72 / 78
072 弥栄
しおりを挟む
「それではみなさん弥栄!」
俺の掛け声でスタジオ内の皆がグラスを片手に弥栄! と声を出し打ち上げが始まった。
ちなみに弥栄とは日本古来数千年前からある大和言葉で『私のためでもなく、あなたのためでもなく、ともに栄え、ともに和す。全ていよいよ栄えましょう』という考え方だ、とりま縁起のいい言葉なので社長に言われてからは乾杯ではなく弥栄と言うようにしているわけだ。
「会場は21時迄使用できるのでそれまで時間のある方はゆっくりされて下さい」
教えてリル先生に出演の生徒達と保護者、カメラマンや大道具さん等スタッフ達も皆用意された食事に手を付け大いに楽しまれている。
公開生放送終了後にプリフォーのCD持参の子は歌詞カードにサインをしますと事前に告知していたので今まさにサイン会が行われている、ここに集まった生徒役を引き受けてくれた子達の殆どがCDを持って来ているので、長テーブルに横一列で座るプリフォーに列を作って順番にサインを書いてもらっている。
サインを貰いながらプリフォーとお話しでができて皆幸せそうだ、ちなみに愛宕と竈門は臣がサインを書いているのをへばりついて見ているよ。
「Kさん、CD二枚共サイン頂いちゃいました、えへへ」
スーちゃんが見せてきたファースト&セカンドシングルCDにはスミレさんへ♡と、メンバーのサインがしっかり書かれていた。
「スーちゃん良かったね、メンバー全員のサイン入りだし将来値打ちものになるかもよ」
「有難うございます、友達も同じように頂いて喜んでます」
「それは何よりだ、スーちゃん達も時間許すならゆっくり食事して行きなよ、飲み物も遠慮なく何でも飲んでいいからね」
一礼をした彼女達は笑顔で食事をし生徒役の子達と楽しく話をしている。
プリフォーからサインを貰い終えた子達が類、キララ、肉山、近藤を囲むようにしてお喋りをする。
そんな中、リルには何故か列が出来ていて一人ずつ話す感じになっている、親御さんの多くも並んでいてなんか見ていて面白い。
ざわめく会場で俺はノートパソコンを開き今日の視聴者の反応をチェックする、嬉しい事にプリフォーと新曲に興味を持ってくれている、更にメールには新曲だけでなく今まで出したCDの注文が殺到して驚いている、中には大手CDショップから大口の注文が入ってこの勢いだと数日中に在庫がなくなりそうだ。
俺の表情が緩んでいるのが分かったのか三島さんが笑顔で食べ物を乗せた紙皿を片手に近寄ってきた。
「雨木川さんお疲れ様、飯食べてる?」
「落ち着いたら頂きます、それより今日は本当にお世話になりました」
「何水臭いこと言っているんですか、それにしても上手くいって良かったですね」
「それもこれも三島さんのお陰ですよ、正直本番ぎりぎりまで冷や汗ものでした」
「生徒達が来ないなんて思わないからね、宗さんもいい加減困ったもんだ」
「三島さんは神谷宗男とはどういう関係なんですか?」
「キルト社長が昔バントやってたってのは聞いてる?」
「はい、ヴィジュアル系? ですかね、ロックバンド組んでいたのは知ってますよ」
「僕はそのガーネットってバンドでドラム叩いていたんだよ」
「え~! そうなんですか? 知らなかった、初耳です」
「僕はヴィジュアル系って柄じゃないからね、ロックバンドだけど外見で売っていたわけじゃないし、それにボーカルは女性だよ」
「それも初耳です」
「まぁ僕以外の三人は見た目も際立っていたからね、ヴィジュアル系と勘違いした人もいたんだろうね、キルトは今以上に線が細く女性と間違えられる事あったしボーカルの子も長身でカッコイイ女性だったから二人は中世的な感じだったよ」
社長ってつくづく自分の事は話さないミステリアスな人だと思った。
「そのガーネットを熱心に応援してくれていたのが宗さんなんだ」
「熱心に応援ですか?」
「そう、今とは真逆だね、でもキルトが脱退してね、メインで曲書いているのは彼だしキルト無しではどうしようもなくてさ、新しいギターを入れようかとも思ったんだけどボーカルの子も飽きっぽい子で結局2年もせずにガーネットは解散したよ」
「社長はその後ダンスに転向したんですよね?」
「うん、宗さんはその後もキルトを追っかけて応援していたなぁ、結局ガーネットというよりキルト個人に惚れこんでいたんだよ、実際あいつは何かしてくれるんじゃないかと期待してしまう所あるからね、今と違って無口で一見冷たい感じのする所あったけど人を魅了する力はもの凄くあったよ」
無口で冷たい感じか・・・・、確かに今のたまに見せるはじけた感じの振る舞いはわざとというか無理しているのかもしれないな。
「それなのにダンスの大会で二連覇したら突然姿を消しただろ、僕たちもだけど宗さんは必死で全国探し回っていたよ、結局見つからずじまいだったけどね、そんな中数年経って突然現れ弟を売り込みに芸能の世界に来たもんだから宗さんは怒って嫌がらせしているわけさ」
俺は社長の突然消えた理由が気になった、それに表舞台に戻って来たことも・・・・。
「なんとなくだけど宗さん本当はキルトと・・・・」
「弥栄~!」
三島さんの話を遮るかのようにおおきな声で弥栄と言いながら長身で金髪ロン毛、鼻の下に髭を付けたスーツ姿の男が扇子をパタパタと仰ぎながらこちらにゆっくりと近づいて来た。
俺の掛け声でスタジオ内の皆がグラスを片手に弥栄! と声を出し打ち上げが始まった。
ちなみに弥栄とは日本古来数千年前からある大和言葉で『私のためでもなく、あなたのためでもなく、ともに栄え、ともに和す。全ていよいよ栄えましょう』という考え方だ、とりま縁起のいい言葉なので社長に言われてからは乾杯ではなく弥栄と言うようにしているわけだ。
「会場は21時迄使用できるのでそれまで時間のある方はゆっくりされて下さい」
教えてリル先生に出演の生徒達と保護者、カメラマンや大道具さん等スタッフ達も皆用意された食事に手を付け大いに楽しまれている。
公開生放送終了後にプリフォーのCD持参の子は歌詞カードにサインをしますと事前に告知していたので今まさにサイン会が行われている、ここに集まった生徒役を引き受けてくれた子達の殆どがCDを持って来ているので、長テーブルに横一列で座るプリフォーに列を作って順番にサインを書いてもらっている。
サインを貰いながらプリフォーとお話しでができて皆幸せそうだ、ちなみに愛宕と竈門は臣がサインを書いているのをへばりついて見ているよ。
「Kさん、CD二枚共サイン頂いちゃいました、えへへ」
スーちゃんが見せてきたファースト&セカンドシングルCDにはスミレさんへ♡と、メンバーのサインがしっかり書かれていた。
「スーちゃん良かったね、メンバー全員のサイン入りだし将来値打ちものになるかもよ」
「有難うございます、友達も同じように頂いて喜んでます」
「それは何よりだ、スーちゃん達も時間許すならゆっくり食事して行きなよ、飲み物も遠慮なく何でも飲んでいいからね」
一礼をした彼女達は笑顔で食事をし生徒役の子達と楽しく話をしている。
プリフォーからサインを貰い終えた子達が類、キララ、肉山、近藤を囲むようにしてお喋りをする。
そんな中、リルには何故か列が出来ていて一人ずつ話す感じになっている、親御さんの多くも並んでいてなんか見ていて面白い。
ざわめく会場で俺はノートパソコンを開き今日の視聴者の反応をチェックする、嬉しい事にプリフォーと新曲に興味を持ってくれている、更にメールには新曲だけでなく今まで出したCDの注文が殺到して驚いている、中には大手CDショップから大口の注文が入ってこの勢いだと数日中に在庫がなくなりそうだ。
俺の表情が緩んでいるのが分かったのか三島さんが笑顔で食べ物を乗せた紙皿を片手に近寄ってきた。
「雨木川さんお疲れ様、飯食べてる?」
「落ち着いたら頂きます、それより今日は本当にお世話になりました」
「何水臭いこと言っているんですか、それにしても上手くいって良かったですね」
「それもこれも三島さんのお陰ですよ、正直本番ぎりぎりまで冷や汗ものでした」
「生徒達が来ないなんて思わないからね、宗さんもいい加減困ったもんだ」
「三島さんは神谷宗男とはどういう関係なんですか?」
「キルト社長が昔バントやってたってのは聞いてる?」
「はい、ヴィジュアル系? ですかね、ロックバンド組んでいたのは知ってますよ」
「僕はそのガーネットってバンドでドラム叩いていたんだよ」
「え~! そうなんですか? 知らなかった、初耳です」
「僕はヴィジュアル系って柄じゃないからね、ロックバンドだけど外見で売っていたわけじゃないし、それにボーカルは女性だよ」
「それも初耳です」
「まぁ僕以外の三人は見た目も際立っていたからね、ヴィジュアル系と勘違いした人もいたんだろうね、キルトは今以上に線が細く女性と間違えられる事あったしボーカルの子も長身でカッコイイ女性だったから二人は中世的な感じだったよ」
社長ってつくづく自分の事は話さないミステリアスな人だと思った。
「そのガーネットを熱心に応援してくれていたのが宗さんなんだ」
「熱心に応援ですか?」
「そう、今とは真逆だね、でもキルトが脱退してね、メインで曲書いているのは彼だしキルト無しではどうしようもなくてさ、新しいギターを入れようかとも思ったんだけどボーカルの子も飽きっぽい子で結局2年もせずにガーネットは解散したよ」
「社長はその後ダンスに転向したんですよね?」
「うん、宗さんはその後もキルトを追っかけて応援していたなぁ、結局ガーネットというよりキルト個人に惚れこんでいたんだよ、実際あいつは何かしてくれるんじゃないかと期待してしまう所あるからね、今と違って無口で一見冷たい感じのする所あったけど人を魅了する力はもの凄くあったよ」
無口で冷たい感じか・・・・、確かに今のたまに見せるはじけた感じの振る舞いはわざとというか無理しているのかもしれないな。
「それなのにダンスの大会で二連覇したら突然姿を消しただろ、僕たちもだけど宗さんは必死で全国探し回っていたよ、結局見つからずじまいだったけどね、そんな中数年経って突然現れ弟を売り込みに芸能の世界に来たもんだから宗さんは怒って嫌がらせしているわけさ」
俺は社長の突然消えた理由が気になった、それに表舞台に戻って来たことも・・・・。
「なんとなくだけど宗さん本当はキルトと・・・・」
「弥栄~!」
三島さんの話を遮るかのようにおおきな声で弥栄と言いながら長身で金髪ロン毛、鼻の下に髭を付けたスーツ姿の男が扇子をパタパタと仰ぎながらこちらにゆっくりと近づいて来た。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
ヤンデレ男の娘の取り扱い方
下妻 憂
キャラ文芸
【ヤンデレ+男の娘のブラックコメディ】
「朝顔 結城」
それが僕の幼馴染の名前。
彼は彼であると同時に彼女でもある。
男でありながら女より女らしい容姿と性格。
幼馴染以上親友以上の関係だった。
しかし、ある日を境にそれは別の関係へと形を変える。
主人公・夕暮 秋貴は親友である結城との間柄を恋人関係へ昇華させた。
同性同士の負い目から、どこかしら違和感を覚えつつも2人の恋人生活がスタートする。
しかし、女装少年という事を差し引いても、結城はとんでもない爆弾を抱えていた。
――その一方、秋貴は赤黒の世界と異形を目にするようになる。
現実とヤミが混じり合う「恋愛サイコホラー」
本作はサークル「さふいずむ」で2012年から配信したフリーゲーム『ヤンデレ男の娘の取り扱い方シリーズ』の小説版です。
※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています。
※第三部は書き溜めが出来た後、公開開始します。
こちらの評判が良ければ、早めに再開するかもしれません。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる