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「なんかさ、ちょっと妙な噂耳にしてんけど」
久々に瑞浪家で四人揃って夕飯なんて食べていると、響がふと思い出したように言った。
バスケ部も、ウィンターカップ出場という実績もあって新入部員はかなりの数確保しているらしいが、三年生は既にインターハイ予選に向けての練習に余念がないから、一年生の相手は当然二年生がすることになり、それはそれでなかなか忙しいらしい。
「噂って?」
みんな大好き鶏の唐揚げを、山からひょいひょいと口の中に突っ込んでいた恵那が訊く。
「涼っちは恵那の愛人やらされとって、涼っちのことは力づくで侍らせてるらしいっての」
響の答えに、ぶふぉっと吹き出した。
「もお、えなあ。何やってんのさ? ほら、ティッシュ」
きったないなあ、と拭いてやりながらも、「ん?」と響の言った内容に涼も眉を顰めた。
「どゆこと、それ?」二人して響を見て。
「いや、なんか一年の間でそーゆー話が回ってるらしいねん」
二年C組に超可愛いアイドルがいるんだけど、なんかガラの悪いヤツがいつも傍にいて侍らせてて、どうやらアイドルはそいつに逆らえないからいつも横で小さくなってくっついてるらしい。
という、わけのわからないわりに、絵面は確かにそうかも、と思わせる内容に土岐が思わず吹き出す。
「何それ? 僕はアイドルでもないし、小さくなんかないし!」
「俺だってガラなんか悪くねーだろーがよ。こんなイケメンつかまえて何言いやがる」
二人してぶーぶー言うけれど、
「いやまあ、涼っちはアイドルやし、恵那は大概やからなあ」と響も笑って。
「実際のトコ、さ。涼っちは人見知りするさかい、基本的に恵那の影に隠れるやろ? で、恵那は喧嘩っ早いし誰にでも物怖じしーひんからさ。そーゆーのん、知らんヤツが見たら誤解してもしゃーないやろ」
「くっそお。なんか腹立つな。よし、今度から涼は俺のだって言いながら腰抱いて練り歩いてやろう」
「やめて!」
「でもそうでもしないと、涼が俺のだってわかんねーじゃん」
「別にそんなことしなくていいし、誰彼構わず付き合ってることなんて言わなくていいじゃん!」
「だって俺のだし」
「そんなん、二人だけでわかってればいいだけだ!」
二人して睨み合うけれど、傍で見ている分にはただの惚気でしかないから。
「あの、さ。おばちゃんおらんからいいけど、おまえらあんま、そゆこと堂々と言ってんなよ?」
唐揚げタワーを作った恵那たちの母は、既に台所を離脱している。休憩とばかりに部屋に籠ったらしいが。
「かーちゃんいても、別にどってことねーよ」
恵那が改めてトリカラを口に突っ込んで言う。
「そんなことより、そんな噂が吹部に入ってなきゃいいけどな」
「ないんじゃない? 部活の時はさ、僕とえなが普通に仲いいのみんな知ってるし。えながそんな怖い人だなんて、誰も思わないもん」
怖い人どころか、ただただ面白い先輩、だもんねーと涼が鼻で笑う。
「ま、そりゃそーだ。実際吹部で俺ら見てりゃ、そんな変な噂もすぐに消えるだろうよ」
ほい、とトリカラを今度は涼の口に突っ込む。二人して微笑み合うのを見て、響も「そやな。このバカップル状態見せられたら、誰もあんな話、信じんやろ」と笑った。
「なんかさ、ちょっと妙な噂耳にしてんけど」
久々に瑞浪家で四人揃って夕飯なんて食べていると、響がふと思い出したように言った。
バスケ部も、ウィンターカップ出場という実績もあって新入部員はかなりの数確保しているらしいが、三年生は既にインターハイ予選に向けての練習に余念がないから、一年生の相手は当然二年生がすることになり、それはそれでなかなか忙しいらしい。
「噂って?」
みんな大好き鶏の唐揚げを、山からひょいひょいと口の中に突っ込んでいた恵那が訊く。
「涼っちは恵那の愛人やらされとって、涼っちのことは力づくで侍らせてるらしいっての」
響の答えに、ぶふぉっと吹き出した。
「もお、えなあ。何やってんのさ? ほら、ティッシュ」
きったないなあ、と拭いてやりながらも、「ん?」と響の言った内容に涼も眉を顰めた。
「どゆこと、それ?」二人して響を見て。
「いや、なんか一年の間でそーゆー話が回ってるらしいねん」
二年C組に超可愛いアイドルがいるんだけど、なんかガラの悪いヤツがいつも傍にいて侍らせてて、どうやらアイドルはそいつに逆らえないからいつも横で小さくなってくっついてるらしい。
という、わけのわからないわりに、絵面は確かにそうかも、と思わせる内容に土岐が思わず吹き出す。
「何それ? 僕はアイドルでもないし、小さくなんかないし!」
「俺だってガラなんか悪くねーだろーがよ。こんなイケメンつかまえて何言いやがる」
二人してぶーぶー言うけれど、
「いやまあ、涼っちはアイドルやし、恵那は大概やからなあ」と響も笑って。
「実際のトコ、さ。涼っちは人見知りするさかい、基本的に恵那の影に隠れるやろ? で、恵那は喧嘩っ早いし誰にでも物怖じしーひんからさ。そーゆーのん、知らんヤツが見たら誤解してもしゃーないやろ」
「くっそお。なんか腹立つな。よし、今度から涼は俺のだって言いながら腰抱いて練り歩いてやろう」
「やめて!」
「でもそうでもしないと、涼が俺のだってわかんねーじゃん」
「別にそんなことしなくていいし、誰彼構わず付き合ってることなんて言わなくていいじゃん!」
「だって俺のだし」
「そんなん、二人だけでわかってればいいだけだ!」
二人して睨み合うけれど、傍で見ている分にはただの惚気でしかないから。
「あの、さ。おばちゃんおらんからいいけど、おまえらあんま、そゆこと堂々と言ってんなよ?」
唐揚げタワーを作った恵那たちの母は、既に台所を離脱している。休憩とばかりに部屋に籠ったらしいが。
「かーちゃんいても、別にどってことねーよ」
恵那が改めてトリカラを口に突っ込んで言う。
「そんなことより、そんな噂が吹部に入ってなきゃいいけどな」
「ないんじゃない? 部活の時はさ、僕とえなが普通に仲いいのみんな知ってるし。えながそんな怖い人だなんて、誰も思わないもん」
怖い人どころか、ただただ面白い先輩、だもんねーと涼が鼻で笑う。
「ま、そりゃそーだ。実際吹部で俺ら見てりゃ、そんな変な噂もすぐに消えるだろうよ」
ほい、とトリカラを今度は涼の口に突っ込む。二人して微笑み合うのを見て、響も「そやな。このバカップル状態見せられたら、誰もあんな話、信じんやろ」と笑った。
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