コレは誰の姫ですか?

月那

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☆☆☆

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「やだ!」
 起き上がりながら涼が怯えた顔で見て来た。
「やだ、じゃねえよ。おまえ、いい加減にしろ」
「…………」
「ごめんけど、一人で寝てな。俺、ちょっと頭冷やしてくるから」

 涙目で自分を見ている涼に、一気に冷や水をぶっかけられたような気がして。
 恵那はすっと立ち上がると、それだけ言って部屋を出た。
 そして、誰もいないリビングのソファに沈み込む。

 ダメだ。
 今のは自分が悪い。
 絶対に、やってはいけないことを、した。反省している。
 冷静な自分はそう、わかっている。

 でも。
 本音を言わせて貰えるならば。
 あの状況であんなセリフを聞いて、それでも何もしないでいられる程自分はオトナじゃない。
 涼が求めている、ただただ甘やかして抱っこして寝てくれる存在は、今の自分には無理ゲーでしかない。

 可愛くて可愛くて、可愛すぎて憎たらしい。
 きっと涼の思い描いている、されてもいい“ナニ”ってのは、きっと裸で体をくっつけて眠るくらいのことだろう。多少勃起したソレがぶつかり合ったとしても、ただそれだけのこと。
 ぎゅっと抱きしめられて眠るという事実が、ただ裸になっただけのことって認識しか、ない。
 そんな甘々な涼が、今の自分のこの“犯したい”という欲求なんてわかるわけがない。

 好きか、嫌いか。
 そんなの好きに決まってる。
 そんでもって好きなヤツに煽られて、抱かずにいられるわけが、ないじゃないか。
 
 ……いや、でも。
 こんな想いを涼にぶつけるのは、多分違くて。
 好きだから抱きたい、えっちしたい、なんて。そんなの男の勝手な欲求でしかない。
 好きなだけ甘やかしてやりたい、それこそが男の中の男だ。
 自分の目指す理想の“漢”は、それだから。
 
 可愛いを振り撒かれて、煽られて、それで勝手に欲情して興奮して、襲い掛かるなんて。
 愚の骨頂、だ。

 大事にしたいんだ。
 一番、大切にしたい存在なんだ。
 自分の中の涼という人間は、純粋無垢で誰よりも透き通っているから。それを護ることこそ自分の使命。
 だから。

 やってはいけないことを、してしまった。
 耐えなければいけない状況を、一時の欲望に煽られて押し流されてしまった。

 ああ、涼。
 ごめん。
 ほんとに、自分が悪い。
 反省するから。

 だから……ごめん、一回だけ抜いてくるから、ちょっと待っててくれ。
 ソファで落ち着こうにも涼の感触が消えてくれなくて。
 仕方がないからトイレに駆け込んだ。
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