コレは誰の姫ですか?

月那

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「恵那先輩、体育祭のブラス応援って、金管だけなんスか?」
 と、パート練習で問いかけて来たのは甲斐悠平。
 何かにつけて突っかかってきていた悠平が、何故かコンクールが終わる頃から、恵那にやたらと懐いてくるようになっていた。

「いや、希望者は誰でもいいよ。ただ、炎天下で演奏するから木管はあんまり参加したがらないだけで」
 野球の応援と同じようなモンだ、と言うと。
「じゃあ、俺もやりたいです」と手を上げて来た。
 ブラス応援隊の仕切りは恵那が担当している。

「そかそか。充樹は? どーする?」
 悠平といつもつるんでいる熊谷充樹に声を掛けると「いや、俺はやめときます。炎天下、バリサク抱えて演奏する体力、ないっす」と手を振る。
「クマちゃんなくせに、何いってんだよ? まあ、別に強制するわけじゃねーからいいけどさ。あとは? 一年でやりたいヤツ、他にいる?」
「あ、恵那。ブラス隊、俺らも出ないから」徹の発言に恵那が瞠目した。
 徹と辰巳は参加デフォで考えていたから。

「え、なんで?」
「俺らさ、推薦貰うのに成績ちょっとヤバいんだよね。体育祭直前に期末あるじゃん? ちょっと、マジでそこで点とっとかねーといけねーからさ」
 辰巳が嫌そうな顔で説明した。
「文化祭に力入れるからさ、体育祭はおまえらに任すよ」と徹も不貞腐れながら言う。

 いくら付属の大学に推薦枠があると言っても、ある程度の成績はないとエスカレーターに乗車拒否されるから。
 ここまで遊び過ぎたツケが回って来たと見える。

「あ、そーなんだ? 先輩ら、やっぱアホだったんスね?」
 ぷぷぷ、と恵那が嗤うから「てめえは! このデリカシー無さ男めえ!」と辰巳に蹴られる。
「俺、辰巳先輩は結構おバカちゃんだって認識あったけど、徹先輩はデキる人だと思ってたんだけどなー」
「うっせーばーか。てめーだって大した頭、持ってねーだろがよ」
「何を言うか。先輩、知らねーの? 俺、毎回定期考査は成績上位だぜ?」
「嘘つけ!」恵那のドヤ顔に辰巳が嘘だと決めつけて問うと。
「いや、マジな話。恵那、いつも上位二十位以内には入ってるんスよ」
 芝崎がフォローする。

「俺、天才だからね。授業受けてたらそれだけで全部わかっちゃうの。定期考査前に復習したら全部わかっちゃうからね」
「うわー、その話、過去一うぜえ」徹と辰巳が心底嫌な顔をして。
「ま、てことだからさ。ブラス隊の入隊条件は、成績だな。期末、試験勉強中も吹部とは別の楽譜頭入れないといけないから」
 この条件には、悠平以外誰も手を上げようとしなかった。
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