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「祐斗」
俯いていた祐斗の顎に和巳は指をかけた。
そしてくっと上を向かせると、
「プロポーズ、今度は俺からな」
さらりと言って口唇を重ねた。
「……!」
「さ、行くぞ、祐斗!」
唖然としている祐斗の手を引き、和巳はみんなの待つ月屋旅館母屋の玄関先へと向かう。
ぐいぐいと引っ張られながら、祐斗は真っ赤になって、足を動かす。
みんなの前にどんな顔をして出ればいいのかわからない。まさかこんなことされるなんて……。
「おばさん」
和巳は祐斗の母の前に立ち止まった。
「なあに、和巳くん?」
夏用の絽の着物を涼しげに着こなしている祐斗の母は、にっこりと微笑みながら和巳と目を合わせた。
既に和巳の乗るタクシーは扉を開けて待っている。空港までこれに乗って行く。
「俺、十年くらいして立派な女優になったらさ、祐斗のこともらいに来るから。そん時はよろしくね」
真剣な目をして、和巳が言い放った。
驚いたのは祐斗である。
まさか自分の母親に、そんな大それたことを言ってのけるなんて。
「あら、そうなの? じゃあ結婚式はウチでやってね」
ところが母はさらりとそんな言葉を返す。
「うわ、まじっすか? じゃあ金貯めとこ」
「か、和巳!?」
「それじゃ、お世話になりました!」
戸惑っている祐斗をよそに、和巳はぺこりとおじきをすると、座のみんなに「いってきます」とだけ言って、とっととタクシーに乗り込んだ。
「祐斗、浮気すんなよ!」
窓を開けてそんなことを平気で言ってのけると、タクシーは何も言えない祐斗を放ってさっさと行ってしまう。
「……」
呆然とタクシーを見送ることしかできなかった祐斗は、口をあんぐりと開けたまま立ち尽くした。
俯いていた祐斗の顎に和巳は指をかけた。
そしてくっと上を向かせると、
「プロポーズ、今度は俺からな」
さらりと言って口唇を重ねた。
「……!」
「さ、行くぞ、祐斗!」
唖然としている祐斗の手を引き、和巳はみんなの待つ月屋旅館母屋の玄関先へと向かう。
ぐいぐいと引っ張られながら、祐斗は真っ赤になって、足を動かす。
みんなの前にどんな顔をして出ればいいのかわからない。まさかこんなことされるなんて……。
「おばさん」
和巳は祐斗の母の前に立ち止まった。
「なあに、和巳くん?」
夏用の絽の着物を涼しげに着こなしている祐斗の母は、にっこりと微笑みながら和巳と目を合わせた。
既に和巳の乗るタクシーは扉を開けて待っている。空港までこれに乗って行く。
「俺、十年くらいして立派な女優になったらさ、祐斗のこともらいに来るから。そん時はよろしくね」
真剣な目をして、和巳が言い放った。
驚いたのは祐斗である。
まさか自分の母親に、そんな大それたことを言ってのけるなんて。
「あら、そうなの? じゃあ結婚式はウチでやってね」
ところが母はさらりとそんな言葉を返す。
「うわ、まじっすか? じゃあ金貯めとこ」
「か、和巳!?」
「それじゃ、お世話になりました!」
戸惑っている祐斗をよそに、和巳はぺこりとおじきをすると、座のみんなに「いってきます」とだけ言って、とっととタクシーに乗り込んだ。
「祐斗、浮気すんなよ!」
窓を開けてそんなことを平気で言ってのけると、タクシーは何も言えない祐斗を放ってさっさと行ってしまう。
「……」
呆然とタクシーを見送ることしかできなかった祐斗は、口をあんぐりと開けたまま立ち尽くした。
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