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067 Mr.K

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 会場前には観覧者の方々が集まっていた、小さい子から大人まで全員で30名来ている。

 観覧券は1枚で2名迄参加可能、小学生低学年は親同伴、高学年は高校生以上の身内と一緒であれば参加可能としている。

 「皆さんお待たせしました、本日は復活一日限りの教えてリル先生とプリミアムフォーの新曲公開生放送に足をお運びくださりありがとうございます、是非楽しんで行ってください」

 「おいっす、来たよ」
 「昨日はありがとう」

 竈門香里奈、愛宕愛、昨日忍び込んで迄リハーサルを見に来たチビ二人が声をかけてきた。

 「よう、昨日以上に今日の本番楽しんでくれよな」

 「うん」
 「はーい」

 人生何の心配事もないような顔をする二人を羨ましく感じる。

 昨日はうちの子が迷惑をかけたようですみませんでした、二人の母親が揃って頭を下げる、リハも盛り上がったんで気にしないで下さいと返事をして安心してもらった。

 「それでは案内しますので私の後についてきてください」

 俺を先頭に会場に向かう間一人の少女がそばに来て話しかけてきた。

 「あの~、ひょっとしてKさんですか?」

 Kさん?・・・・。
 
 「ひょっとしてスーちゃん?」

 「はい、そうです、やっぱりKさんなんですね! お会いできて嬉しいです」
 「よく来てくれたね、今日は楽しんで行ってね」

 「はい、ありがとうございます」


 このスーちゃんという子はメールで何度かやり取りをしている内にいつの間にか仲良くなっていた中学一年女子だ、そのいきさつを話そう。

 今回の公開生放送に観覧客を入れる事に当初社長は反対した、生放送なので失敗は当然ゆるされない、一般客を入れる事で何かしらのトラブルが起こる可能性も視野に入れての事だ、でも俺はライブ感を出すためにも少人数でもいいからお客を入れたかった、それで話し合って少人数でなおかつ教えてリル先生のファンの方限定でという事で話が付いた。

 観覧希望者には教えてリル先生のクイズを10問を出題した、またこの番組の感想、好きな理由を書いてもらった、ここに集まった子供たちは皆全員クイズに正解している子で感想も本当に教えてリル先生という番組が好きなんだと伝わる文章を書いた子に来てもらっている。
(愛宕や竈門は親に伝えてメールしてもらったと言っていた)

 その中でも特に熱心に好きだと言う事が伝わる文章を長文で送って来たのがこのスーちゃんなんだ。
   彼女がが小学3~5年生の時に教えてリル先生は放送されていて毎回楽しみに見ていたようだ、番組が終わり残念だったが今回の復活で喜び直で観たいと応募してきた。 

 余りにも熱心で愛情伝わるメールだったのでお礼のメールを返信したらまたメールが来てさらに返す、気付いたらメールを何度かやり取りする中になっていたわけだ、時には悩み事など送って来ることがあり、相談に乗っているうちに慣れ親しんだ関係になった、とはいってもメールだけのやり取りで直接会うのは今日が初めてだけどな、その際Mr.Kというハンドルネームを使ってやり取りしていたんだ。

 「Kさん、メールで色々と相談に乗ってくれてありがとうございました」

 「いえいえ、リル先生を好きであんなに熱心なメールくれると凄く嬉しいよ、ファンの子は大切にしないとね、俺なんかのアドバイスが役に立ってくれて良かったよ」

 「今でもあの言葉に勇気づけられること多いんですよ」
 「あの言葉?」

 「最後まで、時間ぎりぎりまでは出来ることを探し考え抜くと良いってやつです」
 「あ~そんなことメールしたっけ、 役に立ったようで嬉しいよ」

 「観覧券1枚で2名迄参加出来るとの事だったのでお友達も連れてきました、彼女も教えてリル先生をずっと見ていたようで意気投合して仲良くなったんですよ」

 その友達に会釈をすると同じように頭を下げてきた。

 「スーちゃん、友達出来たみたいで良かったね」

 「それもこれもKさんのおかげです」

 最後まで、時間ぎりぎりまでは出来ることを探し考え抜く・・か、実はこの言葉社長が俺に言ったものなんだ、環ちゃん人形が売れなかった時、プリフォーのCDが売れなかった時、ダラダラ売るのではなく自分で期限を決めてそれまでに出来る事を考え必死でやれってね、生放送迄残りわずか。

 社長が目の前に居たら正にこの言葉を言われるだろうな、スーちゃん有難う、思い出させてくれて。

 俺は今一度どうすれば復活一日限りの教えてリル先生がより最高の番組になるかを考える事にした。

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