26 / 78
026 お兄ちゃんと呼ばせて その③
しおりを挟む
伊莉愛とのデートの約束当日、待ち合わせの時間10時、俺は事務所でプリフォーのスケジュール調整をしていた。
ファーストシングルの売れ行きが悪いので全国のイベントをチェックしプリフォーをステージに上げてもらえる会場を探している。
この際ノーギャラでいい、先ずは知名度を上げたいと、営業の電話やコツコツHPを更新する。
今頃伊莉愛のやつ憧れのリルと一緒で舞い上がっているだろうな、そんなことを思いながら仕事をしていると12時前になっていた。
ふいにケータイの着信音が鳴る、リルからの様だ。
「おう、そっちはどうだ、楽しんでいるか?」
「実は伊莉愛ちゃんとはぐれちゃって困っているんだ、電話を何度かけても繋がらないしメールも返事来ない、迷子の放送センターに呼びかけてもらっているんだけどそれも駄目で、悪いけど還流の方からも電話してくれる?」
「わかった、それよりリルもあと一時間位で仕事だろう? 直ぐそっちに向かうから入り口付近で落ち合おう、それまでに伊莉愛を見つけることが出来たら連絡くれ」
電話を切った後、何度も伊莉愛のケータイに電話を掛けるが一向に繋がらない、急いで遊園地に向かった、入り口付近でリルが待っている。
「待たせたな、状況を説明してくれ」
「10時にここで伊莉愛ちゃんと会ったんだけど僕が来ること言ってなかったんでしょ? すごいびっくりした様子だったよ」
「サプライズっていうか、喜んでもらいたくてな」
「喜んでいる感じではなかったよ、戸惑っていて終始緊張気味って感じだったよ」
好きな人の前だから上がってしまうのはわかるが・・・・。
「一緒にいたのは1時間位かな、変装していたのに僕がファンの子達にばれて捕まっちゃって、ちょっと目を離した隙にはぐれちゃったんだよ、ケータイも繋がらないしどうしよう」
「わかった、これは俺の責任だ、リルは一切気にしないで良いからここは俺に任せて安心して仕事に向かってくれ」
「それじゃあ頼むよ、ただ目を離した僕のせいでもあるから還流が一人で責任を負わないでね」
そう言葉を残しリルは仕事現場に向かった、俺が悪いのに親友に申し訳なさそうな顔をさせてしまったな。
伊莉愛に電話を掛けるがやはり繋がらない、取り合えずしらみつぶしに探してみるしかない、汗だくになりながらも30分位走り回っただろうか、20メートル程先に伊莉愛らしき人物を発見した、ベンチに座っているが手前に20代と見える二人の男が囲んでいる、近づいてみるとやはり伊莉愛だった。
「ねぇ、良いじゃん、俺たちと遊ぼうよ」
「連れもいないようだし何かご馳走するからさぁ」
「いい加減にしてください、困ります」
「俺らも暇じゃないしそれなら力ずくで連れてっちゃうぞ」
男はにやけながら伊莉愛の手を掴もうとする、俺はすかさずその手をはねのけ男達を睨み付ける。
「何だよ、邪魔すんなよ」
「この子が嫌がっているのがわからないのか?」
「お前には関係ないだろ、引っ込んでろ!」
「関係大有りだ」
何て言おうかと思ったがスッと言葉が出た。
「リアは俺の妹だ、妹にちょっかいかける奴は許さん!」
「チッ、兄貴かよ、面白くねぇ、行こうぜ」
男達はコソコソとその場を去っていった。
俺はやっと見つけてホッとするが伊莉愛は悲しげな表情を見せる。
「お兄ちゃん酷い、酷いよ」
「酷いって? ・・・・それよりケータイはどうした、落としたのか? 無くしたのか?」
「家に置いてきた」
「何だよ、忘れてきただけか」
「違う、わざと持ってこなかったの」
「え? 何で? もしはぐれたらすぐ連絡出来ないじゃないか?」
「だから離れないように・・・・その・・遊園地にいる間、手を繋いでいればいいと思って・・・・なのに何故お兄ちゃんじゃなくてリルさんが来たの?」
「リアが喜ぶと思ったからだよ」
「お兄ちゃん全然わかってない、わかってない! わかってない!」
ムスッとした表情をして伊莉愛はベンチから立ち上がりスタスタと歩き出した。
ファーストシングルの売れ行きが悪いので全国のイベントをチェックしプリフォーをステージに上げてもらえる会場を探している。
この際ノーギャラでいい、先ずは知名度を上げたいと、営業の電話やコツコツHPを更新する。
今頃伊莉愛のやつ憧れのリルと一緒で舞い上がっているだろうな、そんなことを思いながら仕事をしていると12時前になっていた。
ふいにケータイの着信音が鳴る、リルからの様だ。
「おう、そっちはどうだ、楽しんでいるか?」
「実は伊莉愛ちゃんとはぐれちゃって困っているんだ、電話を何度かけても繋がらないしメールも返事来ない、迷子の放送センターに呼びかけてもらっているんだけどそれも駄目で、悪いけど還流の方からも電話してくれる?」
「わかった、それよりリルもあと一時間位で仕事だろう? 直ぐそっちに向かうから入り口付近で落ち合おう、それまでに伊莉愛を見つけることが出来たら連絡くれ」
電話を切った後、何度も伊莉愛のケータイに電話を掛けるが一向に繋がらない、急いで遊園地に向かった、入り口付近でリルが待っている。
「待たせたな、状況を説明してくれ」
「10時にここで伊莉愛ちゃんと会ったんだけど僕が来ること言ってなかったんでしょ? すごいびっくりした様子だったよ」
「サプライズっていうか、喜んでもらいたくてな」
「喜んでいる感じではなかったよ、戸惑っていて終始緊張気味って感じだったよ」
好きな人の前だから上がってしまうのはわかるが・・・・。
「一緒にいたのは1時間位かな、変装していたのに僕がファンの子達にばれて捕まっちゃって、ちょっと目を離した隙にはぐれちゃったんだよ、ケータイも繋がらないしどうしよう」
「わかった、これは俺の責任だ、リルは一切気にしないで良いからここは俺に任せて安心して仕事に向かってくれ」
「それじゃあ頼むよ、ただ目を離した僕のせいでもあるから還流が一人で責任を負わないでね」
そう言葉を残しリルは仕事現場に向かった、俺が悪いのに親友に申し訳なさそうな顔をさせてしまったな。
伊莉愛に電話を掛けるがやはり繋がらない、取り合えずしらみつぶしに探してみるしかない、汗だくになりながらも30分位走り回っただろうか、20メートル程先に伊莉愛らしき人物を発見した、ベンチに座っているが手前に20代と見える二人の男が囲んでいる、近づいてみるとやはり伊莉愛だった。
「ねぇ、良いじゃん、俺たちと遊ぼうよ」
「連れもいないようだし何かご馳走するからさぁ」
「いい加減にしてください、困ります」
「俺らも暇じゃないしそれなら力ずくで連れてっちゃうぞ」
男はにやけながら伊莉愛の手を掴もうとする、俺はすかさずその手をはねのけ男達を睨み付ける。
「何だよ、邪魔すんなよ」
「この子が嫌がっているのがわからないのか?」
「お前には関係ないだろ、引っ込んでろ!」
「関係大有りだ」
何て言おうかと思ったがスッと言葉が出た。
「リアは俺の妹だ、妹にちょっかいかける奴は許さん!」
「チッ、兄貴かよ、面白くねぇ、行こうぜ」
男達はコソコソとその場を去っていった。
俺はやっと見つけてホッとするが伊莉愛は悲しげな表情を見せる。
「お兄ちゃん酷い、酷いよ」
「酷いって? ・・・・それよりケータイはどうした、落としたのか? 無くしたのか?」
「家に置いてきた」
「何だよ、忘れてきただけか」
「違う、わざと持ってこなかったの」
「え? 何で? もしはぐれたらすぐ連絡出来ないじゃないか?」
「だから離れないように・・・・その・・遊園地にいる間、手を繋いでいればいいと思って・・・・なのに何故お兄ちゃんじゃなくてリルさんが来たの?」
「リアが喜ぶと思ったからだよ」
「お兄ちゃん全然わかってない、わかってない! わかってない!」
ムスッとした表情をして伊莉愛はベンチから立ち上がりスタスタと歩き出した。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説


サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説
宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。
美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!!
【2022/6/11完結】
その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。
そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。
「制覇、今日は五時からだから。来てね」
隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。
担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。
◇
こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく……
――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる