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「ありがと。あと、涼ちゃんは恵那と付き合ってるって、響からも聞いたよ」
何も知らないキリエに、さらっと爆弾を落とされる。
「へ?」
「友達以上に二人は好き同士だからって。キリ、恵那の誕プレは涼ちゃんを女の子にしてあげたでしょ? あれ、冗談のつもりだったんだけど、実はめっちゃ的に当てちゃってたみたいだねー」
恵那がめちゃくちゃ嬉しそうだったのは、だからだったんだね、なんて。くすくす笑うけど。
「あー……それなんだけど、さ」
「ダイジョブ、だよ? 別にキリ、偏見ないってゆったじゃん。てっきり涼ちゃんは土岐くんに恋してるって思ってたんだけど、あれ間違ってたねー。涼ちゃん、恵那と恋してたんだねー」
あーもう辛い。
キリエが幸せそうにするその発言が、涼の心の傷を抉るから。
今一番辛くて、このタイミングでその話は、本気で勘弁して貰いたいのに。
「だから、違くて」
でもこのまま“幸せな涼ちゃんと恵那”というスタンスで話を進められても、もう傷が広がるばかりだから。
「僕、えなとは別れたの」と、とにかくとっとと白状してしまう。
「え?」
「あー、えっと。別れたっていうのは語弊があるなあ。友達に、戻ったの」
もう二度と顔を合わせないような、きっぱりとした別れ、というのではなくて。
そうではなく、これからもずっと友達として一番傍にいるのは恵那だから。
関係性が変わっただけ。元の、あるべきカタチに戻しただけ、の話で。
でも、それすらも今は辛くて。
友達でいたいのはもう、大前提なのに。傍にいたいのに。
傍にいるけれど、でも、大好きな恵那は今一番遠い場所にいる。
俺のモノ、なんて発言が悲しく響く。
「涼ちゃん?」
泣きそうな声にキリエが心配する。
「大丈夫。元々僕とえなはね、一番大切な友達だったから。僕が間違えて告白しちゃったから、そのせいで今ちょっと混乱してるだけで。多分、大丈夫だから」
「間違えて、って?」
「……うん。えなを好きって言うの、多分友達として大好きって思ってるのに、間違えてそれ以上に好きって言っちゃったんだよ」
恋愛感情だと思っていた。
この、恵那への想いこそが恋愛感情だと思っていたから。
大好きな気持ちが溢れてしまって、告白してしまった。
でも……違ったのだ。
好きなのは間違いないけれど、友達以上に好きだと思ったのは、恵那に甘えたくて。恵那の一番になりたくて。
“好き”のイミが自分こそ、わかってなかった。この“大好き”って気持ちは絶対に間違いじゃないのに、でも恋愛感情ではなかった。
結局、最初に間違えたのは自分で。
その間違えたまんま、器の大きな優しい恵那が全部受け入れ続けてくれたから。
こんなにもすれ違ってしまった。
だって、好きなんだ。恵那のことが大好きだと言う感情は、これはもう間違いようのない事実で。
でも、二人の間に構築された関係性は、完全に間違いだった。
友達の“好き”。それに甘えてただただ依存する“好き”。
依存するだけの感情は、でも恵那の強く大きな心はどこまでもそれを受け入れようとしてくれたから。
涼は甘えるばかりで。
恵那を“好き”という呪文で縛って、甘えられるだけ甘えて、ひたすら依存して。
そんなの、恵那が重荷に耐えられなくなった時点で破綻する関係。
気付かないまま、自分はずっとずっと恵那に甘え続けて。負荷をかけるだけかけて。肥大した醜い依存する感情は、こうして弾けて恵那を傷つけた。
でも。
それでもなお、傷つけられた恵那はまだ自分を護ろうとしてくれて。
「涼ちゃん?」
気付いたら涙が零れていた。
「えなはね。優し過ぎるんだよ」
傍になんてもういられない、と完全に“別れる”方が絶対にラクなハズなのに。
でもそんなことをしたら寂しがるから、と。“友達”の関係を続けてくれる。隣で笑ってくれる。笑わせてくれる。
「あんなに優しくて強い人、他に知らない」
誰だって好きになるよ。
徹先輩たちが恵那を好きなのも、あんなに喧嘩腰だった後輩たちが今恵那をめちゃくちゃ慕っているのも。
恵那が誰よりも“姫”なんだと思う。
それは悪いイミじゃなくて、本当の“姫”。周りの人間を鼓舞して、支えて、みんなを笑顔にできる“お姫様”。
何も知らないキリエに、さらっと爆弾を落とされる。
「へ?」
「友達以上に二人は好き同士だからって。キリ、恵那の誕プレは涼ちゃんを女の子にしてあげたでしょ? あれ、冗談のつもりだったんだけど、実はめっちゃ的に当てちゃってたみたいだねー」
恵那がめちゃくちゃ嬉しそうだったのは、だからだったんだね、なんて。くすくす笑うけど。
「あー……それなんだけど、さ」
「ダイジョブ、だよ? 別にキリ、偏見ないってゆったじゃん。てっきり涼ちゃんは土岐くんに恋してるって思ってたんだけど、あれ間違ってたねー。涼ちゃん、恵那と恋してたんだねー」
あーもう辛い。
キリエが幸せそうにするその発言が、涼の心の傷を抉るから。
今一番辛くて、このタイミングでその話は、本気で勘弁して貰いたいのに。
「だから、違くて」
でもこのまま“幸せな涼ちゃんと恵那”というスタンスで話を進められても、もう傷が広がるばかりだから。
「僕、えなとは別れたの」と、とにかくとっとと白状してしまう。
「え?」
「あー、えっと。別れたっていうのは語弊があるなあ。友達に、戻ったの」
もう二度と顔を合わせないような、きっぱりとした別れ、というのではなくて。
そうではなく、これからもずっと友達として一番傍にいるのは恵那だから。
関係性が変わっただけ。元の、あるべきカタチに戻しただけ、の話で。
でも、それすらも今は辛くて。
友達でいたいのはもう、大前提なのに。傍にいたいのに。
傍にいるけれど、でも、大好きな恵那は今一番遠い場所にいる。
俺のモノ、なんて発言が悲しく響く。
「涼ちゃん?」
泣きそうな声にキリエが心配する。
「大丈夫。元々僕とえなはね、一番大切な友達だったから。僕が間違えて告白しちゃったから、そのせいで今ちょっと混乱してるだけで。多分、大丈夫だから」
「間違えて、って?」
「……うん。えなを好きって言うの、多分友達として大好きって思ってるのに、間違えてそれ以上に好きって言っちゃったんだよ」
恋愛感情だと思っていた。
この、恵那への想いこそが恋愛感情だと思っていたから。
大好きな気持ちが溢れてしまって、告白してしまった。
でも……違ったのだ。
好きなのは間違いないけれど、友達以上に好きだと思ったのは、恵那に甘えたくて。恵那の一番になりたくて。
“好き”のイミが自分こそ、わかってなかった。この“大好き”って気持ちは絶対に間違いじゃないのに、でも恋愛感情ではなかった。
結局、最初に間違えたのは自分で。
その間違えたまんま、器の大きな優しい恵那が全部受け入れ続けてくれたから。
こんなにもすれ違ってしまった。
だって、好きなんだ。恵那のことが大好きだと言う感情は、これはもう間違いようのない事実で。
でも、二人の間に構築された関係性は、完全に間違いだった。
友達の“好き”。それに甘えてただただ依存する“好き”。
依存するだけの感情は、でも恵那の強く大きな心はどこまでもそれを受け入れようとしてくれたから。
涼は甘えるばかりで。
恵那を“好き”という呪文で縛って、甘えられるだけ甘えて、ひたすら依存して。
そんなの、恵那が重荷に耐えられなくなった時点で破綻する関係。
気付かないまま、自分はずっとずっと恵那に甘え続けて。負荷をかけるだけかけて。肥大した醜い依存する感情は、こうして弾けて恵那を傷つけた。
でも。
それでもなお、傷つけられた恵那はまだ自分を護ろうとしてくれて。
「涼ちゃん?」
気付いたら涙が零れていた。
「えなはね。優し過ぎるんだよ」
傍になんてもういられない、と完全に“別れる”方が絶対にラクなハズなのに。
でもそんなことをしたら寂しがるから、と。“友達”の関係を続けてくれる。隣で笑ってくれる。笑わせてくれる。
「あんなに優しくて強い人、他に知らない」
誰だって好きになるよ。
徹先輩たちが恵那を好きなのも、あんなに喧嘩腰だった後輩たちが今恵那をめちゃくちゃ慕っているのも。
恵那が誰よりも“姫”なんだと思う。
それは悪いイミじゃなくて、本当の“姫”。周りの人間を鼓舞して、支えて、みんなを笑顔にできる“お姫様”。
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