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 朔の部屋で、声が枯れるまで喘がされ、もう何も出ないという程に精を出し尽くされた純也は、ベッドでぐったりと朔の胸に寄りかかっていた。
「朔……あれ、何だったの?」
 そんな純也の肩を抱きながら、タバコを一服。
 
 壊してしまうかも、と恐る恐る抱いていた頃は、直後のタバコも控えていたけれど。
 純也自身が「俺のことは抱き潰していいし、朔がやりたいようにやっていい」と、だから自分だけのモノでいてと甘えるから。
 朔も甘える。
 次の日が休みだとわかっていれば思う存分味わい尽くすし、もう他で紛らすことなんてしなくていいように、純也に総てを見せる。

「あれって?」
 まだ息が整っていない純也の掠れた声に、目を見てその問いの意味を探る。
「キョウさんと朔。なんか、二人だけでわかってるような感じだった。俺、さすがに二人の仲は疑るつもりないけど、でも俺だけわかんないの、ちょっとだけ悔しかったし」
 拗ねている様子で純也が乳首を摘まむから、
「くすぐったいんだけど?」とその手を握った。
「何? まだ足りない?」
 さすがにもう体がもたないから、慌てて首を振って。

「あ……でも、朔が足りないなら、頑張る」手を朔のモノへと伸ばしてくる。
「いい、いい。ごめんって。俺だってもう、十分だよ」慌ててそれを止めて。
 優しく、触れるだけのキスをした。
「多分。キョウさん、ほのかちゃんと付き合ってる」
 ふ、と笑いながら言った。
「え?」
「あの人、ほのかちゃんのこと見る目が全然今までと違ってたし。完全に俺の、って目が言ってた。彼女の方も、顔つきが前よりずっと柔らかくなってた」

 朔の言葉に、純也は完全に眉を顰めた。
「なんで?」
「そりゃ知らん。ま、キョウさんは俺らより全然前から“おがた”通ってるし、俺らが知らないトコで二人がデキ上がってても、そりゃ不思議はないでしょ?」
「だって。櫂斗、離さないってすっごい真剣に言ってたのに」

 今度は純也のそのセリフに朔が首を傾げる。
「どゆこと?」
「ほのかちゃんのこと。櫂斗がさ、絶対に俺のモノだから、この手は離さないんだって言ったんだよ」
「はあ? 櫂斗がほのかちゃんとって? ははは、ないない。そりゃ誤解だ」
「誤解じゃないよ、本人がそう言ったんだから」
 純也がムキになって言うから。

「櫂斗はね、朋樹と付き合ってんの。だから、ほのかちゃんと櫂斗が、ってのは、ないよ」
 朔がはっきりと言い切った。
 勿論、自分の浮気心は隠しきるけれど。

「朋樹が店でどんだけポンコツな状態でも、櫂斗だけは笑ってフォローするし、どんだけ朋樹が誰かに言い寄られようとも、櫂斗が絶対に鉄壁のディフェンスでシャットアウトするんだってさ」
 どれだけ口説いても、というか口説こうとしても、櫂斗に阻まれて何もできなかったから。
 と。ふと思い出す。
「あれ? ラブラブな二人に会ったって、純くん言ってなかったっけ?」
「だから、ラブラブな櫂斗とほのかちゃんに会ったんだってば」

 そう言えば純也は、朋樹ではなく櫂斗を口説いていると誤解していたから。
 櫂斗が純也からの矛先を、朋樹に向けることすらさせなかったのかと思うと、もう、完敗でしかなくて。
「あー……ま、いいや。も、どーでもいいじゃん。ヨソのカップルんことはほっとこ。俺はもうおまえしか見ないし、おまえしか抱かないって決めたから。純くんも俺のことだけ、見ててよ」
 これ以上深堀りされて、朋樹への浮気心を探られても困るから。
 朔は、今度は深いキスをする。
 えっちはもうしないけど、気持ちをそっちへと切り替えてなんとか誤魔化さないと。

「……朔……」
「純くん、愛してるよ」
 白々しい、と純也は一瞬だけ思ったけれど。
 でも。
 しょがーないから誤魔化されてやることにする。
 だって。
 自分には朔しか、いないから。
 朔がこうして自分だけを見てくれると言うならば。
 もう、信じるしかない。
 
 朔の甘い言葉に酔わされて、純也はその胸の中に包まれる幸せを噛みしめながら眠りについた。
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