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「ダイジョブだよ。俺、も、絶対誰にも触らせないし。もっと筋トレして体でっかくして、誰にも襲われないくらいガタイよくするから」
「……まあ、そんな体型になった櫂斗も、愛し続ける自信はあるけど。でも、櫂斗は可愛いままがいい」
「見てろよ。絶対筋肉モリモリマッチョマンになってやっから」
「やめてえ」

 朋樹が半分悲鳴のような声を出すけど。
 できるものなら本当に筋肉付けて体を大きくしたいけれど、多分それは無理な話で。
 野球を諦めた時から、自分の体には見切りをつけている。
 細くて華奢で。一応腹筋だけはなんとなくついているけれど、腕も脚も腰も、もうどうしようもなくて。

 でも、絶対に自分の身は自分で護る。
 それだけは決める。
 だって自分だけのモノじゃないから。
 大好きな朋樹が、大好きだと言ってくれる自分だから。
 油断しちゃ、ダメだと思う。
 今日みたいなこと、そうそうあるわけないだろうけれど。
 穂高がいなかったら、どうなっていたかなんて怖すぎる。

「できる限り、俺が護るからね、櫂斗」
「そんなことゆってるトモさんの方が、俺は心配だから。トモさんのことは俺が護るね」
 二人してそんなことを言って、くすくす笑う。

「今度、櫂斗の友達にも会えたらいいな」
「え?」
「だって。俺の見てないトコで、櫂斗のこと護って貰いたい」
「あー……ね」

 ま、でも穂高が護るのは俺じゃないし。
 きっと今頃莉沙と二人、らぶらぶになってるハズだから。
 えっちはしてるかどうか微妙だけど、気持ちを通わせることくらい、ちゃんとしてるハズ。

「じゃあ、俺も瀬川さんにゆっとこ。トモさんがふわふわしてないか、ちゃんと見張っててねって」
「ん。瀬川、知ってるから」
「え?」
 今度は櫂斗が目を丸くする。
「俺と櫂斗が付き合ってるって、瀬川にバレてた。あいつ、店にも時々来てるし」
「……そっか」

 “おがた”にいる二人を見れば、確かにそれはそうだろう。
 櫂斗の朋樹を見る目は完全に恋してるし、朋樹が櫂斗を可愛いと思っているのなんて、そんなのもう、歴然としているから。

「瀬川、応援してくれた」
「相手、俺でいいって?」
「誉めてたよ。しっかりしてるって」
「朔に高校生じゃねーって言われた。でも、いいんだ。俺、早く大人になりたいし」
 悪口のつもりで言ったんだろうけど、櫂斗にとってはそんなの全然逆だから。

「知ってた?」
「え?」
「オトナになりたいって言ってるヤツは子供なんだよ?」
 珍しく、朋樹が櫂斗を言いくるめる。
 くふくふ笑いなんていう、櫂斗の専売特許を朋樹がしてみせるから。

「くっそ。ちょっと、悔しい」
「櫂斗、まだまだおこちゃまだねえ」
「トモさんに言われたくないし」

 むー、とふくれっ面をしている可愛い櫂斗の頭を、ぐりぐりと撫でながら。
「大人になんか、ならなくていいよ。櫂斗はもっと子供っぽく甘えて、ワガママ言えばいいんだ」

 居酒屋なんて言う大人の世界で育った櫂斗だから、きっと本来の子供っぽさなんてどこかに捨てて来てて。
 可愛く笑うのも、甘えたフリするのも、全部きっとそれは回りの大人が求めている姿で。
 聡いせいでそれを演じることこそが、自分の求められている“役”だとわかっているのだろう。
 なら、そんなの自分の前で演じなくていい。
 本気の部分で甘えてワガママ言って、欲しいものを欲しいと言ってくれればいい。
 そしてそれに、できる限り応えたいと朋樹は思う。

 そりゃ、自分がポンコツなのはわかっているし、店で仕事している分にはめちゃくちゃ櫂斗を頼っているけれど。でも、その分二人きりになった時は、櫂斗をそのままの櫂斗として愛したい。
 俺だけのトモさんでいて、というならば、絶対に櫂斗だけのモノでいるし。
 俺だけ見てて、なんて可愛いワガママ、もう永遠にきいてやれるから。

「でもトモさん、俺いないと“おがた”の週末は回んないよ?」
「……ごめん、そこだけは甘えさせて」
「ま、代わりにトモさんちで甘えまくるけどね」
「いくらでも。櫂斗はうちで赤ちゃん返りすればいい」
「トモさんが抱っこしてくれるから?」
 言われるままに、ぎゅ、と抱きしめる。
 小さい子供を抱くように、優しく包み込んで。

「どんな櫂斗でもいんだよ。赤ちゃんでも、高校生でも。俺の腕ん中にいれば、ずっと護ってやるから」
「ん」
 やわやわと、櫂斗の体を味わう。
 細いけど、ちゃんと筋肉はついていて、野球やっていたせいなのか、お尻なんてぷりぷりだし。
 どこを触っても“ん”なんてちょっとした反応を返してくれるから、それも嬉しい。
 ずっと触っていたい、ずっと抱いていたい。

「トモさん」
「ん?」
「もっかい、シよ」
 またこの、エロい目が堪らないわけで。

 いくらでもシてやれる、と思うから。いや、むしろこっちがシたいんだけど。
 つるつるの頬に手を添えて、唇を重ねる。
 キスを合図に、再びその場の空気が熱を持つ。

 結局何度も何度も交わって、その夜櫂斗の意識がなくなるまでずっと、朋樹はその愛しい体を抱いていた。
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