彼女たちをトップアイドルに育てるのが俺が生まれた大きな理由の一つだったりするわけであり。

042 心の自信

　翌日、稽古場には舞台監督、劇団メンバー、心と全員集まっている。



　本番も間近に迫っていることもあり皆緊張感を持って稽古をしている。



　昨日の様子のままだったら心配だったがいつものようにしっかりした心に戻っていた。



　2時間の立ち稽古をし、それぞれの動きなど確認する、例のキスシーンは俺との練習が役だったのかスムーズに出来ていた。



　「本番まで一か月切っているからな、全員が揃って練習できるのは今日含めて4回、次回は台本持たずに立ち稽古するからな、各自しっかり覚えておくように」



　団長の三島さんがメンバーに檄を入れる。



　皆やる気に満ちた目をしている。



　「雨木川さん、心ちゃんに舞台出演頼んで正解でした」



　心を含むメンバーが稽古している中、舞台監督の矢崎さんがこっそり話しかけてきた。



　「それは良かったです、どういったところが正解だと感じたんですか？」



　「心ちゃん最年少でしょ？　主演を演じるのを最初拒否しているメンバーもいたんですよ、しかし今日の稽古、団員全員が台本を持ってセリフをチェックしながら稽古している中、心ちゃんはすでに自分のセリフ覚えていて台本持たずに取り組んでいる、一番セリフの多い心ちゃんがです、皆焦りを感じているのかいつもより熱を感じます」



　「そうですか、心が入ることでよりいい芝居になると良いですね」



　主演を演じるのを拒否しているメンバーもいたと聞いて各メンバーと上手くコミュニケーション取れているか心配したがそれぞれの役者たちと話している姿が見えるのでその点は安心した、彼女の実力を認めてくれている証拠だろう。



　「よーし皆、休憩にしよう」



　団長の三島さんの掛け声で集まる。

　「心ちゃんのマネージャーの雨木川さんが皆に差し入れとの事だ、お礼を言うんだぞ」



　三島さんが飲み物と茶菓子を皆に配る、団員からお礼の言葉を頂いた。



　「皆さん、心と仲良くしてくれてありがとう、本番いい芝居が出来るように頑張ってください」



　「はい」



　団員全員が声を揃えて返事してくれた。



　「頑張っているな、楽しそうじゃないか」



　心に話しかける。



　「お芝居楽しいです、事務所に入って直ぐアイドルとして歌や踊りのレッスンばかりだったので戸惑いましたがこうやってお芝居が出来るのは嬉しいです」



　「それは良かった」



　その日は夕方まで立ち稽古をして来週の土曜に本番さながらの通し稽古をすることになった、今日の練習を終え手ごたえを感じているのか隣にいる心の顔は自身に満ち溢れていたよ。