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062 続・宝城キルトVS神谷宗男
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「さぁ、いつ迄も突っ立っていないで座れよ」
神谷を睨みつけることしか出来ないキルトは苛立ちを隠せないでいた。
「相棒とやらにつまらない指示をされても面倒だからな、ケータイも出してもらおうか」
逆らうことなくポケットからスマホを取り出しカウンターに置く。
「宗さん、あんたどこまで俺の邪魔をすれば気が済むんだ、プリフォーはデビューから一気に駆け上るはずのだったのに・・・・こんなことをして楽しいのか」
糸目の神谷の眼が見開き鋭い眼光がキルトを睨み付ける。
「ああ、凄く楽しいね、お前の焦る顔、慌てる顔を想像するだけでも楽しいがこうやって直接見るとたまらなく幸せを感じるよ」
キルトは黙って席に着きプリフォーのデビュー当時の事を思い出していた。
プリミアムフォーのデビュー曲『アイドルのたまご』が完成したのはプリフォー結成から約2か月後の10月半ば事務所にはキルト、リル、還流の三人が居てCD完成を祝っていた。
「リル、還流よ、やっとここまでこぎつけたな、ネオ・アイドルとしてプリフォーは一気に業界トップへのし上がるぞ、フフフッ楽しみで仕方ないぞ、ハーハッハッハッ」
付髭がトレードマークの男は扇子を取り出しパタパタと仰ぎだした。
「しかし社長、自主製作で五万枚も作って大丈夫ですか? 一万枚ずつ売れたら作るとかの方が良かったかもしれませんよ」
「一度に作るからその分費用も抑えられるし五万枚以上は作るつもりはないから良いんだよ」
「ダウンロード販売でも良いんじゃないかとも思ったんだけどね、兄さんCDという形にこだわりたかったんだよね?」
「ああ、やはり手に取る喜びやプリフォーのミニ写真集をめくって見てもらう楽しみも味わってほしかったからな、アルバムとその前に発売するシングル三枚に応募券を付ける、抽選でプリフォーに直接会える特典も付けるんだ、速攻で完売すること間違いない」
だがそれからわずか数日後に大々的に宣伝広告をかけて五人組アイドルグループ、リミテッドガーデンがデビューすると発表、デビューシングルの発売日は11月10日プリフォーのわずか1日前だ、プリフォーのデビューシングルの告知ポスターも各店全て張り替えさせられチラシなどの販促物も撤去、確保していたCDの設置場所もなくなりCDもほぼ全部返品されて来た、デビューからの勢いはなくなってしまったよ。
それでもイベントで手売りやSNSを使って宣伝しホームページでの通信販売等、一か月で1万枚は売ることが出来た、この調子で売れると思ったが甘くなく勢いが落ち結果半分は在庫として残ってしまった。
年が明けて二月半ばにセカンドシングル『IRONY HEART』のレコーディングを終え三月三日に発売するがそれも事前に調べられてデビュー曲同様一日前にリミテッドガーデンもセカンドシングルを出し、またしてもセールスの邪魔をされた。
売れなければ新曲は出せない、赤字が続く中あちこちに借金してでも勢いは止めたくなかったのでサードシングルの作成に取り掛かった、リルや還流は様子を見た方がいいと言うがそんな悠長なことをやっていたんではそれこそプリフォーは終わってしまう、俺は直感を信じたよ。
幾ら妨害されようとも歌が本当に素晴らしければヒットするはずなんだ、ファーストシングル、セカンドシングルで足りないものはプリフォーの結束力と感じ還流に指示してキャンプ合宿に行かせる、これが思った以上の成果を出してくれた、それは合宿から帰って来たプリフォーの雰囲気、目を見ればわかる、俺の曲、リルの詩と今まで以上に良いものが書けたことでサードシングル『シャイニング・ダークネス』が完成し今度こそ上手くいくはずだった、嫌、上手くいかなければならない、これが売れなければアルバムも出すことが出来ずプリフォーは解散だ、今回はリミテッドガーデンのテレビでの新曲発表の事は知っていた、それでも教えてリル先生の復活という事で前評判の反応を見ても視聴者を獲得する自信はあった、実際話題もあり期待値の高さはわかる、だからこそ失敗は許されない、教えてリル先生の後、心の朗読から彗夏&伊莉愛のダンスパフォーマンス、ラストに会心の新曲で一気にファン、見る者のハートを掴めるはずだったんだ、畜生、どうする、何とかしてくれ還流・・・・。
「フフフフフ、ほらそろそろ時間だぞ顔を上げろよキルト」
隣で困惑するキルトの表情を肴にワイングラスを口に付ける神谷宗男であった。
神谷を睨みつけることしか出来ないキルトは苛立ちを隠せないでいた。
「相棒とやらにつまらない指示をされても面倒だからな、ケータイも出してもらおうか」
逆らうことなくポケットからスマホを取り出しカウンターに置く。
「宗さん、あんたどこまで俺の邪魔をすれば気が済むんだ、プリフォーはデビューから一気に駆け上るはずのだったのに・・・・こんなことをして楽しいのか」
糸目の神谷の眼が見開き鋭い眼光がキルトを睨み付ける。
「ああ、凄く楽しいね、お前の焦る顔、慌てる顔を想像するだけでも楽しいがこうやって直接見るとたまらなく幸せを感じるよ」
キルトは黙って席に着きプリフォーのデビュー当時の事を思い出していた。
プリミアムフォーのデビュー曲『アイドルのたまご』が完成したのはプリフォー結成から約2か月後の10月半ば事務所にはキルト、リル、還流の三人が居てCD完成を祝っていた。
「リル、還流よ、やっとここまでこぎつけたな、ネオ・アイドルとしてプリフォーは一気に業界トップへのし上がるぞ、フフフッ楽しみで仕方ないぞ、ハーハッハッハッ」
付髭がトレードマークの男は扇子を取り出しパタパタと仰ぎだした。
「しかし社長、自主製作で五万枚も作って大丈夫ですか? 一万枚ずつ売れたら作るとかの方が良かったかもしれませんよ」
「一度に作るからその分費用も抑えられるし五万枚以上は作るつもりはないから良いんだよ」
「ダウンロード販売でも良いんじゃないかとも思ったんだけどね、兄さんCDという形にこだわりたかったんだよね?」
「ああ、やはり手に取る喜びやプリフォーのミニ写真集をめくって見てもらう楽しみも味わってほしかったからな、アルバムとその前に発売するシングル三枚に応募券を付ける、抽選でプリフォーに直接会える特典も付けるんだ、速攻で完売すること間違いない」
だがそれからわずか数日後に大々的に宣伝広告をかけて五人組アイドルグループ、リミテッドガーデンがデビューすると発表、デビューシングルの発売日は11月10日プリフォーのわずか1日前だ、プリフォーのデビューシングルの告知ポスターも各店全て張り替えさせられチラシなどの販促物も撤去、確保していたCDの設置場所もなくなりCDもほぼ全部返品されて来た、デビューからの勢いはなくなってしまったよ。
それでもイベントで手売りやSNSを使って宣伝しホームページでの通信販売等、一か月で1万枚は売ることが出来た、この調子で売れると思ったが甘くなく勢いが落ち結果半分は在庫として残ってしまった。
年が明けて二月半ばにセカンドシングル『IRONY HEART』のレコーディングを終え三月三日に発売するがそれも事前に調べられてデビュー曲同様一日前にリミテッドガーデンもセカンドシングルを出し、またしてもセールスの邪魔をされた。
売れなければ新曲は出せない、赤字が続く中あちこちに借金してでも勢いは止めたくなかったのでサードシングルの作成に取り掛かった、リルや還流は様子を見た方がいいと言うがそんな悠長なことをやっていたんではそれこそプリフォーは終わってしまう、俺は直感を信じたよ。
幾ら妨害されようとも歌が本当に素晴らしければヒットするはずなんだ、ファーストシングル、セカンドシングルで足りないものはプリフォーの結束力と感じ還流に指示してキャンプ合宿に行かせる、これが思った以上の成果を出してくれた、それは合宿から帰って来たプリフォーの雰囲気、目を見ればわかる、俺の曲、リルの詩と今まで以上に良いものが書けたことでサードシングル『シャイニング・ダークネス』が完成し今度こそ上手くいくはずだった、嫌、上手くいかなければならない、これが売れなければアルバムも出すことが出来ずプリフォーは解散だ、今回はリミテッドガーデンのテレビでの新曲発表の事は知っていた、それでも教えてリル先生の復活という事で前評判の反応を見ても視聴者を獲得する自信はあった、実際話題もあり期待値の高さはわかる、だからこそ失敗は許されない、教えてリル先生の後、心の朗読から彗夏&伊莉愛のダンスパフォーマンス、ラストに会心の新曲で一気にファン、見る者のハートを掴めるはずだったんだ、畜生、どうする、何とかしてくれ還流・・・・。
「フフフフフ、ほらそろそろ時間だぞ顔を上げろよキルト」
隣で困惑するキルトの表情を肴にワイングラスを口に付ける神谷宗男であった。
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