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 本日、櫂斗の高校は体育祭である。
 十月頭の晴天、気温もまずまず。まさに体育祭日和という日であるが、ど平日。
 高校生にもなれば体育祭なんて、当然親なんか殆ど見に来ることもなく。
 休日にする必要もないから、当たり前に金曜日という平日に開催され、明日から体を休めましょう、という生徒の体力に配慮した日程となっている。

 体育会系な人間はやたらめったら張り切って盛り上がっているけれど、櫂斗はどちらかというと“勉強しなくていいのはラッキーだけど必死で汗流すのはもうカンベン”というまったり派。
 学年対抗だから、二年生という一年には何が何でも勝つけど三年には花を持たしてやるか、という中間学年なんて、まったり派の出る幕なんてゼロである。
 
 文科系の部活に所属しているヤツらはこれ見よがしに校舎内でダレてるし、ガチ系運動部はとにかくはしゃいで楽しんでいるし、教師たちも“生徒の意思に任せる”というテイで同様に二つの派閥に分裂しているわけで。

 櫂斗としては、いつも一緒にいる穂高と莉沙がゴリゴリに活躍しているのを、一応グランドの応援席で見守っているが、特に活躍する種目にエントリーするわけでもなく、ゆるゆる野球部連中と一緒に玉入れに参加してお茶を濁す気でいるだけだ。

「っしゃー、一位ー、いえーい」
 学年対抗障害物リレーの競技を終えた穂高が汗を拭きながら櫂斗の元へと帰って来た。
「あと何個走るん?」
「えっと、走るヤツはスウェーデンリレーと部活対抗リレーかな。あと綱引きと騎馬戦には出る」
「おお。頑張るねえ」
「櫂斗、クラブ対抗は?」
「出るわけねーじゃん。俺野球部だぜ? そんじょそこらの野球部じゃねー、うちの野球部が走るわけないじゃん」
「ドヤって言うセリフじゃねーけどな」
 くふくふ笑いながら、クラス用クーラーボックスからペットボトルのポカリを差し出してやる。

「さんきゅ。あと、俺は出ないけど応援合戦で莉沙が躍るから、それは撮ってやろうと思ってるから」
「何、お高いビデオカメラでも持ってきた?」
 ニヤリと嗤うと、
「ばーか。スマホでいんだよ、スマホで」半分飲み干してキャップを締めたペットボトルでぽこんと殴られた。
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