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「きっれーい!」
と、涼は目をきらっきらに輝かせながら感嘆した。
上半身は薄いブルー、下は鮮やかな黄色いロングのたっぷりとしたドレープのスカート。
赤いケープを羽織ってちょっと広い肩幅を隠し、パフスリーブの可愛らしい袖で腕の筋肉を隠しているから、細い部分だけ見えているので、男にしては華奢な恵那だがその細さが際立つ。
顔こそどすっぴんのそのままだが、赤い大きなリボンのついた金髪ロングヘアのウィッグを付けてしまえば、元々の顔立ちが整っているから充分に美女なわけで。
「すっごい、えな、どっから見てもちゃんと白雪姫だよお」
衣装担当数名と、恵那と王子役の篠原。そして、涼がコネを使って依頼した貸衣装店員の可愛い大人女性が二人。
普段茶道部が使っている小さな和室を使用して、衣装合わせをしている。
「ほんっとにお綺麗。胸だけ、やっぱり男のコだから詰め物してるけど、それ以外は細いからドレスはパニエを使うだけでとってもスタイルが良く見えるし」
店員も嬉しそうに感心してくれるから、恵那としても嬉しいわけで。
「だろだろ、涼。おまえには及ばねーけど、俺やっぱ綺麗じゃん!」
ドヤ顔で鏡の前、くるくる回って見せて。
「……恵那……おまえ……」
完全に白雪姫状態の恵那を、篠原が唖然として見つめていて。
こちらも、多少ガタイはいいがイイ感じに仕上がっている。
白いカッターシャツは本人自前の物を使用して、その上から光沢のある青い布を被り、金色のサッシュベルトをして。青い帽子には白い羽根が付いていて、恵那と同じく赤いマントを羽織って。
「ほら、外国の方はかなり大きな体の方もいらっしゃるでしょう? これくらいのサイズでしたら、何とかなるんですよ」
意外と篠原の衣装に関しては何の補修も必要なく。
そしてラガーマンらしい厚い胸板や太い手足のおかげで恵那が普段より華奢に見えるため、二人が並ぶと見事なくらい“美男美女”になっていて。
「いいじゃん、いいじゃん。どうだ、涼。俺ら、すっげーお似合いじゃね?」
調子に乗った恵那が篠原の腕に絡み、しなだれかかると
「おいおい、篠原。ほーれーるーなーよお」
と、ウィンクして人差し指をくるくるさせて篠原の厚い胸板を辿った。
「お……あ……恵那……俺」
そんなことをされ、完全に“姫”に化けている恵那の色香に惑わされた篠原は頬を赤らめ、太い腕を回して恵那をガバっと抱き上げた。
そしてそのまま襲い掛かろうとしたから。
「ダメーっ! えなは僕のっ! 篠原、放せっ!」
思わず涼がそんなことを言って、恵那の足元にしがみつく。
その必死な声に、篠原が、はっと我に返り、そっと恵那をその場に下ろした。
すると、笑いを堪えきれなくなった恵那が腹を抱えていて。
「ひゃーっひゃっひゃ。あー、苦し。涼、おまえサイコー」
むーっと口をへの字にして白雪姫を大事そうに抱えようとする涼に、当の姫が頭をポンポンしてやって。
「いつもと逆だな、おい」
「えな……もお。浮気、しないでよ」
「してねっつの。なー、篠原? ちょっと俺の魔力にヤられただけだよなー」
くふくふふざけて嗤って、恵那が再び綺麗なウィンクを決める。
「それが浮気だっつってんの! もお、えなは僕のでしょ! そゆこと、しないで」
「え、そおなん?」
涼のセリフに篠原が平静さを取り戻して恵那に問う。
いつの間にか二人は付き合っていたのか、と。
「そそ。涼は俺のっていつも言ってんじゃん。だから、俺には何やってもいいけど、涼には手、出すなよ」
恵那の返事は本気とも冗談とも取れるもので。
「さーて。そろそろ着替えようぜ。ドレス、汚しちゃいけねーしさ」
恵那がその場の空気を入れ替えるように、ぱん、と一つ手を打って。
「そうですね。では当日のお衣装はこちらの二点で用意させて頂いて、前日までには学校の方にお届けしておきます。他にもちょっとした小物は揃えておきますね」
男の子たちのじゃれあい、というものをにこやかに見ていた貸衣装店の女性店員がそう言って場を締める。
「あとはコビトたちの衣装くらいか? 他は映像で誤魔化すんだろ?」
「あ、うん、らしい。コビトたちの衣装は普段着にちょっと手を加えるだけだから。ね、みんな?」
その辺りは衣装係のメンバーと打ち合わせ済みのようで。
「じゃあ俺、この後ダンスチームと打ち合わせあるから、もう行くわ。じゃあな、涼」
「ん。頑張ってね」
二人が交わしたその会話は、今まで見て来たそれと何ら変わりのないものだったので、さっきの二人の“カップルなのか?”という疑問はうやむやなままに流された。
「きっれーい!」
と、涼は目をきらっきらに輝かせながら感嘆した。
上半身は薄いブルー、下は鮮やかな黄色いロングのたっぷりとしたドレープのスカート。
赤いケープを羽織ってちょっと広い肩幅を隠し、パフスリーブの可愛らしい袖で腕の筋肉を隠しているから、細い部分だけ見えているので、男にしては華奢な恵那だがその細さが際立つ。
顔こそどすっぴんのそのままだが、赤い大きなリボンのついた金髪ロングヘアのウィッグを付けてしまえば、元々の顔立ちが整っているから充分に美女なわけで。
「すっごい、えな、どっから見てもちゃんと白雪姫だよお」
衣装担当数名と、恵那と王子役の篠原。そして、涼がコネを使って依頼した貸衣装店員の可愛い大人女性が二人。
普段茶道部が使っている小さな和室を使用して、衣装合わせをしている。
「ほんっとにお綺麗。胸だけ、やっぱり男のコだから詰め物してるけど、それ以外は細いからドレスはパニエを使うだけでとってもスタイルが良く見えるし」
店員も嬉しそうに感心してくれるから、恵那としても嬉しいわけで。
「だろだろ、涼。おまえには及ばねーけど、俺やっぱ綺麗じゃん!」
ドヤ顔で鏡の前、くるくる回って見せて。
「……恵那……おまえ……」
完全に白雪姫状態の恵那を、篠原が唖然として見つめていて。
こちらも、多少ガタイはいいがイイ感じに仕上がっている。
白いカッターシャツは本人自前の物を使用して、その上から光沢のある青い布を被り、金色のサッシュベルトをして。青い帽子には白い羽根が付いていて、恵那と同じく赤いマントを羽織って。
「ほら、外国の方はかなり大きな体の方もいらっしゃるでしょう? これくらいのサイズでしたら、何とかなるんですよ」
意外と篠原の衣装に関しては何の補修も必要なく。
そしてラガーマンらしい厚い胸板や太い手足のおかげで恵那が普段より華奢に見えるため、二人が並ぶと見事なくらい“美男美女”になっていて。
「いいじゃん、いいじゃん。どうだ、涼。俺ら、すっげーお似合いじゃね?」
調子に乗った恵那が篠原の腕に絡み、しなだれかかると
「おいおい、篠原。ほーれーるーなーよお」
と、ウィンクして人差し指をくるくるさせて篠原の厚い胸板を辿った。
「お……あ……恵那……俺」
そんなことをされ、完全に“姫”に化けている恵那の色香に惑わされた篠原は頬を赤らめ、太い腕を回して恵那をガバっと抱き上げた。
そしてそのまま襲い掛かろうとしたから。
「ダメーっ! えなは僕のっ! 篠原、放せっ!」
思わず涼がそんなことを言って、恵那の足元にしがみつく。
その必死な声に、篠原が、はっと我に返り、そっと恵那をその場に下ろした。
すると、笑いを堪えきれなくなった恵那が腹を抱えていて。
「ひゃーっひゃっひゃ。あー、苦し。涼、おまえサイコー」
むーっと口をへの字にして白雪姫を大事そうに抱えようとする涼に、当の姫が頭をポンポンしてやって。
「いつもと逆だな、おい」
「えな……もお。浮気、しないでよ」
「してねっつの。なー、篠原? ちょっと俺の魔力にヤられただけだよなー」
くふくふふざけて嗤って、恵那が再び綺麗なウィンクを決める。
「それが浮気だっつってんの! もお、えなは僕のでしょ! そゆこと、しないで」
「え、そおなん?」
涼のセリフに篠原が平静さを取り戻して恵那に問う。
いつの間にか二人は付き合っていたのか、と。
「そそ。涼は俺のっていつも言ってんじゃん。だから、俺には何やってもいいけど、涼には手、出すなよ」
恵那の返事は本気とも冗談とも取れるもので。
「さーて。そろそろ着替えようぜ。ドレス、汚しちゃいけねーしさ」
恵那がその場の空気を入れ替えるように、ぱん、と一つ手を打って。
「そうですね。では当日のお衣装はこちらの二点で用意させて頂いて、前日までには学校の方にお届けしておきます。他にもちょっとした小物は揃えておきますね」
男の子たちのじゃれあい、というものをにこやかに見ていた貸衣装店の女性店員がそう言って場を締める。
「あとはコビトたちの衣装くらいか? 他は映像で誤魔化すんだろ?」
「あ、うん、らしい。コビトたちの衣装は普段着にちょっと手を加えるだけだから。ね、みんな?」
その辺りは衣装係のメンバーと打ち合わせ済みのようで。
「じゃあ俺、この後ダンスチームと打ち合わせあるから、もう行くわ。じゃあな、涼」
「ん。頑張ってね」
二人が交わしたその会話は、今まで見て来たそれと何ら変わりのないものだったので、さっきの二人の“カップルなのか?”という疑問はうやむやなままに流された。
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