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064 彗夏激怒

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 「リル心配するな、俺が何とかするからそんな顔するなって」

 リルの背中を軽くたたくと頷いて笑顔を見せてくれた。

 親友にこんな思いをさせたやつを許しがたく思う。
 俺は直ぐにあいつの顔が頭に浮かんだよ、そう神谷宗男、あの男はまたしてもリルと臣の番組をつぶそうとしているのか、普段怒りという感情を表に出さない俺だが今回ばかりは周りが気付く位の表情をしていたと思う。

 生徒18人居るはずが臣、肉山、近藤の三名、これじゃあ番組は成り立たないし社長の言う大の意識空間とやらには到底及ばないだろう。

 「リル先生、私が16人分喋るから大丈夫だよ、任せて」

 臣が落ち込むリルに笑顔で話しかけるが無茶な提案に肉山が突っ込みを入れる。

 「バーカ16人分も喋れるかよ、だけど俺とお前が昔みたいに取っ組み合いの喧嘩でもしたら間が持つかもな、リハーサルでもいっちょやっておくか?」

 それも良いかもねと親指を立てる臣。


 子供達に気を使わせてしまっているな、申し訳なさでいっぱいになる。

 もう少しで観覧客が入ってくる、その方々への挨拶等もあるしどうする、どうしたらいい、俺は頭をフル回転させるがこれといっていい打開策が思い浮かばない。

 「還流さん、もしも準備が必要な場合は順番を変更して私の朗読、彗夏さんと伊莉愛さんのダンスを先にしてから教えてリル先生されますか? 私ならいつでも大丈夫ですよ」

 「うんうん、私も彗夏も全然行けるからね~」

 「二人とも有難う、だけど順番は変えたくないんだ、18時ちょうどに教えてリル先生スタートと告知しているものあるし、お前達の気持ちだけ受け取っておくよ、今は自分の事だけに集中してくれ」

 何の力にもなれないのかとうつむく二人だがお前達のその言葉は本当にありがたいと思っているんだぜ。

 「昨日のリハは何だったんだよ! あんなに楽しそうにしていただろ、集合時間もとっくに過ぎているじゃないか!」

 彗夏の苛立ちがさらにヒートアップしていた。
 「本当にごめんなさい、加代かよ(山田さんの名前)の事は謝ります、許してあげてください」

 近藤さんが涙目になり友達の事で頭を下げる。

 すぐさまリルが彼女の頭を撫で笑顔を向けて大丈夫だよと声をかける。

 「彗夏ちゃん、イライラしてしまうのはわかるけどこの子達が悪いわけじゃないよ、落ち着いて」

 彗夏はこぶしを握り下唇を噛みしめ怒りをこらえるが近藤さんの次の言葉で爆発する。

 「加代はテレビに出たいんです、臣ちゃん、類君、キララちゃんの様に活躍したい、輝きたいんです!」

 「何言ってんだよ、お前達がどれだけリルさんにお世話になっているのかわからないのか? リルさんが面白おかしくキャラ付けしてくれているから目立っているだけでピンで出ても活躍出来ないだろう、今日の教えてリル先生を成功させる事が今後に繋がって行くことになるんじゃないのかよ!」

 彗夏の張り上げた声でその場がシーンと静まる中、

 「キララが悪いの! 本当にごめんなさい!」

 後ろから叫び声が聞こえてくる。

 皆が声の方を振り向くとそこには涙を流したキララが立っていた。
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