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073 大儀であった!

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 俺は直ぐに社長に駆け寄ると今日の一連の流れを説明した。

 「三島さん、今回も手を貸してくれてありがとう」

 「何言ってんだよキルト社長、こちらの方がいつも世話になっているってのに」

 「兄さん!」

 先程迄ファンの方々とお喋りをしていたリルが近づいて来た。

 「宗さんと逢っていたんでしょう、どうだったの?」

 えっ! 神谷宗男と会っていただって・・・・。

 「いや~、宗さんの慌てふためく顔はお前達にも見せてやりたかったぜ」

 「キルト、宗さんと会っていたのか?」

 「ああ、ミッシーが見たら爆笑していたと思うぞ、宗さんのあの顔、最後の最後で『お前その口髭似合ってないぞ』だって、もっと面白い事言ってみろってんだ、負け惜しみ乙!」

 社長の高笑いが会場に響き渡る、この言動を見ると結構酔っているな、しかしさっきまで他人行儀だったのに急に三島さんをミッシーって・・・・。
 神谷宗男の捨て台詞を言う際の顔と声真似は結構似ていて笑えた。

 「だったらキルトよ写真の一枚位撮っとけよなぁ」

 社長と三島さんは笑い合う、俺の知る限り距離を置いて付き合っている感じだったけど今の二人を見ると昔はこんな感じで笑い合ったりしていたんだろうなぁ。

 そんなことをしみじみ考えていたらバタバタとデリバリーが来る、俺は何も注文した記憶はないぞ?

 「今日は皆大儀であった! 私のおごりだ、大いに食べてくれ」

 社長が注文した寿司や高級な刺身や天ぷら、ジュース、アルコール類の飲み物がどんどんテーブルに並べられる、今日かかわってくれた方全員に振る舞われ歓喜の声が上がる。

 「あー、やっと解放されたー」

 彗夏が伸びをする、サイン会が終わって自由になったプリフォーが揃って社長に挨拶を交わす。

 「お前達もよくやってくれたな、今日はジャンジャン食ってくれ」

 「有難うございます、さっそく頂きます」

 臣は類やキララ、子供たちが集まっている場所で一緒に食事をする。

 「臣、お疲れ、プリフォーのステージ最高だったよ、キララ感激しちゃった」

 「俺も正直ここまで凄いとは思ってなかったよ、新曲最高だったぜ」

 キララと類に褒められ少女はシシシと笑顔で応える、続けて類は質問する。

 「ところであの気前のいい金髪で髭のおっさん誰? この場を支配して妙なオーラ漂わせているけど」

 「あの人内の社長だよ」

 えー! 類、キララ、肉山、近藤と目を丸くして驚愕する。

 「リル先生のお兄さんでもある」

 ええー!! 更に四人は絶句する。
 
 「俺人生で三秒以内に二度驚いたのは初めてだ」

 キララも、同じく、右に同じ、三人が類の言葉に頷き続けて言った。


 会場は温かい雰囲気の中時間が過ぎていく。


 「しかし何だったかなぁ? 生放送が無事終わったら真っ先に何か言おうと思っていたんだけど思い出せないんだよなぁ」

 「彗夏さんもですか? 私も何か大切な事忘れている気がするんですよね・・・・」

 彗夏と心が食事しながら忘れたことを思い出そうとしている。

 「二人共~今は無事終わったことを喜んで美味しくご飯を食べようよ~」

 「美味しく頂いているって、だけどなぁ、何だったかな、結構重要な事だったような気がするんだ」

 伊莉愛は何かを思い出そうとする二人に対して話題を変えようとしている。

 「それもこれもステージが終わった直後に還流さんが抱き着いて来たからですよ、突然すぎて頭が真っ白になってしまいました」

 「そうそう、ふいにハグは無いよなぁ、ステージ後で汗かいてるし還流さんもそういう所気にして欲しいというか」

 二人とも言葉の内容とは異なり表情は緩んでいる。

 「あれ? 心ってマネージャーの事還流さんって呼んでいたっけ?」

 「そういう彗夏さんも還流さんって呼んでましたか?」

 「二人の時は名前で呼ばせてもらっていたよ」
 「私もです」

 彗夏と心の間に沈黙が入る。

 「なるほどね、まぁ別に良いんだけど、ん? 呼び名・・何か引っかかるな?」
 「はい、私も忘れているのを思い出しそうな気がします」

 「彗夏も心ちゃんも今は目の前のご馳走を楽しも~よ~」

 尚も二人は忘れていたことを思い出そうと考え込む中突然会場が真っ暗になる。


 「はーはっはっはっはっ、はーはっはっはっはっ、はーはっはっはっはっ!」


 三段笑いの後でステージにスポットライトが当たりマイクを持った社長が現れるとその姿に全員が注目する。

 「今日の皆の活躍は大いに素晴らしかった! その中の一名に俺からMVP賞、金一封を差し上げる事に決めた!」

 宝城キルトは懐から茶封筒を取り出し高らかと掲げた。
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