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063 リルの落胆

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 「かえる、どうしたの? 心配事のあるような顔しているよ」

 無意識に暗い表情をしていたのだろう、臣が話しかけてきた。

 「いや、何でもない、二時間後には本番だからな、準備しておけよ」

 「何言ってるの? こっちはいつでも準備万端だよ」

 少女はシシシッと独特の笑い声で余裕を見せる。

 ネット番組での生放送迄後二時間を切った、最初に披露する教えてリル先生の生徒が全員そろわないと落ち着かないな。

 リルとプリフォーに一言伝え会場の外で生徒が来るのを待つ、五分、十分経つが誰も来る気配がない、嫌な感じがしてならない中、一気に俺の表情を明るくさせたのは、遠くの方から駆け足で向かって来る肉山だった、その姿を見て安堵のため息がでたよ。

 「お~肉山君こんにちは、遅かったなぁ、待っていたんだぞ」

 何言っているんだ? そんな表情を返す肉山。

 「遅かったって別に遅刻じゃないですよ、集合は観覧者が来る三十分前でしょう? 16時30分ですよね? まだ20分近くあるじゃないですか」 

 「んっまぁそうだけど誰も来てないからさぁ、ちょっと不安になってな」

 「えっ! 誰も来ていない? くそっやっぱりか、それより臣のマネージャー大変なんだよ」

 普段はふてぶてしい顔した肉山が珍しくおたおたしているので何か気になった。

 「リル先生は居ますか?」

 「ああ、中にいるよ」

 すると会場内へ駆け足で入っていく。
 「ちょっと待てよ! 何だよ? 俺に説明しろよ」

 今の一言でその場で止まり振り返るがやっぱいいやと言って走り出す、正直むかついたね、先日の類とキララ同様こいつら俺の事軽く見てないか? 仕方ないから肉山の後を追う。
 
 「リル先生、大変だ~」

 「肉山君こんにちは、どうしたのそんなに慌てて」

 息を切らす肉山の呼吸が整うまで俺、リル、プリフォーは待っててやる。

 「奥原のやつが来ないよ!」

 突然の事で把握できてない俺達に肉山は続けて喋りだす。

 「ここに来る前一緒に行こうと奥原の家に行ったんだ、そしたら急に熱が出たから欠席しますとお母さんに言われて、昨日は全然元気だったからおかしいと思い強引に部屋に入ったら仮病だったんだ、ムカついて殴ってやったよ、そしたら教えてリル先生を欠席すれば今度作る子供向けの番組にレギュラーで出させてやるとテレビの関係者と名乗る男が夜言いに来たらしい」

 「なんだって!」

 ショックを隠し切れないリルとプリフォー。 

 「リル先生! 大変ですー」

 駆け足でこちらに向かってくるのは近藤さん、肉山同様中学に入学と同時に芸能界を引退した女の子だ。

 呼吸が整うまで待つこと10秒、彼女が語りだしたのは山田さんが今日の収録に来ないと言う事だ、近藤さんと山田さん、昨日のチビ二人と4人で帰宅した際は今日の収録に向けてにぎやかな雰囲気で帰宅したそうだ、なのに今朝になって山田さんから具合が悪くて参加出来ない、リル先生に伝えてくれと一方的に話して電話を切ったそうだ、直ぐにかけ直しても繋がらないとの事。

 「何だってんだよふざけんな!」

 正義感の強い彗夏が怒りをあらわにする。

 俺は生徒の連絡先が書いてある名簿を取り出し片っ端から電話を掛けるが全然繋がらない、おそらく本番前にかかって来る電話に出るなと指示されている可能性が高いと推測した。

 「芸能界を引退した二人を除く生徒全員にレギュラーの話を持ち掛け今日の番組を辞退するよう言ったみたいだね」

 リルのセリフに確信が持てるのは集合時間になっても生徒達が集まらないからだ。

 リルの落胆する姿を見てここにいる全員が心配を隠し切れないでいた。
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