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「佐竹ならM女の制服も似合いそうだな。おまえ、キリエちゃんに相談してみろや」
奏が言い出して。
「あそれ、ナイス。んじゃ、ちょいキリにも相談してみるわ。いいだろ、涼?」
「別に、僕は何でもいいってゆーか、どうでもいいってゆーか」
涼にしてみれば女装させられるのが前提なわけだから、もはやどんな制服だろうと知ったこっちゃないわけで。
とにもかくにもこの制服に関しては一切外部に晒すわけにはいかない、とトルソはそのまま再び布を被せられ、準備室の奥へと戻されたが、
「先輩たち、久々に練習参加してけよ」
せっかく音楽室に来たんだからと恵那が誘ってみた。
「そうしたいのはヤマヤマだけどな。俺ら結構これでも忙しいんだよ。夕課外は出席自由だから途中からでも入れるしな。無料でやってくれる課外授業だから、出とかないと損だろ」
それまでの徹とは真逆な真面目発言に、恵那が鼻白む。
「俺はともかく、徹も辰巳も結構ギリだからさ、成績。こいつら今、塾なんかにも真面目に行ってんだぜ?」
鼻で笑って奏が言うと辰巳もむー、と口を尖らせる。
「あれ? 奏先輩は余裕なわけ?」恵那が驚いた表情を見せる。三人一纏めでアホだと思っていたから。
「こいつらと一緒にすんな。俺は愛美と一緒の大学行くっつって前から勉強してんだよ」
さらっと言ってドヤ顔を見せる。
「推薦は推薦だけど、こいつらと違って外部。まあ、だからってそこまで余裕があるわけじゃねーし。俺は三年なってからずっと塾行ってるし」
彼女と一緒に、なんて未来を描いているだけあるようで気合の入り方が奏だけ別格。見た目に寄らず、である。
傍から話を聞いていた涼としては、この三人の印象が最初の頃とは随分変わったと思う。一番“ふりょお”な印象の奏が一番優等生だなんて、想像もしていなかった。
とにかく三年のこの三人がそのまま部活に参加できる余裕はないらしく、「解散、解散」と準備室を出て。
音楽室では三宅がアップしていたので、涼がそのまま恵那に手を振って三宅の元へと向かった。
すると、涼と離れた瞬間。
徹の手を引いた恵那が。
「徹先輩、あと一個だけちょい、話あるんだけど。ダメかな?」
いつも見せない真面目な声で徹の耳にだけ届くように言った。
「クリコンか?」
「にゃ、ちょいプライベート」
あまり大事にしたくはなくて。だから軽めの口調にして誤魔化すと。
徹は小さくため息を吐いて。
「俺たちはな。勿論、おまえのこと大事だとは思ってるよ。けどさ、おまえよりも自分のが大事なんだよ。悪いが現状、おまえのプライベートな相談にのってやれる程暇じゃねえ」
ちょっと不機嫌な様子。
勉強、なんてやりたくもないのにやらなきゃいけないわけで。
それがわかるだけに、仕方なく小さく頷いた。
実際、自分の中の持て余している感情を、ちょっとだけ徹に聞いてもらいたかっただけで。徹なら土岐との過去の確執も知っているから。
普段にない弱気な恵那の様子だから徹がぐりぐりと頭を撫でると。
「んな不安そうな顔してんなよ。しょうがない、これからはそういう話はコイツに任すわ」
徹は、小さくなっていた悠平を引っ張った。
「へ?」
徹からは後で絶対に怒られると思ってしゅんとしていた悠平だったから、急に引っ張り出されて目を丸くした。
「どうせヒマだろ、一年生。制服の件はおまえから説教しとけばいいってことにしてやるから、代わりに恵那の相談に乗ってやれ」
急にそんなことを言われても、と恵那を見る。
「くっそ、厄介払いしやがって。いいよ、別に。おまえに話してもしょーがないことだから」
いいからパート練習行くぞ、とだけ言って恵那は楽器へと向かった。
奏が言い出して。
「あそれ、ナイス。んじゃ、ちょいキリにも相談してみるわ。いいだろ、涼?」
「別に、僕は何でもいいってゆーか、どうでもいいってゆーか」
涼にしてみれば女装させられるのが前提なわけだから、もはやどんな制服だろうと知ったこっちゃないわけで。
とにもかくにもこの制服に関しては一切外部に晒すわけにはいかない、とトルソはそのまま再び布を被せられ、準備室の奥へと戻されたが、
「先輩たち、久々に練習参加してけよ」
せっかく音楽室に来たんだからと恵那が誘ってみた。
「そうしたいのはヤマヤマだけどな。俺ら結構これでも忙しいんだよ。夕課外は出席自由だから途中からでも入れるしな。無料でやってくれる課外授業だから、出とかないと損だろ」
それまでの徹とは真逆な真面目発言に、恵那が鼻白む。
「俺はともかく、徹も辰巳も結構ギリだからさ、成績。こいつら今、塾なんかにも真面目に行ってんだぜ?」
鼻で笑って奏が言うと辰巳もむー、と口を尖らせる。
「あれ? 奏先輩は余裕なわけ?」恵那が驚いた表情を見せる。三人一纏めでアホだと思っていたから。
「こいつらと一緒にすんな。俺は愛美と一緒の大学行くっつって前から勉強してんだよ」
さらっと言ってドヤ顔を見せる。
「推薦は推薦だけど、こいつらと違って外部。まあ、だからってそこまで余裕があるわけじゃねーし。俺は三年なってからずっと塾行ってるし」
彼女と一緒に、なんて未来を描いているだけあるようで気合の入り方が奏だけ別格。見た目に寄らず、である。
傍から話を聞いていた涼としては、この三人の印象が最初の頃とは随分変わったと思う。一番“ふりょお”な印象の奏が一番優等生だなんて、想像もしていなかった。
とにかく三年のこの三人がそのまま部活に参加できる余裕はないらしく、「解散、解散」と準備室を出て。
音楽室では三宅がアップしていたので、涼がそのまま恵那に手を振って三宅の元へと向かった。
すると、涼と離れた瞬間。
徹の手を引いた恵那が。
「徹先輩、あと一個だけちょい、話あるんだけど。ダメかな?」
いつも見せない真面目な声で徹の耳にだけ届くように言った。
「クリコンか?」
「にゃ、ちょいプライベート」
あまり大事にしたくはなくて。だから軽めの口調にして誤魔化すと。
徹は小さくため息を吐いて。
「俺たちはな。勿論、おまえのこと大事だとは思ってるよ。けどさ、おまえよりも自分のが大事なんだよ。悪いが現状、おまえのプライベートな相談にのってやれる程暇じゃねえ」
ちょっと不機嫌な様子。
勉強、なんてやりたくもないのにやらなきゃいけないわけで。
それがわかるだけに、仕方なく小さく頷いた。
実際、自分の中の持て余している感情を、ちょっとだけ徹に聞いてもらいたかっただけで。徹なら土岐との過去の確執も知っているから。
普段にない弱気な恵那の様子だから徹がぐりぐりと頭を撫でると。
「んな不安そうな顔してんなよ。しょうがない、これからはそういう話はコイツに任すわ」
徹は、小さくなっていた悠平を引っ張った。
「へ?」
徹からは後で絶対に怒られると思ってしゅんとしていた悠平だったから、急に引っ張り出されて目を丸くした。
「どうせヒマだろ、一年生。制服の件はおまえから説教しとけばいいってことにしてやるから、代わりに恵那の相談に乗ってやれ」
急にそんなことを言われても、と恵那を見る。
「くっそ、厄介払いしやがって。いいよ、別に。おまえに話してもしょーがないことだから」
いいからパート練習行くぞ、とだけ言って恵那は楽器へと向かった。
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