彼女たちをトップアイドルに育てるのが俺が生まれた大きな理由の一つだったりするわけであり。

てたまろ

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026 お兄ちゃんと呼ばせて その③

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 伊莉愛とのデートの約束当日、待ち合わせの時間10時、俺は事務所でプリフォーのスケジュール調整をしていた。



 ファーストシングルの売れ行きが悪いので全国のイベントをチェックしプリフォーをステージに上げてもらえる会場を探している。



 この際ノーギャラでいい、先ずは知名度を上げたいと、営業の電話やコツコツHPを更新する。



 今頃伊莉愛のやつ憧れのリルと一緒で舞い上がっているだろうな、そんなことを思いながら仕事をしていると12時前になっていた。



 ふいにケータイの着信音が鳴る、リルからの様だ。





 「おう、そっちはどうだ、楽しんでいるか?」





 「実は伊莉愛ちゃんとはぐれちゃって困っているんだ、電話を何度かけても繋がらないしメールも返事来ない、迷子の放送センターに呼びかけてもらっているんだけどそれも駄目で、悪いけど還流の方からも電話してくれる?」





 「わかった、それよりリルもあと一時間位で仕事だろう? 直ぐそっちに向かうから入り口付近で落ち合おう、それまでに伊莉愛を見つけることが出来たら連絡くれ」





 電話を切った後、何度も伊莉愛のケータイに電話を掛けるが一向に繋がらない、急いで遊園地に向かった、入り口付近でリルが待っている。





 「待たせたな、状況を説明してくれ」





 「10時にここで伊莉愛ちゃんと会ったんだけど僕が来ること言ってなかったんでしょ? すごいびっくりした様子だったよ」



 「サプライズっていうか、喜んでもらいたくてな」



 「喜んでいる感じではなかったよ、戸惑っていて終始緊張気味って感じだったよ」





 好きな人の前だから上がってしまうのはわかるが・・・・。





 「一緒にいたのは1時間位かな、変装していたのに僕がファンの子達にばれて捕まっちゃって、ちょっと目を離した隙にはぐれちゃったんだよ、ケータイも繋がらないしどうしよう」





 「わかった、これは俺の責任だ、リルは一切気にしないで良いからここは俺に任せて安心して仕事に向かってくれ」





 「それじゃあ頼むよ、ただ目を離した僕のせいでもあるから還流が一人で責任を負わないでね」





 そう言葉を残しリルは仕事現場に向かった、俺が悪いのに親友に申し訳なさそうな顔をさせてしまったな。





 伊莉愛に電話を掛けるがやはり繋がらない、取り合えずしらみつぶしに探してみるしかない、汗だくになりながらも30分位走り回っただろうか、20メートル程先に伊莉愛らしき人物を発見した、ベンチに座っているが手前に20代と見える二人の男が囲んでいる、近づいてみるとやはり伊莉愛だった。





 「ねぇ、良いじゃん、俺たちと遊ぼうよ」

 「連れもいないようだし何かご馳走するからさぁ」



 「いい加減にしてください、困ります」



 「俺らも暇じゃないしそれなら力ずくで連れてっちゃうぞ」



 男はにやけながら伊莉愛の手を掴もうとする、俺はすかさずその手をはねのけ男達を睨み付ける。



 「何だよ、邪魔すんなよ」



 「この子が嫌がっているのがわからないのか?」



 「お前には関係ないだろ、引っ込んでろ!」



 「関係大有りだ」



 何て言おうかと思ったがスッと言葉が出た。



 「リアは俺の妹だ、妹にちょっかいかける奴は許さん!」



 「チッ、兄貴かよ、面白くねぇ、行こうぜ」



 男達はコソコソとその場を去っていった。



 俺はやっと見つけてホッとするが伊莉愛は悲しげな表情を見せる。





 「お兄ちゃん酷い、酷いよ」



 「酷いって? ・・・・それよりケータイはどうした、落としたのか? 無くしたのか?」



 「家に置いてきた」



 「何だよ、忘れてきただけか」



 「違う、わざと持ってこなかったの」



 「え? 何で? もしはぐれたらすぐ連絡出来ないじゃないか?」



 「だから離れないように・・・・その・・遊園地にいる間、手を繋いでいればいいと思って・・・・なのに何故お兄ちゃんじゃなくてリルさんが来たの?」



 「リアが喜ぶと思ったからだよ」



 「お兄ちゃん全然わかってない、わかってない! わかってない!」



 ムスッとした表情をして伊莉愛はベンチから立ち上がりスタスタと歩き出した。
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