上 下
35 / 78

035 ガーディアンHIKARI

しおりを挟む
 コンコン。



 「失礼します」

 先程話題にしていた人物が入ってくる。

 「よく来たな、まぁ座ってくれ」



 美少女は軽く会釈をする。



 「社長、リルさん、こんにちは」



 挨拶を貰った二人は返事を返す、社長は仕事に戻りリルはお茶を出してあげる。



 ソファーに腰を掛けた美少女に舞台の話をし、台本を渡す。



 「どうだ、やってみる気はないか?」



 ガーディアンHIKAR・・ぼそっと題名を口に出した後でパラパラと台本に目を通すとピクリと眉をひそめる。



 「私の役目立ってません?」



 「そりゃあ主演だからな」



 「えっ、主演だなんて無理ですよ」



 「無理な奴に話は来ないよ、心が役にはまっていて出来そうだから頼まれたんだ」



 「買い被りです」



 「正直やりたいか、やりたくないか、それだとどっちだ?」



 「そりゃあ挑戦してみたい気持ちもありますよ」



 「よし、じゃあ決まりだな」



 「強引ですね、わかりました、ではお願いします、私は歌や踊りよりお芝居がしたくて事務所に入ったのでしっかりやらせていただきます」



 「そうか、よかった、来月三週目の土日が本番であまり時間はないが心なら出来ると思っている」



 社長がやや離れた席から声をかけてくる。



 「還流、今三島さんからメールがあって先ほどの条件OK出たそうだ」



 「本当ですか! ではプリフォーとCDも一緒に売り出せるし良いですね」



 「それで、さっそくだがキャストと顔合わせを出来れば今からしたいそうだぞ」



 よくわかっていない表情をする心。



 「心、今日これから時間あるか? 舞台の打ち合わせ等したいそうだが」



 「はい、全然大丈夫ですよ」



 すぐさま俺達は車で舞台稽古場まで向かった。



 轟和荘から車で40分程度の場所に劇団の稽古場があり到着した時には舞台監督、役者たちは全員そろって俺達がくるのを待っている状態だった。



 軽く挨拶をかわし今回の舞台内容を確認する。



 メインの登場人物は男女四人ずつの計8名で16~22歳迄の若い役者達で演じる、ちなみに最年少は16歳の心だ、前回臣と心が初舞台を一緒に演じた方々なので顔見知りだし気が楽だ。



 今回、団長の三島さん(34)は地獄の案内人という出番は少ないが重要な役を演じる。



 お芝居の内容は事故や自殺で死んだ若者たちがあの世に浮かばれずにこの世をさまよう、生きていた時にやりたかったこと、やり残したことに気付き死を受け入れることが出来なくて苦しみもがくが最後は全員浮かばれて消えていく、そんな物語。



 心は主演を任されることになりプレッシャーを感じているかと思いきや自信のある表情をしているので安心している。



 舞台監督の矢崎さんに今回指名してくれてありがとうございますと心と二人でお礼をする。



 「こちらこそ引き受けて頂きありがとうございます、十代で容姿が良く芝居の出来る人を探していていた所だったので、心ちゃんを思い出して三島を通じて声をかけさせていただきました」



 前回の舞台が余程良かったのか矢崎さんに気に入られて心も嬉しそうだ。



 今日は席に着いたままで最初から最後まで台本読みをする、ほぼ所見の心だが皆と合わせることが出来ていて感心した、その後何度か通して読んで最後は本番さながらの感情を込めた感じで台本読みをする。



 次回の稽古は一週間後で立ち稽古をすることになり今日の所は解散となった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【R15】お金で買われてほどかれて~社長と事務員のじれ甘婚約~【完結】

双真満月
恋愛
都雪生(みやこ ゆきな)の父が抱えた借金を肩代わり―― そんな救世主・広宮美土里(ひろみや みどり)が出した条件は、雪生との婚約だった。 お香の老舗の一人息子、美土里はどうやら両親にせっつかれ、偽りの婚約者として雪生に目をつけたらしい。 弟の氷雨(ひさめ)を守るため、条件を受け入れ、美土里が出すマッサージ店『プロタゴニスタ』で働くことになった雪生。 働いて約一年。 雪生には、人には言えぬ淫靡な夢を見ることがあった。それは、美土里と交わる夢。 意識をすることはあれど仕事をこなし、スタッフたちと接する内に、マッサージに興味も出てきたある日―― 施術を教えてもらうという名目で、美土里と一夜を共にしてしまう。 好きなのか嫌いなのか、はっきりわからないまま、偽りの立場に苦しむ雪生だったが……。 ※エブリスタにも掲載中 2022/01/29 完結しました!

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

失恋少女と狐の見廻り

紺乃未色(こんのみいろ)
キャラ文芸
失恋中の高校生、彩羽(いろは)の前にあらわれたのは、神の遣いである「千影之狐(ちかげのきつね)」だった。「協力すれば恋の願いを神へ届ける」という約束のもと、彩羽はとある旅館にスタッフとして潜り込み、「魂を盗る、人ならざる者」の調査を手伝うことに。 人生初のアルバイトにあたふたしながらも、奮闘する彩羽。そんな彼女に対して「面白い」と興味を抱く千影之狐。 一人と一匹は無事に奇妙な事件を解決できるのか? 不可思議でどこか妖しい「失恋からはじまる和風ファンタジー」

化想操術師の日常

茶野森かのこ
キャラ文芸
たった一つの線で、世界が変わる。 化想操術師という仕事がある。 一般的には知られていないが、化想は誰にでも起きる可能性のある現象で、悲しみや苦しみが心に抱えきれなくなった時、人は無意識の内に化想と呼ばれるものを体の外に生み出してしまう。それは、空間や物や生き物と、その人の心を占めるものである為、様々だ。 化想操術師とは、頭の中に思い描いたものを、その指先を通して、現実に生み出す事が出来る力を持つ人達の事。本来なら無意識でしか出せない化想を、意識的に操る事が出来た。 クズミ化想社は、そんな化想に苦しむ人々に寄り添い、救う仕事をしている。 社長である九頭見志乃歩は、自身も化想を扱いながら、化想患者限定でカウンセラーをしている。 社員は自身を含めて四名。 九頭見野雪という少年は、化想を生み出す能力に長けていた。志乃歩の養子に入っている。 常に無表情であるが、それは感情を失わせるような過去があったからだ。それでも、志乃歩との出会いによって、その心はいつも誰かに寄り添おうとしている、優しい少年だ。 他に、志乃歩の秘書でもある黒兎、口は悪いが料理の腕前はピカイチの姫子、野雪が生み出した巨大な犬の化想のシロ。彼らは、山の中にある洋館で、賑やかに共同生活を送っていた。 その洋館に、新たな住人が加わった。 記憶を失った少女、たま子。化想が扱える彼女は、記憶が戻るまでの間、野雪達と共に過ごす事となった。 だが、記憶を失くしたたま子には、ある目的があった。 たま子はクズミ化想社の一人として、志乃歩や野雪と共に、化想を出してしまった人々の様々な思いに触れていく。 壊れた友情で海に閉じこもる少年、自分への後悔に復讐に走る女性、絵を描く度に化想を出してしまう少年。 化想操術の古い歴史を持つ、阿木之亥という家の人々、重ねた野雪の過去、初めて出来た好きなもの、焦がれた自由、犠牲にしても守らなきゃいけないもの。 野雪とたま子、化想を取り巻く彼らのお話です。

天鬼ざくろのフリースタイル

ふみのあや
キャラ文芸
かつてディスで一世を風靡した元ラッパーの独身教師、小鳥遊空。 ヒップホップと決別してしまったその男がディスをこよなく愛するJKラッパー天鬼ざくろと出会った時、止まっていたビートが彼の人生に再び鳴り響き始めた──。 ※カクヨムの方に新キャラと設定を追加して微調整した加筆修正版を掲載しています。 もし宜しければそちらも是非。

ようこそ猫カフェ『ネコまっしぐランド』〜我々はネコ娘である〜

根上真気
キャラ文芸
日常系ドタバタ☆ネコ娘コメディ!!猫好きの大学二年生=猫実好和は、ひょんなことから猫カフェでバイトすることに。しかしそこは...ネコ娘達が働く猫カフェだった!猫カフェを舞台に可愛いネコ娘達が大活躍する?プロットなし!一体物語はどうなるのか?作者もわからない!!

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...