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036 台本の疑問
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帰りの車内、助手席に座っている美少女は少し不機嫌な態度をしている。
「私キスシーンがあるなんて聞いていません!」
「舞台の話が来たのは今日だったので俺も社長も詳しく確認はしていなかったんだ、一応心にも目は通してもらっただろ?」
「そんなの短い時間だったじゃないですか! 最後まで確認出来ませんよ」
「キスシーンと言っても頬にだし、口を付ける必要はないって矢崎さん言っていたじゃないか」
「そういう問題ではないでしょう、私そういったことしたことないですし・・・・」
「相手は劇団員の中でもイケメンの子だったじゃないか」
「イケメン? そうでしたっけ?」
どうやら心のタイプの男性ではなかったようだ、劇団一女性のファンがいると聞いたけどなぁ。
「一週間後は本番さながらの立ち稽古なんですよね? キスシーンも雰囲気出さないといけないだろうし、マネージャーさんが練習相手になっていただけますか?」
「え? 俺が」
「はい」
「立ち位置が分かればいいだけだしプリフォーのメンバーに頼んだらいいじゃないか」
「女の子相手だと練習にならないでしょう、そういう雰囲気がつかめないし」
「だったらリルはどうだ? お前達仲良いだろう」
「リルさんは身長が私と同じ位なのでやはり雰囲気がつかめません、相手の方とマネージャーさんの身長は同じくらいでしたのでお願いしているんです」
「ん~、まぁ別にいいけど」
「本当は嬉しいのに何ですかその言い方は」
「え?」
「聞いていますよ、私がマネージャーさんの初恋の人に似ているって」
ああ・・・・、そういう事になっていたんだっけか。
「本当は役得だって思っているんでしょう? だからって初めて会った時みたいに迫ったりしてこないでくださいね」
「あの時はすみませんでしたね、明日からの一週間、夕方だったら時間作れるから都合のいい日があったら事前に教えてくれ」
「学校終わってからになるので稽古が出来るのは1時間くらいですが毎日伺わせていただきます」
それから翌日、その次の日と俺の部屋で台本片手に立ち稽古、キスシーンの動きや立ち位置確認をした。
練習後の事務所内、俺と心、臣とリルの四人でソファーに座りお茶をしている。
「私も舞台出たかったな」
臣が唇を尖らせてすねたようにつぶやく。
「今回のお芝居は16歳から22歳までの男女の物語みたいだからね、10歳の臣ちゃんは若すぎるよ」
リルがフォローを入れる。
「この話は死んだ男女の話だからなぁ、臣にシリアスな役は似合わないだろう」
俺は思ったことを素直に言った。
「何だと~、私だってシリアスな演技出来るよ」
「どうだか」
歯ぎしりしながら睨み付けてくる臣。
「私この台本で良くわからない所があるんですよね」
三人共心の一言で皆注目する。
「私キスシーンがあるなんて聞いていません!」
「舞台の話が来たのは今日だったので俺も社長も詳しく確認はしていなかったんだ、一応心にも目は通してもらっただろ?」
「そんなの短い時間だったじゃないですか! 最後まで確認出来ませんよ」
「キスシーンと言っても頬にだし、口を付ける必要はないって矢崎さん言っていたじゃないか」
「そういう問題ではないでしょう、私そういったことしたことないですし・・・・」
「相手は劇団員の中でもイケメンの子だったじゃないか」
「イケメン? そうでしたっけ?」
どうやら心のタイプの男性ではなかったようだ、劇団一女性のファンがいると聞いたけどなぁ。
「一週間後は本番さながらの立ち稽古なんですよね? キスシーンも雰囲気出さないといけないだろうし、マネージャーさんが練習相手になっていただけますか?」
「え? 俺が」
「はい」
「立ち位置が分かればいいだけだしプリフォーのメンバーに頼んだらいいじゃないか」
「女の子相手だと練習にならないでしょう、そういう雰囲気がつかめないし」
「だったらリルはどうだ? お前達仲良いだろう」
「リルさんは身長が私と同じ位なのでやはり雰囲気がつかめません、相手の方とマネージャーさんの身長は同じくらいでしたのでお願いしているんです」
「ん~、まぁ別にいいけど」
「本当は嬉しいのに何ですかその言い方は」
「え?」
「聞いていますよ、私がマネージャーさんの初恋の人に似ているって」
ああ・・・・、そういう事になっていたんだっけか。
「本当は役得だって思っているんでしょう? だからって初めて会った時みたいに迫ったりしてこないでくださいね」
「あの時はすみませんでしたね、明日からの一週間、夕方だったら時間作れるから都合のいい日があったら事前に教えてくれ」
「学校終わってからになるので稽古が出来るのは1時間くらいですが毎日伺わせていただきます」
それから翌日、その次の日と俺の部屋で台本片手に立ち稽古、キスシーンの動きや立ち位置確認をした。
練習後の事務所内、俺と心、臣とリルの四人でソファーに座りお茶をしている。
「私も舞台出たかったな」
臣が唇を尖らせてすねたようにつぶやく。
「今回のお芝居は16歳から22歳までの男女の物語みたいだからね、10歳の臣ちゃんは若すぎるよ」
リルがフォローを入れる。
「この話は死んだ男女の話だからなぁ、臣にシリアスな役は似合わないだろう」
俺は思ったことを素直に言った。
「何だと~、私だってシリアスな演技出来るよ」
「どうだか」
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「私この台本で良くわからない所があるんですよね」
三人共心の一言で皆注目する。
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