コレは誰の姫ですか?

月那

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「ホント? 土岐くんたちも、試合に出るの? 応援、行きたい!」
 キリエが目をキラキラさせる。
「ちょっときーちゃん、あんまり無理言っちゃだめだよお」
「なんで? キリだってもう高校生になるんだよ? キリたちの学校のバスケ部と試合とかだって、あるかもじゃん」
「いやいや、きーちゃんトコ女子高だし、うちは男子高だからそれはないから」
 可愛いボケ発言に、響がけらけら笑う。

「M女の女バスも結構強いねん。でも、さすがに試合はしたことないわあ。堪忍な?」
「ウチのガッコと同じような環境で、強化対象の部活には結構力入ってるしな。吹部もだけど、他にもバレー部だっけ? インターハイで県代表になってたハズ」
 恵那が言うと「そゆの、学校説明会でもゆってたー。キリ、吹部が強いのに憧れて、M女にしたんだー」とにこにこ笑う。

「そう言えば、キリがM女に入る為だけに家族でこっちに引っ越してきたのか?」
 県外からわざわざ、そこまでして入学するだけの魅力がM女子高校にあるとは思えなくて。いろいろな部活に力を入れているのは確かだが、そんなの各地方毎にどこにでもあるだろうから。
 不思議に思った恵那が問うと。
「んなわけないじゃん。ママが再婚すんの決まって、だからこっちの高校受験したんだよ」
 キリエの発言に涼以外が目を見開いた。
「あ、だから山之内じゃなくて、今度から浦田樹李江うらたきりえね。まだ慣れないから変な感じだけど」
 改めての自己紹介、なんてのを平然として。

「えっと。涼ちゃんのママ、英恵さんがキリのママのお姉ちゃんなのね。で、元々ママもこっちでキリ産んだんだけど、元パパの仕事の都合で前のおうちに行ってー。で、離婚したけどあっちでママ、仕事してたからその関係でそのままあっちにいて。そしたら今度はこっちで英恵さんのお友達と仲良くなって、結婚することになったの」
 親の都合に振り回されちゃってんだよねー、と、なかなか濃い内容の話をさらっと言ってくれる。

「おかあさんのお友達、ってゆーかお仕事の関係者さんだけどね」
 涼が軽くフォローして。

「きーちゃんのママ、めっちゃ美人さんなんだよ。それに仕事も僕のおとうさんの仕事にもちょっとだけ関わってて。そしたらなんか、もういいからこっちおいでっておとうさんも協力してくれて。いつの間にかこっち来ることになっちゃったんだよねー」
 キリエと涼がお互いに「ねー」なんて目を合わせて。
 まるで姉妹のような二人が可愛いのだけれど、そんなことよりその内容に三人共面くらっていた。

「あ、そーいえばきーちゃん。僕、きーちゃんにいっぱいあげるものあるんだよ」
 キリエの引っ越しのドタバタと吹部の定期演奏会前のバタバタが重なったから、二人してゆっくり会うのは久しぶりだから。
「例のヤツか?」と恵那が笑う。
「そうそう。えっとねー、なんか美容関係のグッズいろいろ。僕が貰っても使い道ないから。きーちゃんにあげようと思ってたんだー」
 そう言って紙袋を手渡す。
 中身はファンクラブからの贈り物である。
「キリも、キリも。涼ちゃんに誕プレ渡そうと思ってたの」
 キリエまでもが紙袋を取り出して、中からピンク色のラッピングが施された可愛らしい包みを涼に渡した。

「え、何なに? 嬉しい、開けてみていい?」
「ん。遅くなってごめんね」
 誕生日当日にはラインでメッセージをくれていたから、涼はふるふると首を振って。
 袋の中から出てきたのは。
「あ、チャムスのサコッシュだー。可愛いー」
「でしょでしょ。涼ちゃん、この水色似合うって思ったから。ま、本音ゆっちゃうとリュックあげたかったけどお小遣い足りなかったんだー」
 えへー、なんてちょっと舌を出して。キリエが肩を竦めたけれど、涼は「そんなの、全然無理することないよお。気持ちだけで十分嬉しいもん」とハグ。

 どこからどう見ても女子トークな二人の会話に、三人して目が細くなる。
 つくづく、女子といたら当たり前に女の子になってしまう涼が、学校では当然だけれど男子なのが不思議で仕方がない。
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