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025 お兄ちゃんと呼ばせて その②

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 「あなた、即席にしては良かったじゃないの、ここだけの話ショーのアンケートを見たけどあんたの事が多く書かれていたわよ」





 きょとんとする伊莉愛





 『4番のポニーテールの娘が可愛かったです』

 『転んだが着ていた花柄のワンピースが欲しい』

 『前半で転んだ4番のをもう一度観たくて後半も観覧しました』

 『またイベントあるとき観覧希望です、4番の子を是非また使ってください』





 「そんな事が書いてあったわ」



 「転んだことばかり書かれてすみません~」



 「後半の出来は素晴らしかったわ、それですべて上手くいった、いい意味で目立っちゃたわね」



 「えへへ、お兄ちゃんのおかげです~」



 俺を見て微笑む伊莉愛。



 「えっ、あんたら兄妹だったの?」



 「あ~、いやそういうわけじゃないんですけどね」



 「まあいいわ、それより持ってきたCD100枚今回のギャラとは別に全て買わせて頂くわね」



 「えっ、良いんですか?」



 「その子もメンバーなんでしょ? 今回の活躍と今後の付き合いも兼ねてね、まぁそれは良いんだけどキルトも厄介な人を敵に回したようで大変ね、CDもまともに置いてくれる所ないんでしょう?」



 「知ってるんですか?」



 「ええ、キルトって味方も多いけどその分敵も多いからね、勿論私は味方だからね、CDも上手く関係者などに売り込んであげるから、頑張るのよ」



 「ありがとうございます」



 俺と伊莉愛は頭を下げる。



 「それに還流かえる、あなた良く見ると結構可愛い顔しているじゃない、仕事抜きで今度食事でもいかがかしら?」





 そこは丁重にお断りしてその場をやり過ごした、紅妖さんがCDを購入してくれた際、良かったらこれも上げるわと遊園地のタダ券2枚頂いた。



 ファッションショーは成功し全体のイベントも無事終わり帰りの支度をすませ車の中、助手席に座る伊莉愛は行きの時とは違い笑顔でいる。





 「ねぇ、お兄ちゃん、せっかくタダ券貰ったんだしリア観覧車乗りたいな~」



 今日は伊莉愛のおかげでCDも売れたし頑張ったからな。



 「よしそれなら明日行くか?」



 「え~、いいの~、嬉しい、そしたらせっかくだから遊園地の入り口で待ち合わせしようよ、そっちの方がデートっぽいから~」



 「そうだな、じゃあ一枚チケット渡しておくよ、ただお兄ちゃんでいるのは今日までだよな?」



 「ダメ、明日までで良いからリアのお兄ちゃんでいて、お願いします」



 「じゃあ明日までだからな」



 「ありがとうお兄ちゃん」



 お兄ちゃんなんて呼ばれている事を心や彗夏に知られたら何て言われるかわかったもんじゃないからな、兄弟ごっこは明日で終わりだぞと念を押して伝えた。






 その後伊莉愛を自宅近くで下ろし轟和荘に戻る、時間も19時を回っていた。



 事務所にはリルだけが居て、自分の机で仕事をしているようだった。



 「リル、帰ってたんだ、社長は自分の部屋(一号室)にいるのか?」



 「兄さん今日は、仕事で帰らないと言っていたよ」



 「そうか、そっちは今日どうだった?」



 「CDは30枚位は売れたんじゃないかな? みんなそれぞれ頑張っていたようだけど、やっぱり難しいよね」



 「こっちは100枚売れたぜ」



 「そうなの? 凄いじゃない、どうやって?」



 今日の出来事をリルに教えてやることにした。





 「へー、伊莉愛ちゃん凄いね、それに紅妖さんにも気に入られてよかったじゃない、あの人仕事には厳しいけど面倒見のいいひとだから好かれるのは良い事だよ」





 俺はふといい事を思いついた。



 「リルは明日暇? ただ券あるんだけど遊園地行かない?」



 「午前中は空いているけど・・、まさか還流君と行くの?」



 「いやいや俺じゃない、伊莉愛とだよ」



 「伊莉愛ちゃん? 何で?」



 「今日、伊莉愛以外の三名と行動しただろ、伊莉愛もリル先生との時間を作ってやろうかなとね」



 「リル先生と呼ばれるのは臣ちゃんだけで十分だよ、13時過ぎから仕事があるからそれまでだったらいいけど大丈夫?」



 「構わないよ、待ち合わせは10時だから充分遊べるだろ」



 「良いよ、わかった、それじゃあ伊莉愛ちゃんに言っといてね」



 「了解、よろしく頼むぜリル先生」



 「も~、その呼び方は辞めってって」





 兄として妹の喜ぶことをしてあげるのは良い事だ、うん。







 良かれと思ってやった行為が伊莉愛・・・・。

 リアを深く傷つけることになろうとはこの時は思いもしなかった。
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