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実際のトコ、恵那だって悠平のことは今吹部で一番可愛がっていると言っても過言ではない。
こっちのやりたいことをすぐに察して動いてくれるし、時々煮詰まってたらちゃんと面白い意見も出してくれる。
だからこそ育てたいと思ったし、サポートして欲しいと思っていて。
プライベートだって、こっちが触れてほしくないトコには突っ込まないでくれたし、ただ黙って一緒にいてくれて。
それが居心地イイからいつだって一緒にいたし、何より涼のことを考えないでいられたのが癒しになっていたのは確かで。
くっそ、徹先輩のせいだ。
と、内心毒づく。
あの人たちがいらないお節介を焼いて、だからこの真っ正直なピュアピュアボーイがこうして斬り込んで来たわけで。
……こいつも、涼に負けず劣らず“ピュアピュア”なヤツだな、と思わぬ二人の共通点が見つかり、恵那としてはこの状況だというのに“可愛いヤツめ”なんて思ってしまう。
「恵那。俺、でもまじだから」
とりあえず、さっきまでの興奮は深呼吸で落ち着いたらしい悠平が、小さく呟くように言った。
「あんたが、佐竹先輩のこと想って泣いてるの、もう見たくない」
「……泣いてねーし」
「泣いてんだっつの。あれだろ、クリスマスイブにフられたんだろ? あん時からずっと、あんたぼやっとして佐竹先輩の前では空元気でバカみたいに笑って。それ、見てて痛々しいんだよ」
「……ちげーし。フられたの、俺の誕生日だし」
思い出したら、本気で泣けてくる。
なんだって、俺は自分の誕生日に好きなヤツにフられて、夜中に二時間近くも全力疾走しなきゃなんなかったんだろう。
ほんと、最悪な誕生日。
素直にグチると。
「恵那……可哀想」なんて憐憫の目を向けて来た。
「うっせー、ばーか!」
憐れまれると余計に傷付く。から、ムカついてとりあえず睨んでおく。
「だから。俺にしろっつってんだよ。俺なら、あんたのこと泣かせねーし。こっから先のあんたの誕生日、毎年隣にいてやるし」
「おいおい、まじで口説いてんじゃねーよ。そーゆーセリフは女の子相手に言うもんだっつの」
「女の子じゃなくても、恵那は姫だし」
「はあ? まだ言うか!」
「姫だよ。俺にとってはもう、絶対に姫だ」
「だから喧嘩売ってんのかっつの。ほんと、まじムカつくヤロウだな」
人から“姫”扱いされるのが一番ムカつく恵那だから、イラついて拳を構える。
「久々に勝負でもするか? 二度と俺のこと、姫扱いさせねーぞ?」
「……わかった。恵那が嫌がるなら、もう言わない。でも、俺にとってはあんたは大事な存在だ」
頭にきて構えたファイティングポーズだったけれど、悠平が掌でそれを包み込んだ。
「あんたにとって佐竹先輩が絶対的な姫だったんだろうけど、俺にはあんたがそういう存在なんだ。だから……俺はあんたを泣かせたくない」
悠平は、冷静な声で言ってそっと恵那を抱きしめた。
さすがにさっきのように興奮した様子ではなくて、まだ友達の“ハグ”に近いものを感じたから、恵那も振り解くことなくその腕に包まれる。
「今すぐ、俺に惚れろとは言わない。あんたが佐竹先輩のこと好きだって気持ちが大きかった分、それが消えるのに時間かかるのも、わかる」
静かに背中を撫でている悠平の手が暖かくて。
されるがままに、身を預ける。
「だから、頑張ってあの人の横で笑ってんだったら、俺の腕ん中でいくらでも泣いたらいい。そんで、いっぱい泣いて涙枯れたら、そん時には俺のこと、多分好きになってっから」
結構な自信過剰だな、と言いかけて。でも、飲み込む。自分だって、似たようなモンだし。
きっと、こいつは俺に似てる。そして、どこか涼にも似ていて。
こっちのやりたいことをすぐに察して動いてくれるし、時々煮詰まってたらちゃんと面白い意見も出してくれる。
だからこそ育てたいと思ったし、サポートして欲しいと思っていて。
プライベートだって、こっちが触れてほしくないトコには突っ込まないでくれたし、ただ黙って一緒にいてくれて。
それが居心地イイからいつだって一緒にいたし、何より涼のことを考えないでいられたのが癒しになっていたのは確かで。
くっそ、徹先輩のせいだ。
と、内心毒づく。
あの人たちがいらないお節介を焼いて、だからこの真っ正直なピュアピュアボーイがこうして斬り込んで来たわけで。
……こいつも、涼に負けず劣らず“ピュアピュア”なヤツだな、と思わぬ二人の共通点が見つかり、恵那としてはこの状況だというのに“可愛いヤツめ”なんて思ってしまう。
「恵那。俺、でもまじだから」
とりあえず、さっきまでの興奮は深呼吸で落ち着いたらしい悠平が、小さく呟くように言った。
「あんたが、佐竹先輩のこと想って泣いてるの、もう見たくない」
「……泣いてねーし」
「泣いてんだっつの。あれだろ、クリスマスイブにフられたんだろ? あん時からずっと、あんたぼやっとして佐竹先輩の前では空元気でバカみたいに笑って。それ、見てて痛々しいんだよ」
「……ちげーし。フられたの、俺の誕生日だし」
思い出したら、本気で泣けてくる。
なんだって、俺は自分の誕生日に好きなヤツにフられて、夜中に二時間近くも全力疾走しなきゃなんなかったんだろう。
ほんと、最悪な誕生日。
素直にグチると。
「恵那……可哀想」なんて憐憫の目を向けて来た。
「うっせー、ばーか!」
憐れまれると余計に傷付く。から、ムカついてとりあえず睨んでおく。
「だから。俺にしろっつってんだよ。俺なら、あんたのこと泣かせねーし。こっから先のあんたの誕生日、毎年隣にいてやるし」
「おいおい、まじで口説いてんじゃねーよ。そーゆーセリフは女の子相手に言うもんだっつの」
「女の子じゃなくても、恵那は姫だし」
「はあ? まだ言うか!」
「姫だよ。俺にとってはもう、絶対に姫だ」
「だから喧嘩売ってんのかっつの。ほんと、まじムカつくヤロウだな」
人から“姫”扱いされるのが一番ムカつく恵那だから、イラついて拳を構える。
「久々に勝負でもするか? 二度と俺のこと、姫扱いさせねーぞ?」
「……わかった。恵那が嫌がるなら、もう言わない。でも、俺にとってはあんたは大事な存在だ」
頭にきて構えたファイティングポーズだったけれど、悠平が掌でそれを包み込んだ。
「あんたにとって佐竹先輩が絶対的な姫だったんだろうけど、俺にはあんたがそういう存在なんだ。だから……俺はあんたを泣かせたくない」
悠平は、冷静な声で言ってそっと恵那を抱きしめた。
さすがにさっきのように興奮した様子ではなくて、まだ友達の“ハグ”に近いものを感じたから、恵那も振り解くことなくその腕に包まれる。
「今すぐ、俺に惚れろとは言わない。あんたが佐竹先輩のこと好きだって気持ちが大きかった分、それが消えるのに時間かかるのも、わかる」
静かに背中を撫でている悠平の手が暖かくて。
されるがままに、身を預ける。
「だから、頑張ってあの人の横で笑ってんだったら、俺の腕ん中でいくらでも泣いたらいい。そんで、いっぱい泣いて涙枯れたら、そん時には俺のこと、多分好きになってっから」
結構な自信過剰だな、と言いかけて。でも、飲み込む。自分だって、似たようなモンだし。
きっと、こいつは俺に似てる。そして、どこか涼にも似ていて。
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