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「ほほー、俺が涼を無理矢理、ねえ」
パート練習中、恵那に話がしたいと直談判に来た一年生、甲斐悠平。
が。
面白い、と恵那が思ったからそのまま連れて階段踊り場で二人きりになった。
まあ、辰巳と徹も面白がっていたから、恐らくどこかで聞き耳を立てているのだろうことは想定内だが。
「恵那先輩は、なんで佐竹先輩を侍らせてるんですか? だって、先輩と佐竹先輩は世界が全然違うじゃないですか」
曰く、あのふっわふわな涼を無理矢理恵那達やんちゃな世界に巻き込んで、まるでマスコットのように扱っているのでは、と。
悠平の言葉を聞いた恵那としては、確かにわからないこともないな、と思うわけで。
響から聞かされていた一年の間に出回っている妙ちきりんな噂を、まさか真正面から追求してくるヤツがいるとは予想もしていなかった。けれど、この目の前の一年生-ガキンチョ-に真剣な顔で問われると、自分と涼の持つ雰囲気が違うかもしれない、とは思わなくもない。
「そうさねー。あのお姫様はさ、かーわいいしピュアピュアだし、俺なんかが傍にいるようなヤツじゃないってのは、俺も、思うよ。うん、わかる」
腕を組んで頷いて。
「でもさ。涼はさ、ほーんと繊細なコなわけ。ほら、誰かが傍にいて護ってやんないとさ、危なっかしくてしょーがないでしょ? 思わん?」
くふくふ嗤いながら、いつもの恵那節が始まる。
「何でも信じちゃうし、コワーいお兄さんとかさ、あいつに目付けたらヤバくね?」
「そりゃ……わかりますけど」
誰にでもふわふわとコットンキャンディのような笑顔を振り撒いている涼の姿は、学校中から“天使”認定を受けているわけで。
「だからさ。俺は護ってやってんのよ、いわばボディガードね。ああ、わかるわかる、俺なんかじゃガードになんないんじゃないかって、もっとガタイイイヤツがいんじゃねーかって、言いたいんだろ?」
「あ……いや、まあ」
「でもさ。あいつだってほら、ムッさい、ゴッつい男が四六時中一緒にいるよかさ、腕っぷしはソコソコだけどさ、俺みたいなイケメンが付いててやった方が、安心じゃね?」
え、自分で言うんだ、イケメンって。と悠平がアホ面を見せると。
「可愛いお姫様にはさ、やっぱ隣にはオウジサマってーのが必要なわけよ。わかる?」
ほら俺見るからに王子様だから、とドヤる恵那に、もう開いた口が塞がらない。
「悠平、だっけ? おまえ、いいなあ、真っすぐで。もう入部届出した?」
恵那が悠平の目を見て、今までのふざけた表情を消して問いかけた。
「あ、はい。俺、中学ん時からずっとアルトサックス吹いてて。できたら吹部で、アルトやりたいっス」
「そっかー。いいねえ。俺もね、元々アルト希望だったんだけどさー、徹先輩にバリトンさせられてっからさ。ま、サックス全部好きだし、何でもいいっちゃーいいから、バリサクも全然いんだけどさ」
いいなー、アルト。なんて笑顔を見せる恵那は、今度は全然ふざけているわけじゃなくて。
「今年はなんか、結構入部希望者いっぱいいるし、いつもみたく各楽器一本てわけじゃなさそうだから、きっとアルト、させてもらえると思うし。頑張れよ」
ぽんぽん、と悠平の肩を叩いて。
あ、こいつなかなかいい体してんなー、なんてそんなトコを羨ましく思いながら恵那が言うと、茫然としていた悠平が「あ、はい、あざっす」とだけ答える。
「ほほー、俺が涼を無理矢理、ねえ」
パート練習中、恵那に話がしたいと直談判に来た一年生、甲斐悠平。
が。
面白い、と恵那が思ったからそのまま連れて階段踊り場で二人きりになった。
まあ、辰巳と徹も面白がっていたから、恐らくどこかで聞き耳を立てているのだろうことは想定内だが。
「恵那先輩は、なんで佐竹先輩を侍らせてるんですか? だって、先輩と佐竹先輩は世界が全然違うじゃないですか」
曰く、あのふっわふわな涼を無理矢理恵那達やんちゃな世界に巻き込んで、まるでマスコットのように扱っているのでは、と。
悠平の言葉を聞いた恵那としては、確かにわからないこともないな、と思うわけで。
響から聞かされていた一年の間に出回っている妙ちきりんな噂を、まさか真正面から追求してくるヤツがいるとは予想もしていなかった。けれど、この目の前の一年生-ガキンチョ-に真剣な顔で問われると、自分と涼の持つ雰囲気が違うかもしれない、とは思わなくもない。
「そうさねー。あのお姫様はさ、かーわいいしピュアピュアだし、俺なんかが傍にいるようなヤツじゃないってのは、俺も、思うよ。うん、わかる」
腕を組んで頷いて。
「でもさ。涼はさ、ほーんと繊細なコなわけ。ほら、誰かが傍にいて護ってやんないとさ、危なっかしくてしょーがないでしょ? 思わん?」
くふくふ嗤いながら、いつもの恵那節が始まる。
「何でも信じちゃうし、コワーいお兄さんとかさ、あいつに目付けたらヤバくね?」
「そりゃ……わかりますけど」
誰にでもふわふわとコットンキャンディのような笑顔を振り撒いている涼の姿は、学校中から“天使”認定を受けているわけで。
「だからさ。俺は護ってやってんのよ、いわばボディガードね。ああ、わかるわかる、俺なんかじゃガードになんないんじゃないかって、もっとガタイイイヤツがいんじゃねーかって、言いたいんだろ?」
「あ……いや、まあ」
「でもさ。あいつだってほら、ムッさい、ゴッつい男が四六時中一緒にいるよかさ、腕っぷしはソコソコだけどさ、俺みたいなイケメンが付いててやった方が、安心じゃね?」
え、自分で言うんだ、イケメンって。と悠平がアホ面を見せると。
「可愛いお姫様にはさ、やっぱ隣にはオウジサマってーのが必要なわけよ。わかる?」
ほら俺見るからに王子様だから、とドヤる恵那に、もう開いた口が塞がらない。
「悠平、だっけ? おまえ、いいなあ、真っすぐで。もう入部届出した?」
恵那が悠平の目を見て、今までのふざけた表情を消して問いかけた。
「あ、はい。俺、中学ん時からずっとアルトサックス吹いてて。できたら吹部で、アルトやりたいっス」
「そっかー。いいねえ。俺もね、元々アルト希望だったんだけどさー、徹先輩にバリトンさせられてっからさ。ま、サックス全部好きだし、何でもいいっちゃーいいから、バリサクも全然いんだけどさ」
いいなー、アルト。なんて笑顔を見せる恵那は、今度は全然ふざけているわけじゃなくて。
「今年はなんか、結構入部希望者いっぱいいるし、いつもみたく各楽器一本てわけじゃなさそうだから、きっとアルト、させてもらえると思うし。頑張れよ」
ぽんぽん、と悠平の肩を叩いて。
あ、こいつなかなかいい体してんなー、なんてそんなトコを羨ましく思いながら恵那が言うと、茫然としていた悠平が「あ、はい、あざっす」とだけ答える。
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