コレは誰の姫ですか?

月那

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 さすがに去年からは身長も伸びているし、いくらなんでも今の涼を見て“小学生の女の子”だと思う人間はいないだろう。それくらい、涼が成長しているのは確かだ。
 毎日一番近くで見ている恵那だって、表情も以前よりずっと逞しくなっているのはわかっていて。
 でも、だからと言って現状涼以外に誰があの制服を着こなせるというのだ。

 だって。
「あーもう。やっぱ、太腿がすーすーすんだよねー。短パン、ないかなあ?」と言って戻って来た涼は。
 どこからどう見ても、ただのJKでしかない。

「おまえ、やっぱすげーな」思わず恵那が感嘆した。
「ほらあ、似合わないでしょ? さすがに高二ってのは無理があるんだってば」
 涼が口を尖らせているけれど。

「パンチあるよな、佐竹のこの姿。去年は指くわえて見てた俺らの代の奴らがさ、今年は確実に群がって来るぞ、これは」
 徹が恵那の隣で腕を組んで感心している。

 胸は、残念ながら、ない。当然だ。あったら逆に困る。
 が、だからこそ、この細い華奢なJK姿は、男心を擽る。
 そりゃ確かに豊満な胸や、もちもちの太腿、ふわふわなお尻なんてのは、全男子の憧れだろう。
 けれども、自分達にないこの繊細で華奢な白い乙女、というのは。これはこれで、堪らない。

「久々に逢って、やっぱり再認識したわ。俺、涼は絶対女子だと思う」
「なわけないでしょーが! 腕なんて前よりごつごつになったし、肩幅だって前よかキツキツだもん! スカートなんて見てよ。超ミニスカになってんじゃん!」
 言っているけれど、確かに前より幾分太さは増したように見える手足だが、かと言ってこの場の誰もが「華奢」だという認識しかないもので。肩幅がキツいなんてのは、もう本人の感覚だけだろう。どこからどう見てもジャストフィットしている。
 そして極めつけ。超ミニスカ、になったが故に白い脚が晒されているのがもう、破壊力ハンパない。

「涼ちゃん、可愛い」
 激おこ状態の涼に近付いた恵那が、きゅ、と抱きしめて。
「まじ可愛い。このままここで押し倒したい」
「やめんかアホたれ」やりかねないのを徹がゲンコツで止める。

「ねーねー、徹先輩。コレ貰って帰っちゃダメ? 俺、家でコレ着せて、えっちなことしたい」
 恵那のセリフには、涼からもゲンコツが入る。

「ふざけてろ。そんなん、俺だってしたいわ、ボケ」
「ダメ! これ、俺の」
「うっせーばーか。姫は旧部長のカノジョなんだよ! だから今からコイツは俺の」
「いやだ。涼は渡さん!」
「ほざいてろ。さ、行くぞ、佐竹」
 徹が涼の手を引く。

「えー、えなあ」
「涼!」
「えなあ~~」
「りょおおー!」
 二人してロミジュリのように手を伸ばしているけれど、涼はともかく恵那は完全に芝居がかっているから遊んでいるだけで。
 
「ふざけてないで俺たちも行くよ、恵那。今日だけは佐竹、徹先輩たち三年生のモンだから、諦めろ」
 芝崎が言って、交代式兼文化祭打ち上げ会場に全員が向かった。
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