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045 練習、特訓、稽古の日々 その③

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 演劇メンバー全員そろっての最後の通し稽古が始まる。



 「井上と佐藤、お前達まだセリフ覚えてないのか! 来週本番だぞ、しっかりしろ」



 舞台監督の矢崎さんが叱りつける。



 舞台ガーディアンHIKARIは全体的にはいい出来で先ほど注意されていた所以外は問題なくお客様に見せることが出来るレベルまでに達していた。



 「井上と佐藤以外は帰っていいぞ、来週本番まで体調管理、しっかりコンディションを整えておくように」



 「それでは来週土日の本番どうぞ宜しくお願い致します」



 挨拶を終えて今度はプリフォーの稽古のために移動する、車内、隣に座る美少女が不満そうに声をかけてくる。



 「本番まで一週間なのにいまだに注意されて大丈夫なんでしょうか?」



 「井上君と佐藤さんの事か、居残りさせられていたし大丈夫だろう」



 「掛け持ちの舞台があるとかバイトだとか言っていたのはあの二人です、プロとして失格だと思います」



 「言い訳しているだけで本当の事はわからないからな、人には得手不得手あるから二人にとってはセリフを覚えるのが苦手なんだろう、表現力や動きなんかは他の団員達よりいいように目立っていたし」



 「確かに他の部分が良いというのは認めますよ、でもセリフ覚えは基本中の基本でしょう」



 「確かにな、特に心のように覚えるのが早いやつ、出来る奴から見るともどかしいのもわかるよ」



 「セリフ覚えるのが早いと言いますが私はそれだけ時間かけてやっているだけで特別に早いとかではないですよ、ようはやる気の問題だと思います!」



 「厳しいな、でも二人も本番はきちんとこなすだろう、心配しなくていいと思うよ」



 「勿論きちんとしてもらわないと困ります、どうして出来ない人の肩を持つんですか?」



 「ん? まぁ俺もどちらかと言うと不器用というか出来ない側の人間だからな、そのせいもあって気持ちは何となくわかるんだ」



 「え? そうなんですか? 何でも上手くこなせる器用な人に思えますが」



 「そう見えるように努力しているだけさ」



 「還流さんはちゃんと努力して出来てるから良いんです、あの二人とは違いますよ」



 「まぁそう言ってやるなよ」





 隣に座る美少女の不満を上手く聞きながら無事プリフォーの稽古場に到着した。



 「心お疲れ様、芝居の方はどうだ」



 彗夏が俺たちに気付き話しかけてきた。



 「おかげさまで順調ですよ」



 「それはよかった、こちらも臣と伊莉愛はしっかり仕上がっているぞ、後は心次第でプリフォーの出来栄えが決まりそうだ」



 そう言われステップやターンを披露するが彗夏の顔がいまいち晴れない。



 「一週間後本番なのはわかっているよな、正直このクオリティだとまずいぞ」



 彗夏が厳しい言葉を投げかける。



 「心ちゃんお芝居の方もあるし大変だよね~、私は十分出来ていると思うよ」



 「そうそう、心お姉ちゃんの分も私たちがフォローすればいいわけだし」

 伊莉愛と臣にも気を使わせていることが分かり落ち込む心。



 「すみません、居残ってでもしっかりやります」



 「ああ、私も最後まで付き合うから大丈夫だ」



 リーダーの責任感から出る言葉だろう、彗夏が笑顔で答える。



 いつものように彗夏が心を、伊莉愛が臣にマンツーマン指導をする。
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