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066 賽は投げられた

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 「臣ちゃん、類君、キララちゃんの三種の神器揃ったー! たとえ人数少なかろうともこれで成功まちがいなーしんぐベリーグー!」

 「リルさん、臣ちゃん、良かったね」

 伊莉愛が雄叫び心は安堵する、スタッフ達も頷く、どこからともなく拍手が鳴り会場が賑やかになった。

 「確かにこの三人に肉山君と近藤さんが居てくれれば後はリルさんが上手くやってくれるよな」

 先程迄眉間にしわを寄せていた彗夏がようやく笑顔になる。

 「それより還流の兄貴、会場前に観覧客がチラホラいたぜ」

 類が教えてくれた、時計を見ると17時を過ぎていた、本番まで一時間を切っている。

 「わかった、俺はお客さんを案内してくる、各人自分のやることに集中してくれよ」

 リルは笑顔で生徒五人に番組内での話す内容や段取りをレクチャーする。




 一人一人が本番に向けて準備を整える、俺は観覧客を迎えに行く間社長の言葉を思い返す、今回のステージ、最初にする教えてリル先生が成功するかにかかっている、それと同時に大の意識空間を作り出すことが大切だと、多くの生徒がいる中で演じる、その場の人数の多さは大切との事をだ。

 臣、類、キララ、肉山、近藤の五人、目立つポジションの子供達だし番組は盛り上がり成立させることも出来るだろうけど社長の言う大の意識空間を作り出せるのかどうか、その一点に関してのみ俺は疑問を感じていた。


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 「さあキルト、もう間もなく始まるぞ」

 神谷宗男はワイングラスを揺らしながらキルトの表情を見て楽しんでいる。

 「そんなに落ち込むなよ、一ついい事を教えてやろう、お前の弟リルの番組で人気のある類とキララと言ったかな? その子達は出るぞ」

 「何、それは本当か?」

 「ああ、他にも芸能界を去ったやつもいるようだから五人位の生徒は居るんじゃあないのか? まぁそんな人数では番組が成りたつとは思えないがね」

 確かにリルを含めて十人以下だと大の意識、俺の理想とするステージにはならない。

 「しかし、やつらも馬鹿だな、所詮はガキって事か、私に逆らったんだ、お望み通りこの世界に居られなしてやるよ」

 「あんた本当に最低だな」

 「何とでも言え、しかしあの手の番組は色んな子達がいて楽しむものだろ? 目立つ子を集め少人数でやってしまうと全く別の番組になるんじゃないのか?」

 確かに、その通りだ、視聴者が見たがっている教えてリル先生を見せなければ・・・・別物になっては意味がない。


 「ネット番組でコメントを受け付けてしかも視聴者に見れるように設定しているんだったな、今回はそれが大きなマイナス要因になるだろうなぁフフフ」

 悔しいがそれに関しても宗さんの言う通りだ、見たかったものと違うなどネガティブなコメントが書かれてはマイナスしかない、この手の書き込みは連鎖する、悪い書き込みが多いとラストの新曲に大きく影響してしまう・・・・。
 
 「顔を上げろよキルト、始まるぞ!」

 神谷はクイっと一気にワインを飲み干した。

 神谷宗男と宝城キルトの座るカウンター席の正面にあるモニター2台、一つは『リミテッドガーデン新曲お披露目スペシャルライブ』もう一つは『復活! 一日限りの教えてリル先生』のテロップが流れ番組が始まった。
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