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羽山は、いい。彼のクラスの出し物がメイドカフェで、そのままのスタイルで舞台に載っているのだが、とにかく誰が見ても似合ってるとしか言いようのない当たり前にキュートな姿で。
でも残る四人、徹と辰巳と奏と二年の須賀という大男が。すね毛もそのままに見せながら、ごつい体格でメイド服を着て恋チュンダンスをやっているからもう、爆笑モノ以外の何物でもなくて。
とりあえず、ここから三曲、ダンスメンバーが順番に振り付けを完コピして吹部の演奏をバックに踊るのである。
狭いステージで、希望者――お祭り好きが結構いた――全員が踊れるハズもなく、ならばと三曲に分けてそれぞれが完コピして披露する、ということになったのだ。
一曲目で爆笑を取り、二曲目は嵐のTurning Upをユーフォチューバの低音部隊が五人でカッコよく決めて。これには女性客の歓声が上がる。
できる限りのイケメンを揃えたので、これはもう当然の仕上がりである。
そして三曲目。
白雪姫と黒スーツ、な恵那と芝崎がセンターに立ち、その少し後方に上手下手で三人ずつのコビトたちといういでたちのメンバーが整列すると。
誰もが知っている超有名ダンス曲ということで、恋ダンスが始まった。
恵那も客席にウィンクを送り、踊りたい人は踊れとばかりに煽るから。
会場全体が一体となってノリノリになって。
白雪姫と黒執事はとにかく完璧にキレッキレで踊るわけで。それはもう、観客も圧倒される美しさ。
前日、恵那が徹に「白雪姫と黒執事」な衣装で踊ると言い出した時は徹に「はあ?」と言われ。
「おま、前日に何言い出すかな」
「いいじゃん。だって、どうせその場にあるわけだし。吹部の揃いのTシャツも悪くねーけど、つまんねーじゃん」
「で、羽山はメイド服? それ、首を縦に振るとは思えんが」
徹が眉を寄せると「だからメイド服は徹先輩たちも着るんだよ」としれっと言い放ち。
「はあ?!」
「羽山先輩んクラス、先輩以外も何人かメイド服着てたのね。だから、ゆったら貸して貰えるだろうから、その辺交渉して。まあ、俺が話してもいいけど」
「ちょっと待て。俺らがメイド服って、誰得だよ、そんなん」
どこからどうみても“ザ、男”なメンバーである。
「でも羽山先輩のメイド服は、俺は全世界に見せつけたい」
「何が全世界だ。あほか」
「いいじゃん。とりあえず近藤先輩は見せびらかしたいと思うけど」
「逆だろ。あいつが怒り狂うぞ?」
「なんで? “俺の鳴海、可愛いだろ”って見せつけたくね? 俺は俺の涼、可愛いから見せびらかしたいけど」
何気に「俺の涼」と言った恵那に、涼がその隣でちょっと赤く照れた。
「じゃあ、羽山と近藤を説得出来たら俺たちも着てやる」
という徹の言葉に、実際恵那は羽山の元に直談判。
結果当人が、「別に、いいよ。つか、徹たちのメイド服も、俺が他のヤツに聞いて集めとく」なんてあっさり頷いてくれて。
羽山は意外とお祭り好きというか、ノリのいい男で。
それを聞いたカレシであるところの近藤克槻が「俺の……俺の……」と最後までゴネていたが、そこは羽山が「俺は俺のものであっておまえのものじゃねえ」と冷ややかに言い放っていたから、この二人の関係性が見て取れた。
そして嵐のダンス隊はもう、元から“イケメン”を全面に出すという方向性を持たせていたので、吹部の第二部の衣装である全員揃いのTシャツにも、関係者によるキラキラアレンジがされていて。
それこそ手先の器用なヲタさんを姉に持つ者がいたから、その辺りはダンスから何から総ての指導にも当たって貰っていたのだ。
かくして前日急遽、ダンス部隊の衣装が変更されることになったが、見事なまでに恵那のアイデアはクリティカルヒット。
三曲が終わった時点で、完全に場はあったまっていて。
残る曲も、コスプレはそのままで演奏。Jポップの新旧ヒット曲を取り揃えていたから、観客は総立ちでノリノリとなり。
結果、アンコールを二回重ね。準備していなかったけれど、毎年定期演奏会の締めでやっている恒例の曲が全員既に入っているからと、鳴りやまない拍手の後三回目のアンコールとして演奏して漸く終了した。
でも残る四人、徹と辰巳と奏と二年の須賀という大男が。すね毛もそのままに見せながら、ごつい体格でメイド服を着て恋チュンダンスをやっているからもう、爆笑モノ以外の何物でもなくて。
とりあえず、ここから三曲、ダンスメンバーが順番に振り付けを完コピして吹部の演奏をバックに踊るのである。
狭いステージで、希望者――お祭り好きが結構いた――全員が踊れるハズもなく、ならばと三曲に分けてそれぞれが完コピして披露する、ということになったのだ。
一曲目で爆笑を取り、二曲目は嵐のTurning Upをユーフォチューバの低音部隊が五人でカッコよく決めて。これには女性客の歓声が上がる。
できる限りのイケメンを揃えたので、これはもう当然の仕上がりである。
そして三曲目。
白雪姫と黒スーツ、な恵那と芝崎がセンターに立ち、その少し後方に上手下手で三人ずつのコビトたちといういでたちのメンバーが整列すると。
誰もが知っている超有名ダンス曲ということで、恋ダンスが始まった。
恵那も客席にウィンクを送り、踊りたい人は踊れとばかりに煽るから。
会場全体が一体となってノリノリになって。
白雪姫と黒執事はとにかく完璧にキレッキレで踊るわけで。それはもう、観客も圧倒される美しさ。
前日、恵那が徹に「白雪姫と黒執事」な衣装で踊ると言い出した時は徹に「はあ?」と言われ。
「おま、前日に何言い出すかな」
「いいじゃん。だって、どうせその場にあるわけだし。吹部の揃いのTシャツも悪くねーけど、つまんねーじゃん」
「で、羽山はメイド服? それ、首を縦に振るとは思えんが」
徹が眉を寄せると「だからメイド服は徹先輩たちも着るんだよ」としれっと言い放ち。
「はあ?!」
「羽山先輩んクラス、先輩以外も何人かメイド服着てたのね。だから、ゆったら貸して貰えるだろうから、その辺交渉して。まあ、俺が話してもいいけど」
「ちょっと待て。俺らがメイド服って、誰得だよ、そんなん」
どこからどうみても“ザ、男”なメンバーである。
「でも羽山先輩のメイド服は、俺は全世界に見せつけたい」
「何が全世界だ。あほか」
「いいじゃん。とりあえず近藤先輩は見せびらかしたいと思うけど」
「逆だろ。あいつが怒り狂うぞ?」
「なんで? “俺の鳴海、可愛いだろ”って見せつけたくね? 俺は俺の涼、可愛いから見せびらかしたいけど」
何気に「俺の涼」と言った恵那に、涼がその隣でちょっと赤く照れた。
「じゃあ、羽山と近藤を説得出来たら俺たちも着てやる」
という徹の言葉に、実際恵那は羽山の元に直談判。
結果当人が、「別に、いいよ。つか、徹たちのメイド服も、俺が他のヤツに聞いて集めとく」なんてあっさり頷いてくれて。
羽山は意外とお祭り好きというか、ノリのいい男で。
それを聞いたカレシであるところの近藤克槻が「俺の……俺の……」と最後までゴネていたが、そこは羽山が「俺は俺のものであっておまえのものじゃねえ」と冷ややかに言い放っていたから、この二人の関係性が見て取れた。
そして嵐のダンス隊はもう、元から“イケメン”を全面に出すという方向性を持たせていたので、吹部の第二部の衣装である全員揃いのTシャツにも、関係者によるキラキラアレンジがされていて。
それこそ手先の器用なヲタさんを姉に持つ者がいたから、その辺りはダンスから何から総ての指導にも当たって貰っていたのだ。
かくして前日急遽、ダンス部隊の衣装が変更されることになったが、見事なまでに恵那のアイデアはクリティカルヒット。
三曲が終わった時点で、完全に場はあったまっていて。
残る曲も、コスプレはそのままで演奏。Jポップの新旧ヒット曲を取り揃えていたから、観客は総立ちでノリノリとなり。
結果、アンコールを二回重ね。準備していなかったけれど、毎年定期演奏会の締めでやっている恒例の曲が全員既に入っているからと、鳴りやまない拍手の後三回目のアンコールとして演奏して漸く終了した。
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