コレは誰の姫ですか?

月那

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 恵那もキリエも人見知りしない人間なので打ち解けるのは早く、三人で一日中なんだかんだと盛り上がって喋っているうちに、二人は自然と“恵那”“キリ”なんて呼び合うようになっていた。
 そうして夕方。いつものお礼に、と家政婦さんが夕食まで用意してくれて。
 涼の両親はどうやらこの三が日は仕事関係の挨拶回りで忙殺されているらしく、香を連れて外回り中だからとまだ帰宅していなくて。
 涼とキリエに囲まれた広いテーブルでご馳走を前にした恵那が、
「まるでハーレム、両手に花。おまけに目の前にはご馳走もあるし、ここは天国か」なんていつものようにふざけて。

「恵那って、軽いよねー。なんで涼ちゃんとお友達なの?」
 真面目人間な涼と真逆だと言わんばかりのキリエの問いに、
「だって涼、可愛いじゃん。可愛いコを口説くのはオトコとしての本能ってヤツだからね」
 しれっとそんなことを言ってのけて。

「じゃあ涼ちゃんは、恵那に口説かれたから一緒にいるの?」
「違いますー。隣の席になったえなが、超人見知りの僕に話しかけてくれただけですー」
 こんなトコで“可愛い”って言うな、と恵那を軽く睨んで。

「涼ちゃんも恵那も、高校生だから彼女、ちゃんといるんでしょ?」
「何、それ?」恵那が鼻で笑う。
「キリまだ中学の間はカレシとか作んなくてもいいけど、高校行ったらカレシ作るんだー」
 あっけらかんとそんなことを言うから、
「カレシってのは、高校生になったから作るってモンじゃねーだろ?」と突っ込むと。

「えー、だってステータスじゃない? いるのといないのとじゃ、学校での立場が違うみたいだし」
 キリエの怖い発言に、
「何そのわけのわからんカースト制度。少なくともウチのガッコではそんなのないよ?」
 恵那が眉を顰めた。

「えー、恵那たちは男子校だからじゃない? なんかー、ハイスペックカレシがいたら、それだけで結構マウント取れるみたいだし」
「はいすぺっくかれし、ねえ。結構俺、当てはまると思うけど?」
「だから、顔が綺麗なのは認めるけど、恵那は自分でそゆことゆっちゃうトコ、キリ的にナシだわ」

「じゃあ例えばどんなのがハイスペックなわけ?」
「背が高いのはデフォね。で、お金持っててー、優しくてー、そんでいつでも護ってくれるくらい強いの。だからマッチョじゃないとダメ」
「くそ。俺には唯一、金がねえ」
 部活やってるからバイトもできず、とりあえず月額でお小遣いはあるけれど、いつだって食べ物に消えている。

「お金持ち以外は当てはまるって言えちゃう恵那が凄いよね、ほんと。ま、いっけど。キリ的にはやっぱ、恵那は“お友達”だなー」
「きーちゃん、カレシなんてそんな簡単に作るもんじゃないよ。ちゃんと好きな人ができて、その人のこと大事に想って、そんでその相手から好きって想って貰ってやっと成立するんだよお」
 完全に真顔で涼がこんこんと諭すと、
「涼ちゃんは、そゆことゆってるといつまで経っても彼女できないよ?」
 女のコはもっとシビアだよお、とキリエも涼に真顔を見せる。

「僕の思ってるのと、きーちゃんの思ってるの、なんか違う」
 二人共真面目に言っているから。
 そのやり取りがまた可愛いなーと思った恵那は。
「どっちにしろ、俺にも涼にも彼女はいないよ。ま、紹介して欲しかったらいくらでも男、紹介してやれるけど、キリの言う条件満たせる男っつーのは、かなりキビしいかもなー」

「いいの。キリ、自分で頑張って探すから。運命の王子様」
 ぐ、と拳を握って決意表明。
 そんなキリエを見て、“条件なければ引く手あまただろうな”と恵那も涼も思った。
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