って行った。
「いいねえ。なんか、可愛い兄妹のやり取り、見てるだけで酒が進む」
杏輔が夢乃に言うと、
「雫ちゃんはね、妹が大事に大事に育ててる愛娘ちゃんなの。可愛いでしょ?」
と嬉しそうにポテサラを提供する。
「櫂斗と同い年?」朔が訊いた。
「一個下。高校一年生」と雫が答える。
「まだバイト、したことない?」
現在カウンターには杏輔と朔しかいないから、朔が雫を話相手にする。
実際のトコ、見た目は十分好みのタイプなわけで。……いや、食指は動かないけど。
「ん。こーゆーお店も、初めて来た」
「あー。そいえば雫ちゃんが前に“おがた”来たのって、小学校くらいだったっけ? しかもお休みの日だったから、ちゃんと営業しているトコは、初めて見るわよね」
「なんとなく、ママと一緒に来たの覚えてる。駅前だから、迷うこともないし」
朋樹よりは使えるらしく、雫はお皿を割ることもなくとりあえずシンクを空にした。
ちなみに本日、朋樹は都合があって出勤していない。
「イトコ、ねえ。櫂斗の双子の兄妹かと思った」
朔が言うと、ほのかも「自分も」と頷く。
「ほんと櫂ちゃんそっくりだねえ。でも、こうしてみると、女の子にそっくりってくらい櫂ちゃんって、かーわいいんだねえ」
杏輔がふにゃふにゃと笑いながら言う。
「キョウさん」朔が、その発言をほのかの前でするのはマズくないかと肘で突っつくと。
「いや、まじ自分もそう思ってるから。さっくんにしてみりゃ、櫂斗のがいんでしょーけどね」
同じ顔の男女なら、朔は男の櫂斗を取るだろうとほのかはきっぱり決めつける。
この二人に対して、ほのかは殆ど気を遣うことはない。
「……ほのかちゃん、俺別に櫂斗のことは好きじゃないよ?」
「でも好みのタイプなのは、隠せてないから。今ジュンさんいないから本音言っていいよ」
「朔、ほのかと女将さんに対して、そーゆー抵抗は無駄だから」
杏輔が苦笑する。
この二人が何もかも見透かしてしまうことは、痛いくらいにわかっている。
「までも、皿洗いくらいしかさせないけどね。高校生の女の子、がっつり酒の提供なんてさせらんないでしょ」
「櫂ちゃんにはさせるけど?」
「あいつはもう、完全に従業員扱いだから」
暗に朋樹より確実に使える人材だということを含ませている辺り、ほのからしい。
「それにさ、一応目の保養にはなるっしょ? おっぱいデカい可愛い櫂斗なんて、美味しいんじゃない?」
杏輔にニヤリと笑ってそう言うと、ほのかは来店客の接客へと戻って行った。
「……まじで、あれ、カノジョなんスか?」
「う……俺は、そう信じてる」
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「はい、コレ。雫、丁寧に洗えよ」
櫂斗が皿をシンクに下げ、ゴム手袋をしてもたもたと洗い物をしている雫に仕事を追加する。
「……櫂斗、いつもこんなことしてんの?」
家でも家事手伝いなんて殆どしたことのない雫が、櫂斗を睨むように見た。
「そ、いつもこんなことしてんの。えらいでしょ、俺」
「バイトなんだから、えらくなんかないし」
「俺バイトじゃねーもん。ただのお手伝いだもん」
「バイト代貰ってないの?」
「小遣いだけ。かーちゃん、小遣いしかくれない」
「人聞き悪いこと言ってんじゃないわよ。仕事出てる分はちゃんと上乗せしてるでしょ」
雫にグチっているのを夢乃が横から突っ込む。
「ちょっとだけじゃん。あんなの腹の足しにもなんねーし」
「お金では買えないモノ、与えてあげてんだから文句言わない」
夢乃の含みのある発言に、でも雫は何も気には留めなかったようで。
櫂斗はフンと鼻を鳴らして、再びホールへと戻って行った。
「いいねえ。なんか、可愛い兄妹のやり取り、見てるだけで酒が進む」
杏輔が夢乃に言うと、
「雫ちゃんはね、妹が大事に大事に育ててる愛娘ちゃんなの。可愛いでしょ?」
と嬉しそうにポテサラを提供する。
「櫂斗と同い年?」朔が訊いた。
「一個下。高校一年生」と雫が答える。
「まだバイト、したことない?」
現在カウンターには杏輔と朔しかいないから、朔が雫を話相手にする。
実際のトコ、見た目は十分好みのタイプなわけで。……いや、食指は動かないけど。
「ん。こーゆーお店も、初めて来た」
「あー。そいえば雫ちゃんが前に“おがた”来たのって、小学校くらいだったっけ? しかもお休みの日だったから、ちゃんと営業しているトコは、初めて見るわよね」
「なんとなく、ママと一緒に来たの覚えてる。駅前だから、迷うこともないし」
朋樹よりは使えるらしく、雫はお皿を割ることもなくとりあえずシンクを空にした。
ちなみに本日、朋樹は都合があって出勤していない。
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