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「まじで、酔わないんだねえ」
五本目の瓶、しかもギネスビールを空けながらも、ほのかは平然とスマホでパズルゲームを続ける。
杏輔が勝負を挑んだのだが、未だ一勝もできていない。
「だから、無駄だ、つってんじゃん。普段あまりゲームなんかしないから負けるかもしんないけど、だからって酔ってる証明にはならないからね」
完全タメ口である。
店が終わって、夜賄いもきっちり頂いてから。
それでももしも待っているなら、とほのかは先日のショットバーに向かった。
当たり前のように「お疲れ様」と杏輔が手を上げたので、隣に座ったのは三十分程前。
「せっかく気持ちよくしたげようと思ったのに」
「んな簡単にヤらせねっつの」
「やだなー。ほのかちゃんってば、えっち。ほろ酔いの気持ち良さを味わわせてあげるってイミだよ」
く、とへらへら笑っている杏輔を睨んだ。
「明日もガッコ?」
「二限目から。木曜日は基本的にまったり。ガッコも二限目と三限目しかないし、バイトも休みだし」
「サークルは?」
「あー。一応茶道部入ってる。けど、うちの茶道部、名前だけで超チャラいから、あんまりまともには顔出してない」
「チャラい茶道部って何?」
あまりにも単語が真逆過ぎて杏輔が笑う。
「まんま。茶道部って名前に釣られて合コンしたがる他校の奴らと遊んでばっかいんの。やってらんねーって思ったから、仲いいヤツと二人でガッコの茶道の先生んち押しかけて時々習ってるだけ」
「ほのかちゃんの淹れたお茶、飲みたい」
「お茶は淹れるんじゃないの、点てるの」
ニヤと嗤った。
オトナな杏輔は、ふ、と鼻で笑っただけで。
「道具持ってるわけじゃないし、ガッコ以外でなんかやんないけどね」
「でも普通のお茶なら? 俺んちでもできるでしょ?」
「煎茶とか淹れるのは、また別の話だよ。マナー講座的な授業でちょっとだけやったけど」
「んじゃ、今からウチ来て淹れてよ」
「ヤだっつの」
「でももう終電出たよ? 家、帰れないんだったらウチ来ればいいじゃん」
スマホを見ると既に一時を回っていた。
この店に来た時点で十二時近かったし、杏輔がいなければ一杯だけ飲んで帰るつもりにしていたほのかだったから、思いの外二人の時間を楽しんでいることに気付いて驚く。
「家には、行かない。ギリギリまでココで時間潰すし、後はそこのネカフェで仮眠採るし」
「なんでそーゆー意地張るかなー」
「別にイジなんか張ってないし」
「なんもしないから、おいでよ。二人でお茶、しよ」
「男のなんもしないを信じて家に上がり込むほど、カマトトぶるつもりはない」
「じゃあ、手、出すから一緒に寝よ」
「……どストレートだな」
相変わらず杏輔はへらへら笑っていて。
本気で口説いているのか、ふざけているのか。
ふにゃふにゃした笑顔が真意を伝えないから、ほのかとしてもまだ、その手を取るかどうか悩んでいるわけで。
「ココ、二時までだからそれまで一緒に飲もう。で、そこから他の開いてるお店に行くか、俺んち行くか、ほのかちゃんが決めたらいいよ」
「小一時間でヤるかどうか決めろっての?」
「ほのかちゃん、もちょっと包もうよ。俺んち行ったって別に襲ったりしないし」
「じゃあ何するわけ? オトナの男女が一つ屋根の下一緒に一晩過ごして双六でもするっての?」
「いいよー、双六しても。スイッチあるから一緒にゲームしてもいいし」
「………キョウさん、どうしたいわけさ?」
「一緒にいたい、って思ってるだけ」
思っていた以上に、目が優しくて。
必死に口説こうとしているようには見えない。
「ほのかちゃんがー、今傷付いてるのは俺、知ってんのね。で、それに付け込んで俺のモノにするってゆーのが俺の目論見なんだけど、そこにたどり着くまでの過程ってのはさ、大事にしたいじゃん?」
「キョウさん、本気と冗談の境目が曖昧過ぎてわかんないんだけど?」
「俺のほのかちゃんへの想いは全部本気だけど?」
しれっと言って微笑む。
「とりあえず、ほのかちゃんが誰かにフラれたってのは、アタリでしょ?」
「ノーコメント」
五本目の瓶、しかもギネスビールを空けながらも、ほのかは平然とスマホでパズルゲームを続ける。
杏輔が勝負を挑んだのだが、未だ一勝もできていない。
「だから、無駄だ、つってんじゃん。普段あまりゲームなんかしないから負けるかもしんないけど、だからって酔ってる証明にはならないからね」
完全タメ口である。
店が終わって、夜賄いもきっちり頂いてから。
それでももしも待っているなら、とほのかは先日のショットバーに向かった。
当たり前のように「お疲れ様」と杏輔が手を上げたので、隣に座ったのは三十分程前。
「せっかく気持ちよくしたげようと思ったのに」
「んな簡単にヤらせねっつの」
「やだなー。ほのかちゃんってば、えっち。ほろ酔いの気持ち良さを味わわせてあげるってイミだよ」
く、とへらへら笑っている杏輔を睨んだ。
「明日もガッコ?」
「二限目から。木曜日は基本的にまったり。ガッコも二限目と三限目しかないし、バイトも休みだし」
「サークルは?」
「あー。一応茶道部入ってる。けど、うちの茶道部、名前だけで超チャラいから、あんまりまともには顔出してない」
「チャラい茶道部って何?」
あまりにも単語が真逆過ぎて杏輔が笑う。
「まんま。茶道部って名前に釣られて合コンしたがる他校の奴らと遊んでばっかいんの。やってらんねーって思ったから、仲いいヤツと二人でガッコの茶道の先生んち押しかけて時々習ってるだけ」
「ほのかちゃんの淹れたお茶、飲みたい」
「お茶は淹れるんじゃないの、点てるの」
ニヤと嗤った。
オトナな杏輔は、ふ、と鼻で笑っただけで。
「道具持ってるわけじゃないし、ガッコ以外でなんかやんないけどね」
「でも普通のお茶なら? 俺んちでもできるでしょ?」
「煎茶とか淹れるのは、また別の話だよ。マナー講座的な授業でちょっとだけやったけど」
「んじゃ、今からウチ来て淹れてよ」
「ヤだっつの」
「でももう終電出たよ? 家、帰れないんだったらウチ来ればいいじゃん」
スマホを見ると既に一時を回っていた。
この店に来た時点で十二時近かったし、杏輔がいなければ一杯だけ飲んで帰るつもりにしていたほのかだったから、思いの外二人の時間を楽しんでいることに気付いて驚く。
「家には、行かない。ギリギリまでココで時間潰すし、後はそこのネカフェで仮眠採るし」
「なんでそーゆー意地張るかなー」
「別にイジなんか張ってないし」
「なんもしないから、おいでよ。二人でお茶、しよ」
「男のなんもしないを信じて家に上がり込むほど、カマトトぶるつもりはない」
「じゃあ、手、出すから一緒に寝よ」
「……どストレートだな」
相変わらず杏輔はへらへら笑っていて。
本気で口説いているのか、ふざけているのか。
ふにゃふにゃした笑顔が真意を伝えないから、ほのかとしてもまだ、その手を取るかどうか悩んでいるわけで。
「ココ、二時までだからそれまで一緒に飲もう。で、そこから他の開いてるお店に行くか、俺んち行くか、ほのかちゃんが決めたらいいよ」
「小一時間でヤるかどうか決めろっての?」
「ほのかちゃん、もちょっと包もうよ。俺んち行ったって別に襲ったりしないし」
「じゃあ何するわけ? オトナの男女が一つ屋根の下一緒に一晩過ごして双六でもするっての?」
「いいよー、双六しても。スイッチあるから一緒にゲームしてもいいし」
「………キョウさん、どうしたいわけさ?」
「一緒にいたい、って思ってるだけ」
思っていた以上に、目が優しくて。
必死に口説こうとしているようには見えない。
「ほのかちゃんがー、今傷付いてるのは俺、知ってんのね。で、それに付け込んで俺のモノにするってゆーのが俺の目論見なんだけど、そこにたどり着くまでの過程ってのはさ、大事にしたいじゃん?」
「キョウさん、本気と冗談の境目が曖昧過ぎてわかんないんだけど?」
「俺のほのかちゃんへの想いは全部本気だけど?」
しれっと言って微笑む。
「とりあえず、ほのかちゃんが誰かにフラれたってのは、アタリでしょ?」
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