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「涼。そいえば今日、いろんなヤツから誕プレ貰ってたろ?」
恵那がくふ、と嗤って言い出す。
「あー、あれね。もー、めんどくさいから全部受け取ったけどさー、殆どみんな同じようなクッキー詰め合わせだったよ」
バレンタインに引き続き、ホワイトデーがどうこうではなくただただ涼の誕生日だということで、再びアイドル涼へのプレゼント攻撃が試験後に次々と降りかかって来て。
試験終わりで吹部以外は基本的に部活はないのだが、涼と恵那が音楽室へと向かおうとすると廊下に何人もの男子生徒が涼を待ち受けていて。
バースデーカードや手紙の添えられたプレゼントが手渡された。
横から恵那が「貰うだけ貰っとけよ」と言うから仕方なく受け取っていたが。
見たら殆どお菓子のようで、「何で?」と訊いたら「スイーツが好きだって聞いたから。お返しとかはいいから、とにかく受け取って欲しいんだ」と切実な顔で答えられてしまい。
おまけに「ファンクラブ会長を引き継いだ。今後我々が佐竹をクイーンにするべく、鋭意努力を惜しまず見守り続けるから」と二年生数人に囲まれ。押し付けられた紙袋には、何やら流行りのコスメセットがどっさり入っていた。
とりあえずそれには「……きーちゃんにあげよ」と呟いて。
「僕なんかにプレゼントして、一体何が嬉しいのかわかんないよ」
「そりゃー、あれだよ。推しの誕生日には気持ちを込めてプレゼントしたいっつのはもう、ファンとしては当然の心理ってヤツ」
「オシ……って?」
「あー……アイドルとか、一番好きなキャラ、みたいなヤツ」
「なん、それ?」
「いんだよ、涼はもう学校中のアイドルなんだから。黙って笑ってやりゃ、それだけで奴らは満足すんのさ」
眉を寄せて「わけわかんないし」と呟く涼の頭を、恵那がポンポンして笑う。
「あでも。あのね、えな。三宅くんにはさ、お返し、したよ?」
ちょっとだけ、申し訳なさそうに涼が言う。
「ん?」
「バレンタインの時にね、チョコ……あでも、友チョコだけどさ、三宅くんに貰ったのね。だから、お返しに馬場さんにマフィン作って貰って、それ、あげたんだ。えな、それだけは赦してね?」
テスト勉強もあったし、自分で作るだけの時間はなくて。馬場さんに相談したら「私がマフィン焼きますよ」って言ってくれたからそれに甘えた。
「何それ?」
「あ、ヤキモチ、焼く? でも、三宅くんはお友達だから。別に変なイミとかはなくて」
「俺も欲しい」
「え?」
「マフィン、旨そう。俺も欲しいなー、それ」
食い意地の張った恵那は、そう言って縋るように涼を見て。
「今日の料理もめっちゃ旨いしさ。馬場さん、さすがプロだよなー。だからマフィンも絶対旨そうだから、それ、俺も食いたい」
「……ヤキモチ、とかじゃなくて?」
「んなモン、ヤかねーわ。涼が三宅っちよか俺に惚れてんの、そんなんわかりきってっし」
「あ……そ」
拍子抜け、な顔をしている涼と、「マフィン、マフィン。美味しいマフィン」なんて鼻歌交じりに言っている恵那のくっだらないやり取りに、土岐と響は苦笑するしかなかった。
恵那がくふ、と嗤って言い出す。
「あー、あれね。もー、めんどくさいから全部受け取ったけどさー、殆どみんな同じようなクッキー詰め合わせだったよ」
バレンタインに引き続き、ホワイトデーがどうこうではなくただただ涼の誕生日だということで、再びアイドル涼へのプレゼント攻撃が試験後に次々と降りかかって来て。
試験終わりで吹部以外は基本的に部活はないのだが、涼と恵那が音楽室へと向かおうとすると廊下に何人もの男子生徒が涼を待ち受けていて。
バースデーカードや手紙の添えられたプレゼントが手渡された。
横から恵那が「貰うだけ貰っとけよ」と言うから仕方なく受け取っていたが。
見たら殆どお菓子のようで、「何で?」と訊いたら「スイーツが好きだって聞いたから。お返しとかはいいから、とにかく受け取って欲しいんだ」と切実な顔で答えられてしまい。
おまけに「ファンクラブ会長を引き継いだ。今後我々が佐竹をクイーンにするべく、鋭意努力を惜しまず見守り続けるから」と二年生数人に囲まれ。押し付けられた紙袋には、何やら流行りのコスメセットがどっさり入っていた。
とりあえずそれには「……きーちゃんにあげよ」と呟いて。
「僕なんかにプレゼントして、一体何が嬉しいのかわかんないよ」
「そりゃー、あれだよ。推しの誕生日には気持ちを込めてプレゼントしたいっつのはもう、ファンとしては当然の心理ってヤツ」
「オシ……って?」
「あー……アイドルとか、一番好きなキャラ、みたいなヤツ」
「なん、それ?」
「いんだよ、涼はもう学校中のアイドルなんだから。黙って笑ってやりゃ、それだけで奴らは満足すんのさ」
眉を寄せて「わけわかんないし」と呟く涼の頭を、恵那がポンポンして笑う。
「あでも。あのね、えな。三宅くんにはさ、お返し、したよ?」
ちょっとだけ、申し訳なさそうに涼が言う。
「ん?」
「バレンタインの時にね、チョコ……あでも、友チョコだけどさ、三宅くんに貰ったのね。だから、お返しに馬場さんにマフィン作って貰って、それ、あげたんだ。えな、それだけは赦してね?」
テスト勉強もあったし、自分で作るだけの時間はなくて。馬場さんに相談したら「私がマフィン焼きますよ」って言ってくれたからそれに甘えた。
「何それ?」
「あ、ヤキモチ、焼く? でも、三宅くんはお友達だから。別に変なイミとかはなくて」
「俺も欲しい」
「え?」
「マフィン、旨そう。俺も欲しいなー、それ」
食い意地の張った恵那は、そう言って縋るように涼を見て。
「今日の料理もめっちゃ旨いしさ。馬場さん、さすがプロだよなー。だからマフィンも絶対旨そうだから、それ、俺も食いたい」
「……ヤキモチ、とかじゃなくて?」
「んなモン、ヤかねーわ。涼が三宅っちよか俺に惚れてんの、そんなんわかりきってっし」
「あ……そ」
拍子抜け、な顔をしている涼と、「マフィン、マフィン。美味しいマフィン」なんて鼻歌交じりに言っている恵那のくっだらないやり取りに、土岐と響は苦笑するしかなかった。
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