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「わかったって。んな、無理矢理犯そうとするような、野蛮な人間じゃねーよ。ちゃんとあんたがその気になるまで待つし」
「ならねーっつの」
「なるんだってば。ほんっと、ムカつく。なんで素直に甘えねーの?」
「もうおまえ、日本語通じ無さ過ぎ。なんで俺がおまえに甘えなきゃなんねーんだよ」
二人して睨み合って。
一ミリも色気のない会話なのに、それでも悠平にしてみればもう“恵那は可愛い”としか思えないから。
惚れてしまったことを自認してしまった以上、折れるしかないのは悠平の方で。
「まあ、いいよ、もう。俺は俺でなんか、気持ち伝えてスッキリしたし」
ふう、と大きく息を吐いて。頭を掻きむしりながら恵那から離れるとベッドにぼす、と腰かけた。
「あんたが佐竹先輩の隣にいたいってんなら、いればいい」
喧嘩したいわけじゃない。
「でも、辛いの我慢してんだったらあんたにだって逃げる権利あるし、その場所はあるから。俺は佐竹先輩泣かしてでも、あんたがココに逃げて来て笑ってくれる方がいい」
「そんなこと、しねーし。涼、泣かせるわけにはいかない」
「違うだろ。もう」
悠平のキツい視線が確実に恵那の“言い訳”を射抜く。
涼の傍にいる為の“大義名分”。
これ以上言わせないとばかりにぶった切ると。
「あんたのその後ろ向きな発言、らしくないからやめろっつってんの」
さすがに、悠平の言葉の意味が掴めなくて。
恵那は眉を寄せた。
「佐竹先輩は、あんたじゃなくて別に好きな人がいるってことなんだろ? なら、もうあんたじゃなくてその人に佐竹先輩を任せるべきなんじゃねーの?」
至極真っ当なことを言われてしまう。
「誰? 三宅先輩? それとも俺の知らない人? 誰でもいいけど、もうそいつに佐竹先輩、譲れよ」
涼は俺のモノじゃない。
それはもう明確な答えとして出ている。
そして……涼が惚れてる土岐だって、間違いなく涼に惚れていて。
譲りたくない、なんて駄々をこねていたのは自分。
隣にいて欲しいと思っているのは、涼じゃなくて自分の方で。
誰よりも、涼に甘えていたのは自分だから。涼を甘やかす、なんて嘘。自分こそが涼に甘やかされていた。
なのに今、もうその涼はいない。自分を甘やかしてくれる唯一の存在だったけれど、涼にはもう甘えることは赦されないのだ。
「ならねーっつの」
「なるんだってば。ほんっと、ムカつく。なんで素直に甘えねーの?」
「もうおまえ、日本語通じ無さ過ぎ。なんで俺がおまえに甘えなきゃなんねーんだよ」
二人して睨み合って。
一ミリも色気のない会話なのに、それでも悠平にしてみればもう“恵那は可愛い”としか思えないから。
惚れてしまったことを自認してしまった以上、折れるしかないのは悠平の方で。
「まあ、いいよ、もう。俺は俺でなんか、気持ち伝えてスッキリしたし」
ふう、と大きく息を吐いて。頭を掻きむしりながら恵那から離れるとベッドにぼす、と腰かけた。
「あんたが佐竹先輩の隣にいたいってんなら、いればいい」
喧嘩したいわけじゃない。
「でも、辛いの我慢してんだったらあんたにだって逃げる権利あるし、その場所はあるから。俺は佐竹先輩泣かしてでも、あんたがココに逃げて来て笑ってくれる方がいい」
「そんなこと、しねーし。涼、泣かせるわけにはいかない」
「違うだろ。もう」
悠平のキツい視線が確実に恵那の“言い訳”を射抜く。
涼の傍にいる為の“大義名分”。
これ以上言わせないとばかりにぶった切ると。
「あんたのその後ろ向きな発言、らしくないからやめろっつってんの」
さすがに、悠平の言葉の意味が掴めなくて。
恵那は眉を寄せた。
「佐竹先輩は、あんたじゃなくて別に好きな人がいるってことなんだろ? なら、もうあんたじゃなくてその人に佐竹先輩を任せるべきなんじゃねーの?」
至極真っ当なことを言われてしまう。
「誰? 三宅先輩? それとも俺の知らない人? 誰でもいいけど、もうそいつに佐竹先輩、譲れよ」
涼は俺のモノじゃない。
それはもう明確な答えとして出ている。
そして……涼が惚れてる土岐だって、間違いなく涼に惚れていて。
譲りたくない、なんて駄々をこねていたのは自分。
隣にいて欲しいと思っているのは、涼じゃなくて自分の方で。
誰よりも、涼に甘えていたのは自分だから。涼を甘やかす、なんて嘘。自分こそが涼に甘やかされていた。
なのに今、もうその涼はいない。自分を甘やかしてくれる唯一の存在だったけれど、涼にはもう甘えることは赦されないのだ。
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