225 / 231
<6>
☆☆☆
しおりを挟む
☆☆☆
「キリからの誕プレは、これだよお」
馬場さんの手料理を五人で存分に堪能して、ケーキの前にキリエがまず切り出した。
久々の五人集合だから、それぞれの近況を話すだけでも楽しくて。
涼の家に集合してすぐ、誕生日会前に、男子四人でまずは馬場にホワイトデーとして手渡したのは花束だった。
涼だけならそんなこと考えもしなかったけれど、土岐が「ケーキのお返しもだけど、さすがにいつもいつもお世話になっているから」なんて言い出した時には、三人で脱帽した。
恵那としては半分“涼の母”的な存在なだけに、バレンタインのお返しなんて考えもしなくて。
でもそんな気遣いをしている土岐は、やっぱり目の付け所が自分とは違うんだと感心した。
頭にくるけれど、女子にモテるのはこういうトコなのだろうと思うと、やっぱり敵わない。
「あのねー、こないだ響と一緒に涼ちゃんに似合いそうなの探してたんだよね。ほら、涼ちゃんって何でも持ってるし、お洋服だってちゃんと似合うのわかって着てるし。めっちゃ悩んだんだよお」
「待って待って。僕としてはきーちゃんが響とデートしてた話の方が気になるんだけど?」
「デートくらいするっちゅーねん」
「だって響、いっつも部活忙しそうでしょ? なんか大会があるってゆってなかった?」
「だからその合間で逢ってただけやし。バスケ部にも休みはあんで?」
そりゃそうだろうけど、と涼が呟いてふと土岐を見た。
その瞬間、恵那は察してしまう。
きっと涼が何かしら行動を起こしたのだろう。土岐に何か誘いをかけたけれど、部活を言い訳にして逃げたってことだろうから。
ちょっと悲し気な表情をしたのが何よりの証拠で。
こんのバカ野郎、と土岐を睨む。
「おまえな、土岐。もう、いい加減はっきりしろ」
つい、声に出してしまう。
「何だよ、急に」土岐が眉を顰めた。
「涼。俺からおまえにやる誕生日プレゼントは、土岐だ」
ぐい、と土岐の腕を掴むと涼に向かって押しやる。
「いいか、涼。俺はもうおまえのことは吹っ切れてる。ちゃんと彼女もいるし、今日はこの後そのコとデートもする。だから、もう俺のことは気にしなくていいし、俺はこいつをおまえにプレゼントしてやる」
きっぱり言い切った。
「えな……?」
「土岐。おまえはちゃんと男、見せろ。それが何よりも涼が喜ぶモンなんだから。いい加減、逃げてんじゃねえ」
「何言ってんだよ、恵那。涼はおまえの」
「だから言っただろ。俺には彼女がいるって。涼はもう、俺のモノじゃない」
土岐の言い訳を赦さず、恵那がきっぱりと言い切った。
既に涼は精一杯の行動を起こしているのだ。少しずつ土岐に近付こうと、涼なりに必死で頑張っているのが恵那にもわかった以上、もう黙って見ているわけにはいかない。
土岐には男としてちゃんとはっきり言わせたいと恵那は思った。
もう、遠慮なんてしないでいいと。
二人を向かい合わせようとして土岐を睨みつけた恵那に。
けれども涼が、「誰?」と訝しげな顔で訊いてきた。
「は?」
まさか突っ込まれるとは思っていなかったから、一瞬口ごもる。
「えな、彼女って、誰? いつの間にそんなの、できたの? だって、定演の準備でずっと忙しいってゆってたじゃん?」
実際、定演を理由に涼の傍にいることを極力避けていた恵那だったから、そこを突かれると痛いわけで。
「何それ?」
ちょっとしたやましい気持ちがあったから目を逸らしてしまった瞬間、涼が泣きそうな顔を見せた。
「ねえ、何なの? みんなして寄ってたかって僕のこと、無視して」
くしゃ、とその可愛い顔が哀しみに歪む。
「部活、忙しいのわかるし、それは僕だってそうだけど。でも……今まではそんなくなかったじゃん? 部活もあるけど、合間とか、時間合わせることってできたじゃん」
ちょっと早く部活終わったからえなんち集まろう、なんて。
恵那と付き合っている頃は当たり前にしてたことが。
ここのところいつだって三人から「あー今忙しいんだよねー。また今度」なんて言われて。
いつの間にかみんなが部活を言い訳にしてまるで自分を避けているみたいで。
「僕のこと……部活を理由にして避けてたってわけ? 何それ……僕、そんなに邪魔なの?」
恵那と別れて。
土岐のことが好きだってことはもうちゃんと自覚していて。
でも土岐は自分なんて相手にしてくれるわけがなくて。
当たり前に“部活があるから”と、隙間時間さえもあしらわれた。
響はキリエと、なんてのは仕方がないことだけど、でもこんなにもバラバラになるなんて。
「キリからの誕プレは、これだよお」
馬場さんの手料理を五人で存分に堪能して、ケーキの前にキリエがまず切り出した。
久々の五人集合だから、それぞれの近況を話すだけでも楽しくて。
涼の家に集合してすぐ、誕生日会前に、男子四人でまずは馬場にホワイトデーとして手渡したのは花束だった。
涼だけならそんなこと考えもしなかったけれど、土岐が「ケーキのお返しもだけど、さすがにいつもいつもお世話になっているから」なんて言い出した時には、三人で脱帽した。
恵那としては半分“涼の母”的な存在なだけに、バレンタインのお返しなんて考えもしなくて。
でもそんな気遣いをしている土岐は、やっぱり目の付け所が自分とは違うんだと感心した。
頭にくるけれど、女子にモテるのはこういうトコなのだろうと思うと、やっぱり敵わない。
「あのねー、こないだ響と一緒に涼ちゃんに似合いそうなの探してたんだよね。ほら、涼ちゃんって何でも持ってるし、お洋服だってちゃんと似合うのわかって着てるし。めっちゃ悩んだんだよお」
「待って待って。僕としてはきーちゃんが響とデートしてた話の方が気になるんだけど?」
「デートくらいするっちゅーねん」
「だって響、いっつも部活忙しそうでしょ? なんか大会があるってゆってなかった?」
「だからその合間で逢ってただけやし。バスケ部にも休みはあんで?」
そりゃそうだろうけど、と涼が呟いてふと土岐を見た。
その瞬間、恵那は察してしまう。
きっと涼が何かしら行動を起こしたのだろう。土岐に何か誘いをかけたけれど、部活を言い訳にして逃げたってことだろうから。
ちょっと悲し気な表情をしたのが何よりの証拠で。
こんのバカ野郎、と土岐を睨む。
「おまえな、土岐。もう、いい加減はっきりしろ」
つい、声に出してしまう。
「何だよ、急に」土岐が眉を顰めた。
「涼。俺からおまえにやる誕生日プレゼントは、土岐だ」
ぐい、と土岐の腕を掴むと涼に向かって押しやる。
「いいか、涼。俺はもうおまえのことは吹っ切れてる。ちゃんと彼女もいるし、今日はこの後そのコとデートもする。だから、もう俺のことは気にしなくていいし、俺はこいつをおまえにプレゼントしてやる」
きっぱり言い切った。
「えな……?」
「土岐。おまえはちゃんと男、見せろ。それが何よりも涼が喜ぶモンなんだから。いい加減、逃げてんじゃねえ」
「何言ってんだよ、恵那。涼はおまえの」
「だから言っただろ。俺には彼女がいるって。涼はもう、俺のモノじゃない」
土岐の言い訳を赦さず、恵那がきっぱりと言い切った。
既に涼は精一杯の行動を起こしているのだ。少しずつ土岐に近付こうと、涼なりに必死で頑張っているのが恵那にもわかった以上、もう黙って見ているわけにはいかない。
土岐には男としてちゃんとはっきり言わせたいと恵那は思った。
もう、遠慮なんてしないでいいと。
二人を向かい合わせようとして土岐を睨みつけた恵那に。
けれども涼が、「誰?」と訝しげな顔で訊いてきた。
「は?」
まさか突っ込まれるとは思っていなかったから、一瞬口ごもる。
「えな、彼女って、誰? いつの間にそんなの、できたの? だって、定演の準備でずっと忙しいってゆってたじゃん?」
実際、定演を理由に涼の傍にいることを極力避けていた恵那だったから、そこを突かれると痛いわけで。
「何それ?」
ちょっとしたやましい気持ちがあったから目を逸らしてしまった瞬間、涼が泣きそうな顔を見せた。
「ねえ、何なの? みんなして寄ってたかって僕のこと、無視して」
くしゃ、とその可愛い顔が哀しみに歪む。
「部活、忙しいのわかるし、それは僕だってそうだけど。でも……今まではそんなくなかったじゃん? 部活もあるけど、合間とか、時間合わせることってできたじゃん」
ちょっと早く部活終わったからえなんち集まろう、なんて。
恵那と付き合っている頃は当たり前にしてたことが。
ここのところいつだって三人から「あー今忙しいんだよねー。また今度」なんて言われて。
いつの間にかみんなが部活を言い訳にしてまるで自分を避けているみたいで。
「僕のこと……部活を理由にして避けてたってわけ? 何それ……僕、そんなに邪魔なの?」
恵那と別れて。
土岐のことが好きだってことはもうちゃんと自覚していて。
でも土岐は自分なんて相手にしてくれるわけがなくて。
当たり前に“部活があるから”と、隙間時間さえもあしらわれた。
響はキリエと、なんてのは仕方がないことだけど、でもこんなにもバラバラになるなんて。
0
お気に入りに追加
63
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる