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「ご足労感謝しよう、高柳、遠山、渡辺」
放課後の挌技場。
決戦の場をそこにしたのは中浦の計らいである。
斎藤としても和巳があんな目に合ったきっかけを自分が作ってしまった場でもあるわけで、敵討ちの場としては申し分ない。
「斎藤……?」
がらりと開けた挌技場の扉の内側に待っていたのが、祐斗でないことに驚いた三人は立ち止まり、背後から蹴られて扉を閉められたことに気付いた時には、既に四人に囲まれていた。
「なっ……、何?」
「小月とデートのつもりだったろうが、代わりに俺たちがお相手をしてさしあげよう」
中浦がにやりと嗤った。
小形、本庄、和巳が並んでおり、それぞれが三人を睨み付けている。
常に冷静な本庄も、実は以前から高柳に嫌がらせを受けていたらしく、今回のこの計画を中浦から聞き、自分も一矢報いたいと願い出てくれたのである。
格技場の真ん中には斎藤と祐斗が立っている。
「お、小月?」
「来てくれてありがとう、だね」
ここ一週間、親しげに笑いかけてくれていた祐斗が、冷たい目で自分たちを睨み付けている。
高柳はショックだった。
何しろここに来るきっかけであるところの祐斗の手紙の内容は、最近相楽にムカつくから一緒にシメてくれないか、というものだったのだから。
「ごめんね、俺、ちょーっと名前間違えたみたい」
ムカつく相手の名前を、である。
斎藤の横で普段は絶対に見せない表情を浮かべる祐斗が、和巳の一件にどれだけ憤慨しているかが中浦たちにも伺えた。
「……ちっ、笑かしてくれるそ。おまえらが俺たちに敵うと思っちょんのか?」
暫くはショックで黙り込んでいた高柳が、どうやら吹っ切れたらしく、いつもの残忍な表情を浮かべた顔を斎藤たちに向けた。
遠山と渡辺も、その言葉に縮こまっていた背をしゃんと伸ばす。
「やるなら、やっちゃろうじゃん。最近小月ちゃんに言われてイイコしてたせいで、退屈してたんだ、こっちは」
喧嘩の体勢に入った高柳らに、斎藤は祐斗を下がらせ、中浦は和巳を下がらせた。
ここからは、斎藤、中浦、小形、本庄が相手である。
本庄とて、だてに市長の息子なんてのをやってはいない。
今まで高柳の言いなりになっていたのは事が大きくなるのを恐れていただけで、本来はいざという時のために護身術として合気道を習っている身である。
今回は中浦が後のことまで任せていいというので、日頃の恨みを晴らそうと話に載ったのだ。
「うおりゃー!」
まずは高柳が中浦に飛び掛ってきた。
そしてそれを合図に遠山、渡辺もそれぞれ目の前にいた小形、本庄に襲い掛かる。
遠山の振り上げた手が小形の顎へと向かう。
が、小形はそれを右手で捉え、そのまま右足を遠山の胴へと蹴りつけた。しかしその足を避けた遠山は小形の右腕を掴んで力任せに引き、その勢いで小形は一回転する。
どん、という音がして小形は投げられた衝撃を受身で緩和し、すぐに立ち上がる。
「くそ!」
小形は反撃とばかりに再び遠山へと蹴りを入れた。
今度は投げたことで油断していた遠山もその蹴りをまともに喰らい、その場に倒れこむ。
しかしそれだけでは収まらなかった。
しゃがんだままの姿勢から遠山は小形の腹へと頭突きをかましてきたのだ。
かなりの勢いで石頭を力任せにぶつけられた小形は、
「ウっ……」
と唸ってその場にうずくまる。
「小形!」
名前を呼び、遠山の後頭部に蹴りを入れたのは斎藤である。
そして間髪入れず更に膝蹴りをその背中に入れ、うつ伏せになったままの遠山の首に腕を絡ませ、オとした。
授業で習った締め技は既に体得している。
「大丈夫か?」
「……何とか」
とりあえず気を失っている遠山を捨ておき、腹を抱えている小形の無事を確認すると、斎藤は渡辺に腕を捻り上げられている本庄へと向かった。
高柳と戦っている中浦は、とりあえず後である。
「ご足労感謝しよう、高柳、遠山、渡辺」
放課後の挌技場。
決戦の場をそこにしたのは中浦の計らいである。
斎藤としても和巳があんな目に合ったきっかけを自分が作ってしまった場でもあるわけで、敵討ちの場としては申し分ない。
「斎藤……?」
がらりと開けた挌技場の扉の内側に待っていたのが、祐斗でないことに驚いた三人は立ち止まり、背後から蹴られて扉を閉められたことに気付いた時には、既に四人に囲まれていた。
「なっ……、何?」
「小月とデートのつもりだったろうが、代わりに俺たちがお相手をしてさしあげよう」
中浦がにやりと嗤った。
小形、本庄、和巳が並んでおり、それぞれが三人を睨み付けている。
常に冷静な本庄も、実は以前から高柳に嫌がらせを受けていたらしく、今回のこの計画を中浦から聞き、自分も一矢報いたいと願い出てくれたのである。
格技場の真ん中には斎藤と祐斗が立っている。
「お、小月?」
「来てくれてありがとう、だね」
ここ一週間、親しげに笑いかけてくれていた祐斗が、冷たい目で自分たちを睨み付けている。
高柳はショックだった。
何しろここに来るきっかけであるところの祐斗の手紙の内容は、最近相楽にムカつくから一緒にシメてくれないか、というものだったのだから。
「ごめんね、俺、ちょーっと名前間違えたみたい」
ムカつく相手の名前を、である。
斎藤の横で普段は絶対に見せない表情を浮かべる祐斗が、和巳の一件にどれだけ憤慨しているかが中浦たちにも伺えた。
「……ちっ、笑かしてくれるそ。おまえらが俺たちに敵うと思っちょんのか?」
暫くはショックで黙り込んでいた高柳が、どうやら吹っ切れたらしく、いつもの残忍な表情を浮かべた顔を斎藤たちに向けた。
遠山と渡辺も、その言葉に縮こまっていた背をしゃんと伸ばす。
「やるなら、やっちゃろうじゃん。最近小月ちゃんに言われてイイコしてたせいで、退屈してたんだ、こっちは」
喧嘩の体勢に入った高柳らに、斎藤は祐斗を下がらせ、中浦は和巳を下がらせた。
ここからは、斎藤、中浦、小形、本庄が相手である。
本庄とて、だてに市長の息子なんてのをやってはいない。
今まで高柳の言いなりになっていたのは事が大きくなるのを恐れていただけで、本来はいざという時のために護身術として合気道を習っている身である。
今回は中浦が後のことまで任せていいというので、日頃の恨みを晴らそうと話に載ったのだ。
「うおりゃー!」
まずは高柳が中浦に飛び掛ってきた。
そしてそれを合図に遠山、渡辺もそれぞれ目の前にいた小形、本庄に襲い掛かる。
遠山の振り上げた手が小形の顎へと向かう。
が、小形はそれを右手で捉え、そのまま右足を遠山の胴へと蹴りつけた。しかしその足を避けた遠山は小形の右腕を掴んで力任せに引き、その勢いで小形は一回転する。
どん、という音がして小形は投げられた衝撃を受身で緩和し、すぐに立ち上がる。
「くそ!」
小形は反撃とばかりに再び遠山へと蹴りを入れた。
今度は投げたことで油断していた遠山もその蹴りをまともに喰らい、その場に倒れこむ。
しかしそれだけでは収まらなかった。
しゃがんだままの姿勢から遠山は小形の腹へと頭突きをかましてきたのだ。
かなりの勢いで石頭を力任せにぶつけられた小形は、
「ウっ……」
と唸ってその場にうずくまる。
「小形!」
名前を呼び、遠山の後頭部に蹴りを入れたのは斎藤である。
そして間髪入れず更に膝蹴りをその背中に入れ、うつ伏せになったままの遠山の首に腕を絡ませ、オとした。
授業で習った締め技は既に体得している。
「大丈夫か?」
「……何とか」
とりあえず気を失っている遠山を捨ておき、腹を抱えている小形の無事を確認すると、斎藤は渡辺に腕を捻り上げられている本庄へと向かった。
高柳と戦っている中浦は、とりあえず後である。
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