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相楽と小月が喧嘩したらしい。
こんな噂がクラス中に広まるのに時間はかからなかった。
何しろそれを故意に振り撒いたのは、二人に一番近い人間であるところの中浦であったし、実際その噂を肯定するだけの行動を二人はしっかりととっていたのだから。
「小月ちゃん、英語のノート貸してーや」
そして高柳のそんな言葉に、
「いいよ。けど、ちゃんと予習くらいしとけよな」
と軽く返す祐斗の姿も、クラスの中できっちりと目撃されていたわけで。
「どうなってんの?」
「小月クン、高柳に付いたん? しんじれーん」
「まあでも、しょーがないんじゃない? 和巳クン最近本庄クンとばっかりいるし」
「本庄クンって市長の息子じゃもん、取り入っといて損はないって判断なんじゃないん?」
「えー、何で?」
「ほら、やっぱり客商売ってヤツじゃけ、オオモノがバックに付いたらそれってオイシイわけじゃん?」
「やー、そーゆーキタナイ手なんて、和巳クンには使って欲しゅーなかったー。うち、ちょーショックー」
「でも実際こないだ和巳クンの舞台、市長が見に行ったらしいよ?」
「きゃー、まじでー?」
口さがない女子連中が勝手なことを騒ぐのを、斎藤は遠目に見る。
総て、敵が単純であるからこそ立てることのできた計画である。
中浦が噂を振り撒き、和巳と祐斗はお互いを一切無視。
おまけに祐斗は和巳からの問いかけを故意に無視するなど、二人の間には険悪なムードが漂っているのである。
そしてそんな状況下で自分の意のままとは言いがたいものの、前よりも親し気に会話を交わしてくれる祐斗に喜ぶ高柳たち三人。
中浦と小形が常に一緒にいるけれど、それでも和巳が来る前の状況となんら変わりのない現状に、高柳たちは和巳には目を向けることがなくなった。
斎藤はその様子を外側から見計り、導火線に火を付けるタイミングを狙う。
腑抜けた敵に対する地固めは、着々と進んでいた。
こんな噂がクラス中に広まるのに時間はかからなかった。
何しろそれを故意に振り撒いたのは、二人に一番近い人間であるところの中浦であったし、実際その噂を肯定するだけの行動を二人はしっかりととっていたのだから。
「小月ちゃん、英語のノート貸してーや」
そして高柳のそんな言葉に、
「いいよ。けど、ちゃんと予習くらいしとけよな」
と軽く返す祐斗の姿も、クラスの中できっちりと目撃されていたわけで。
「どうなってんの?」
「小月クン、高柳に付いたん? しんじれーん」
「まあでも、しょーがないんじゃない? 和巳クン最近本庄クンとばっかりいるし」
「本庄クンって市長の息子じゃもん、取り入っといて損はないって判断なんじゃないん?」
「えー、何で?」
「ほら、やっぱり客商売ってヤツじゃけ、オオモノがバックに付いたらそれってオイシイわけじゃん?」
「やー、そーゆーキタナイ手なんて、和巳クンには使って欲しゅーなかったー。うち、ちょーショックー」
「でも実際こないだ和巳クンの舞台、市長が見に行ったらしいよ?」
「きゃー、まじでー?」
口さがない女子連中が勝手なことを騒ぐのを、斎藤は遠目に見る。
総て、敵が単純であるからこそ立てることのできた計画である。
中浦が噂を振り撒き、和巳と祐斗はお互いを一切無視。
おまけに祐斗は和巳からの問いかけを故意に無視するなど、二人の間には険悪なムードが漂っているのである。
そしてそんな状況下で自分の意のままとは言いがたいものの、前よりも親し気に会話を交わしてくれる祐斗に喜ぶ高柳たち三人。
中浦と小形が常に一緒にいるけれど、それでも和巳が来る前の状況となんら変わりのない現状に、高柳たちは和巳には目を向けることがなくなった。
斎藤はその様子を外側から見計り、導火線に火を付けるタイミングを狙う。
腑抜けた敵に対する地固めは、着々と進んでいた。
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