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「好きです。俺と、付き合って下さい」
と、正面からコクって来た男が既に本日三人目。
涼はうんざりしながら「ごめんなさい」と告げて、教室へと戻った。
本日バレンタインデー。
男子校でのバレンタインデー。
だからきっと、こんなの何でもないただの平日。
だと涼は思っていたわけだけれど。
「ねえねえ、女子が告白する日、じゃないの?」
涼が恵那に言うと、いつものようにくふくふ笑いながら「どっちからでもコクっていいんじゃね?」と返してきた。
「まあ、別にいいけど。てかえな、なんでヤかないの?」
ニマニマというか、にやにやというか、へらへらというか。
とにかく「俺の涼」なんていつも言っているわりに、今日はそんな独占欲をかざさない恵那に、涼が首を傾げる。
「だって涼、俺のだし」
「だからヤキモチ焼くもんなんじゃないの?」
「いや、俺はねー、なんか嬉しいの。俺の涼、すげーモテんなーって思うとさ」
「……でも相手、男子だし」
「それな。共学だったら多分、俺のが貰ってっけどな」
そりゃそーでしょーけど、と内心呟く。恵那が女子からモテるだろうことは、涼にもわかっている。
「ま。今年は涼から貰えたから、それでいいや」
手作りのチョコレートケーキ。を、昨日家政婦の馬場さんに教えて貰って焼いた涼である。
まさか自分がこのイベントに参加するなんて思ってもいなかったけれど、恵那が中学時代の友達的な女の子から沢山貰うだろうと思ったら、居ても立っても居られなくなって。
でも、そんな自分が悔しいから。
恵那にはチョコレートケーキだけれど、土岐と響にも残った材料でちょっとしたトリュフを作ったのでそれをあげることにした。
朝練前、いつも待ち合わせしている自転車置き場で真っ先に恵那に渡したら予想以上に喜んで、そんな場所だというのにハグしてきて。さすがに周りにいたのは吹部の一年ばかりだったからスルーしてくれたけど。
自転車小屋が学年毎になっているから良かったけれど、二年も一緒だったら徹先輩たちに恐らく思い切りからかわれていただろう。
「今日は休憩の度に涼は呼び出しだな」
「やめて。えなが言うとほんとにそうなりそうだから、怖い」
授業の合間の休憩時間を縫うように、廊下に呼び出しては告白する男の存在は実際その後もまだ、続いた。
午前中は同じ一年だけで六名。おまけに四コマ目の体育の授業で移動していたら、二年生からも声をかけられた。
「好きです。俺と、付き合って下さい」
と、正面からコクって来た男が既に本日三人目。
涼はうんざりしながら「ごめんなさい」と告げて、教室へと戻った。
本日バレンタインデー。
男子校でのバレンタインデー。
だからきっと、こんなの何でもないただの平日。
だと涼は思っていたわけだけれど。
「ねえねえ、女子が告白する日、じゃないの?」
涼が恵那に言うと、いつものようにくふくふ笑いながら「どっちからでもコクっていいんじゃね?」と返してきた。
「まあ、別にいいけど。てかえな、なんでヤかないの?」
ニマニマというか、にやにやというか、へらへらというか。
とにかく「俺の涼」なんていつも言っているわりに、今日はそんな独占欲をかざさない恵那に、涼が首を傾げる。
「だって涼、俺のだし」
「だからヤキモチ焼くもんなんじゃないの?」
「いや、俺はねー、なんか嬉しいの。俺の涼、すげーモテんなーって思うとさ」
「……でも相手、男子だし」
「それな。共学だったら多分、俺のが貰ってっけどな」
そりゃそーでしょーけど、と内心呟く。恵那が女子からモテるだろうことは、涼にもわかっている。
「ま。今年は涼から貰えたから、それでいいや」
手作りのチョコレートケーキ。を、昨日家政婦の馬場さんに教えて貰って焼いた涼である。
まさか自分がこのイベントに参加するなんて思ってもいなかったけれど、恵那が中学時代の友達的な女の子から沢山貰うだろうと思ったら、居ても立っても居られなくなって。
でも、そんな自分が悔しいから。
恵那にはチョコレートケーキだけれど、土岐と響にも残った材料でちょっとしたトリュフを作ったのでそれをあげることにした。
朝練前、いつも待ち合わせしている自転車置き場で真っ先に恵那に渡したら予想以上に喜んで、そんな場所だというのにハグしてきて。さすがに周りにいたのは吹部の一年ばかりだったからスルーしてくれたけど。
自転車小屋が学年毎になっているから良かったけれど、二年も一緒だったら徹先輩たちに恐らく思い切りからかわれていただろう。
「今日は休憩の度に涼は呼び出しだな」
「やめて。えなが言うとほんとにそうなりそうだから、怖い」
授業の合間の休憩時間を縫うように、廊下に呼び出しては告白する男の存在は実際その後もまだ、続いた。
午前中は同じ一年だけで六名。おまけに四コマ目の体育の授業で移動していたら、二年生からも声をかけられた。
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