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「でも、なんか今はすげー幸せそうだし、だから、いいんじゃね?」
 瀬川が、唇の端を上げてニヤリと笑い、お冷を一口。
 唖然とした表情の朋樹なんて、見慣れているから。
 きっと頭の中でパニックを起こしているのだろうと、朋樹にも「飲んどけ」とコップを押し出す。

「いや、大丈夫だよ? それならそれで、全然気にすること、ないと思うし。少なくとも、俺は気にしないし」
「……」
「おーい、トモー?」
「……」

「めんどくさいヤツだな。おまえは自分が思ってるより全然わかりやすいんだよ。で、俺はそんなおまえのこと見てきてるから、おまえが真面目なヤツってことは知ってる。真剣にあのコが好きで一緒にいたいんだったら、それでいいじゃん」

 瀬川は笑う。
 当たり前だけれど、バカにしたり蔑んだり、そんなマイナスな表情なんて一ミリもなくて。

「いろんなヤツいるし。自由でいいと思う。おおっぴらにしたくない気持ちもわかるから別に誰彼構わず言う必要はないけど、俺には別に話してくれていい。俺が彼女のことを相談するのと同じように」

 一緒にいた時、バグってしまった朋樹のことを思い出す。
 今思えばあれは、きっと見てはいけない場面を見てしまって狼狽えていたのだろう。
 ウラを読んだり、行間を読んだり。
 そんな建前の後ろに隠れている真実を捉えることが苦手な朋樹の不器用さはわかっている。
 だから瀬川は朋樹に総てストレートに発言する。
 それは優しさ。
 友人である朋樹が好きだから、無駄に悩むことを極力して欲しくないから。

「大丈夫。多分俺しか気付いてない。由依は徹しか見てないし、徹もだし。ま、だからって俺に何かできるかってゆーと何もできねーんだけどさ。ただ、何かあってグチりたいとか、そーゆー時にはちゃんと俺は聞いてやれるつもりでいるから」

 二人で話せる機会があればそれだけ伝えておきたかっただけだから。
 瀬川はそう言って、学内に戻ろうと促す。
 まだ、状況が把握しきれていない朋樹がいつも以上にぼんやりしているのはわかるけれど、そこは追々わかってくれればいいと思う。
 自分は味方だと、それだけを知っていてくれればそれで、いいのだ。
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